瀬戸大也さん、星奈津美さんら五輪メダリストを次々と輩出する水泳王国・埼玉。そんな県水泳界の長年の悲願だった公営の屋内五十メートルプールの建設が、具体化に向けて一歩を踏み出す。上田清司知事は六月定例会で「実現のためにさらに前に進める」「整備手法や機能などの調査、検討を行うように担当部局に指示をした」と明言。屋外の厳しい環境で競技を続けてきた県水泳連盟は県の姿勢を歓迎し、「少しでも早く造ってほしい」と期待を高めている。 (井上峻輔)

 「ある日は雨の寒い中でブルブル震えながら、ある日は気温四〇度近くの中で汗だくになりながらタイムを出さないといけない。低水温による過呼吸や熱中症になることもある」

 先月二十三日の六月定例会一般質問で、七歳の娘が水泳をしているという菅克己議員(民進・無所属)は、自身が見た過酷な実態を伝えながらプール建設の計画策定を求めた。

 県や県水泳連盟によると、県内には公営の屋内五十メートルプールがなく、主な公式大会は川口市青木町公園の屋外五十メートルプールで開催。冬季は大会が開けず、中高生の強化選手の練習会も県外の施設で開いている。全国で公営の屋内五十メートルプールがない都道府県は十五しかなく、関東一都六県では埼玉県だけとなっている。

 県水泳連盟は、以前から県に屋内プール建設を強く求めてきた。二〇〇八年には十万人の署名とともに要望書を提出。県議会でも、建設を求める質問が繰り返されてきたが、県は百億円を超えるとみられる建設費などを理由に、具体的な検討を進めてこなかった。

 そんな中で今回、ようやく県は前向きな姿勢を示した。上田知事は菅議員への答弁で、昨年のリオデジャネイロ五輪で県ゆかりの四選手がメダルを獲得したことをあげ、「水泳に関心が高まる今、将来のアスリートを目指す子どもたちに夢を与えるとともに、県民が水泳に親しめる環境整備が必要」と述べた。

 「一歩は進んだという印象」。議場で知事の方針を聞いた県水泳連盟の須田邦明理事長は語る。ただ、建設が具体化するのはいつになるかは分からず、「中高生の現状を見て、もう少し積極的になってほしい」。

 県内では、恵まれない環境の中で世界トップレベルの選手が次々に生まれてきた。須田理事長は「プールは屋内にあるのが今の常識で、設備が整えばもっと強くなる。これからどんどん建設に向けた話が進んでいくことを期待したい」と訴える。

 県は今後、庁内に検討会議を設置し、施設の機能や規模、場所などの具体的な方針を協議する。官民連携での事業手法や、併設施設なども検討していくという。