夏休みの子どもたちが、戦争体験者の物語を朗読するなどの特別企画が十二日から、東京大空襲・戦災資料センター(江東区)で始まる。戦争を知る語り部の高齢化が進むなか、子どもたちに戦争の惨状を伝えてもらおうという狙いだ。 (神野光伸)

 「なにぐずぐずしているんだ。早く逃げないと焼け死ぬぞ!」「こげて死んだ人が川いっぱいに浮かんでいた」。十日の同センターでは、語り部の一人、元木キサ子さん(83)=調布市=の指導で都内の子どもたちが朗読の練習をしていた。読んでいたのは、東京大空襲(一九四五年)で戦災孤児となった元木さんが体験を基に創作した物語。

 朗読を十五日に披露するのは、塩野七海(ななみ)さん(8つ)=小三、文京区=、矢澤繭衣(まゆい)さん(11)=小六、江東区=、吉田愛(ひかり)さん(11)=同、町田市=、照屋真木君(13)=中一、豊島区=の四人。

 旧本所区(現・墨田区)に住んでいた元木さんは、大空襲で両親と弟を失い、母親の実家に預けられた。物語では、自らを主人公の男児に重ね、死体の山になった街の惨状を生々しく描く。戦災孤児となった主人公にとって戦後とは、「生きていくための戦争の始まりだった」と締めくくる。

 元木さんは「戦災孤児は差別や偏見を受けながら生きてきた。自分が歩んできた道を後世には絶対に歩ませたくない」と語り掛けた。

 真剣な表情で朗読していた矢澤さんは「あらためて戦争は恐ろしいと感じた」。塩野さんも「戦争は起きてほしくない。戦争の怖さを学校の友達にも伝えたい」と話していた。

 特別企画ではこの他、大空襲を記録した映像の鑑賞会もある。十四日は都内の高校生らが戦争体験記を朗読する。

 責任者で東京成徳大助教の小薗崇明さん(38)は「戦争体験者から直接話を聞く機会は減っているが、まだ体験を聞くことができる。友人や次の世代に語り継いでほしい」と話す。

 催しは十五日までの午後二〜五時。入館協力費として一般三百円、中・高生二百円、小学生以下無料。問い合わせは同センター=電03(5857)5631=へ。