浜辺に体長9尺(約2.7メートル)の大きなサメが流れ着いた、さてどうしたものか−。その顛末(てんまつ)などを記した江戸時代の古文書を読み解く活動をしている横浜市磯子区のグループ「古文書一九会」が、創立10周年記念誌「江戸期磯子村 村びとの生活と心情」を発行した。代表の伊藤章治さん(77)は「昔の村人の生き生きとした姿を、われわれ地元の庶民の手で掘り起こしたい」と意気込む。 (梅野光春)

 会は二〇〇七(平成十九)年に発足。区内で開かれた古文書講座の受講生が、講師の元県立公文書館職員の小松郁夫さん(76)=同市港北区=に「続けて学びたい」と頼んで始まった。会の名称は創立した「平成十九年」にちなむ。

 それから十年。磯子区民を中心に約十五人の会員が月二回ほど集まって、地元の旧家「堤(つつみ)家」に伝わる古文書などを読んできた。磯子村の村長のような立場だった堤家には村人の書状などが保管されており、そこから浮かんでくるのは現代にも通じる庶民の暮らしぶりだった。

 記念誌には、越後国(現在の新潟県)から磯子村に嫁いだ女性が、夫を亡くしたため国に戻りたいと願い出た書状や、コレラが村を襲い五人が死亡した記録など、四つのテーマに絞って掲載。筆で書かれた文面をパソコンに取り込み、送り仮名などを補った読み下し文や、語句説明を加えた。古文書そのものが持つ雰囲気を味わってもらおうと、現代文訳は付けていない。

 編集を担当した鈴木美奈子さん(52)は「グループで読み解いた結果を子や孫、友人に伝えられる。作業の大変さより、喜びの方が大きい」と笑顔を見せる。

 四テーマのうちの一つが冒頭のサメの話。入札で江戸へ売られそうになったが話がこじれ、近くの村人に売り渡されたという。講師の小松さんは「サメの話では当時の経済圏が分かる。こうした生活史を学ぶと、現在を見る目も変わる」と古文書の魅力を語る。

 同会は記念誌を実費二百円で頒布中。入会者も募集している。問い合わせは伊藤さん=電080(3345)6156=へ。