今大会屈指の機動力を誇る松商学園が、足を使った攻撃を仕掛けてくることは分かっていた。リードに守備に神経をすり減らしたが、21安打と5盗塁を許し、三回を除く毎回失点。「ここまでやられたのは初めて。1個でも盗塁を刺せていたら違った結果になったと思う」と唇をかんだ。

 高校に入った時は投手だった。一年生の五月ごろ、小菅勲監督から「捕手をやってみないか」と誘われ、挑戦してみようと思った。その年の秋からは正捕手の証しである背番号2をつかみ取り、扇の要として投手陣をもり立ててきた。

 この日もいつも通りのリードを心掛けたが、エース富田卓投手(二年)、一塁手から救援でマウンドに上がった井上莞嗣選手(同)とも、高めに浮いた直球を相手打線に狙い打たれた。「しっかり打ち取るリードをできず、流れを呼び込めなかった」と振り返り、自身を責めた。

 甲子園の土は、持ち帰って高校の練習グラウンドにまくという。「土を踏むたび、甲子園に必ず戻るんだという思いになるから」と話す。

 「さらに投手と信頼関係を築き、どんなピンチでも託してもらえるような捕手になる」。悔しさをこらえて前を向く目に、涙はなかった。 

  (越田普之)