漫画「あしたのジョー」のちばてつやさん(78)と、「丸出だめ夫」の森田拳次さん(78)の漫画家二人が五日、新宿区西新宿二の平和祈念展示資料館で、旧満州(中国東北部)からの引き揚げ体験を語った。

 ちばさんら十一人が引き揚げ体験を描き、同館で開かれている「漫画でたどる引き揚げ展」(九月二十四日まで)の関連イベント。終戦時ともに六歳だった二人は、奉天(現・瀋陽)で終戦を迎えた。

 ちばさんは終戦の日、父の勤務先の印刷工場で、集められた大人たちが涙を流して玉音放送を聞くのを見た。引き揚げの途中、父の同僚だった中国人にかくまってもらい、屋根裏部屋でのつらい生活に耐える幼い弟たちのため、童話集を基に紙芝居を手作りした。ちばさんは「これが漫画家の原点」と振り返った。

 当時、引き揚げ船で幼なじみが亡くなった時のことは「遺体は船尾から海に流した。船は遺体の周りを三度回って名残を惜しむんです」と説明した。

 森田さんは、すし詰めの列車から眺めた光景を「満州の夕日がきれいだったことは強烈に覚えている」と話した。二人ともしばらくは、引き揚げ者であることを打ち明けられなかった。戦後の食糧難に追い打ちをかけるとして疎まれる風潮があったためで、「ずっと後ろめたさがあった」(森田さん)という。

 最後に、ちばさんは「今年は終戦から七十二年。このままいつまでも戦後が続くことを祈っています」と話した。 (森本智之)