県内で食品スーパー15店を経営するナリタヤは今月10日から、本部のある栄町で移動スーパー「とくし丸」事業を始めた。高齢者ら「買い物弱者」を救済するため町が要請。車両購入、改造費260万円の補助のみで引き受けた。住民の利便性向上に貢献することで、地域密着のスーパーとしての役割を果たしたいという考えからだ。 (渡辺陽太郎)

 「とくし丸」は保冷器を搭載した軽トラック。生鮮食品や加工食品、総菜、日用品など約千二百点を載せて、運転免許がないなどの理由で買い物に行くのが困難な高齢者らの家庭を訪問する。ナリタヤは二〇一二年に同事業を始めた会社「とくし丸」(徳島市)と提携し、準備を進めた。

 ことし四〜六月に栄町内の約五千三百世帯を訪問し意向を聞いたところ、百二十四軒から訪問の希望があった。訪問を希望する時間帯やほしい商品などを調査。午前十時〜午後五時に、希望者宅を「月・木曜」と「火・金曜」「水・土曜」に巡回する三コースを設定した。

 全国で二百台以上が運行する「とくし丸」だが、ほとんどが個人事業主によるもの。ナリタヤのような事業者は珍しく、社内で人員をやりくりし、他業務に当たっていた従業員二人を専属とした。

 十日の出発式でナリタヤの菊川一平社長は「ネットや宅配ではできない、自分で見て、選ぶ楽しみが移動スーパーにはある。地域スーパーとしての使命感を感じている」と、事業への思いを話した。

 最初の利用者となったのは、同町中台地区の無職青木喜美子さん(81)。一人暮らしで運転免許がない。買い物をするにはバスで一時間以上かかり、病院や役場に行くときに合わせていたため、荷物が大量になることが悩みだった。夕飯のおかずを選びながら「買いだめをする必要はないし、自由に適量を選べる。本当に助かる」と笑顔を見せた。

 ナリタヤ移動販売事業部によると、現段階では利益は最優先ではないという。町は少子高齢化が進む。地域の生活インフラ向上に貢献することで、地域とスーパーが一緒に元気になることを最優先とする。隣接する成田市や印西市の大型商業施設に負けない特色が生まれることも期待できる。担当者は「栄町を皮切りに他店でも導入を目指し、地域スーパーとしての役割を果たしたい」と話した。