太平洋戦争末期、中国地方で広島に次ぐ空襲被害があった山口県下関市の学校を舞台にしたミュージカル映画が、12日から都内で初上映される。校舎のほとんどを焼失した梅光学院中学校・高等学校のあの日と今を描いた「隣人のゆくえ−あの夏の歌声」(柴口勲監督、77分)。同校の中高生40人が出演し、制作も手掛けた。 (北爪三記)

 映画は、空襲直後の市内の惨状を記録した写真を見てショックを受けた市内の会社員柴口勲さん(49)が戦後七十年の二〇一五年、同校に制作を持ち掛けた。昨年、日本芸術センター映像グランプリ感動賞などを獲得している。

 家庭環境などに悩みを抱える主人公の女子高生が、夏休み中の校舎で七十年前のミュージカル部の部員たちと出会い、交流するストーリー。美しいメロディーと歌声が耳に残る楽曲も、ほとんど生徒たちによるオリジナルだ。

 ミュージカル部の部長役で出演し、振り付けも担当した福田麗(れい)さん(18)は現在、洗足学園音楽大学(川崎市高津区)のミュージカルコースで学ぶ一年生。「戦争があった時代は学びたくてもできなかった。歌って踊れるのは当たり前のことじゃない」。進路に迷った際、そんな映画制作での思いが背中を押したという。「ぜひ同じ世代の人たちに映画を見てほしい」と話す。

 十二〜二十五日の午後零時半から、新宿区新宿三の「ケイズシネマ」で。初日は柴口監督や出演した生徒らも駆け付ける。十九日〜九月一日には横浜市中区の「シネマ ジャック&ベティ」で、今月二十六日からは名古屋シネマテーク(名古屋市)でも上映される。

<下関空襲> 1945(昭和20)年6月29日と同7月2日の未明の空襲で、市街地のほとんどが焼失。総務省によると、死者324人、けが人1059人、約4万5000人が焼け出された。