◆県重症心身障害児(者)を守る会会長・伊藤光子さん(75)

 手紙の内容に、すごいショックを受けた。文面から教育を受けた人とは思う。でも頭が良いとは思わない。植松聖(さとし)被告には葛藤がない。ああいう事件を起こして世間がどう考えたか、何も感じていない。

 特に、意思疎通できない人間を安楽死させるべきだと書いている部分が理解できない。意思疎通できるかどうかの基準に、名前や住所、年齢を自分で言えるかどうかを挙げているが、何の価値があるのか。

 障害者でも、生まれてからどのような生活をしてきたか見ていれば、何をしたいか、どう思っているか理解したり、意思疎通したりできる。繰り返し名前を呼ぶとニッコリ笑ったり、手を握り返したりして意思を示す人もいる。意思決定をどう支援するかは最近、特に重視されているのに。

 どんなに重い障害でも、できるようになることがある。私の知人の息子さんも三十〜四十歳の時に絵を描き始めた。

 手紙では、障害者は不幸をばらまく存在と書かれている。だが、私は障害がある次女まゆみ(49)からたくさんの喜びをもらってきた。物を拾えるようになったり手を握り返したりと、小さなことでもできるようになる喜びを感じてきた。取材や講演を通じて多くの人と知り合えたのも、まゆみのおかげと思っている。

 優しさももたらしてくれた。健常者の長女が妊娠した際、病院から羊水検査を打診されたが、しなかった。長女は「(障害児なら)おろせって言うの」と。妹や親の姿を見て育ってくれたんだとうれしかった。まゆみが健常者と同じクラスに入れてもらった相模原市の小学校では、運動会や遠足の時に友達が競うように車いすを押してくれた。

 被告の主張は障害者だけでなく、高齢者福祉の問題にもつながる。軽んじられてよい命などない。みんな必死で生きている。彼に勝手なことを言わせないためにも、今回の事件で被害に遭われた遺族の方たちに「こんなに愛していたのに」と、どんどん声を上げてもらえないかと願っている。 (聞き手・井上靖史)

<いとう・みつこ> 1941年12月生まれ。知的障害と肢体不自由の重複障害がある人の親らでつくる「神奈川県重症心身障害児(者)を守る会」会長を2007年度から務めている。事件後、障害者のことをもっと知ってもらわなければと、まゆみさんとの歩みをつづった書籍を自費出版。やまゆり園には毎月26日の月命日に献花も続けてきた。相模原市緑区在住。