陶片を継ぎ合わせて造形する「呼継(よびつぎ)」という手法を取り入れ、オブジェや茶道具などのガラス作品を手がける作家がいる。茂原市内で工房を構える西中千人(ゆきと)さん(52)。ヴェネツィアン・グラスなど西洋の模倣ではなく、日本人としてガラスで何を表現できるかを追い求めている。 (黒籔香織)

 和歌山市出身。星薬科大(東京都)卒業後、観光で訪れた九十九里町の菅原工芸硝子で、冷たくて硬い印象のガラスが窯の中で鮮やかなオレンジ色で動くように見え、衝撃を受けた。江戸切子で有名なガラスメーカー「カガミクリスタル」に就職し一年働いた後、一九九一〜九四年、米国カリフォルニア芸術大でガラスアートと彫刻を学んだ。

 呼継は、一度制作した作品を割った後、破片を溶かして組み合わせる手法。呼継は元々、陶芸で欠けた部分を別の陶片などで補うことで、修復跡のひびから新たな魅力が生み出されるもの。戦国時代の武将らが、割れた茶わんのひびを継いで美を見いだした茶の湯の文化の美意識に触発され、西中さんは、その手法をガラス工芸に取り入れた。

 二〇〇三年から茂原市内で工房を構える。海外の展示会に出品するなかで、独自性を打ち出す必要性を痛感した。「日本人が西洋のヴェネツィアン・グラスを作ったところで、『本物にそっくりだね』と言われる。西洋の追っ掛けではなく、日本人としてガラスで何ができるかと考え続けた」と振り返る。

 「戦国時代の武将たちは、明日は生きていないかもしれないと思う中で、欠点とされるひび割れをかっこいいと思った。その価値観は、四百年以上たった今も受け入れられている」と話す。

 呼継をガラスで表現する技法を約五年かけて生み出し、今では西中さんを代表する作風となった。多彩なガラス片を組み合わせた作品は、茂原市のふるさと納税の返礼品にも指定され、好評だという。

 「ガラスは強さもはかなさも表現できる。素材の可能性が魅力」と語る西中さんは、新しい試みに挑戦し続けている。今年五、六月には、岐阜県のガラス瓶メーカーと協力して、回収された瓶を溶かして固めたオブジェを日本橋高島屋の一階正面ホールに展示。将来的には、ロケットで月に作品を打ち上げ、月面で展示したいと考えている。