桐生市の新町地区が国の「重要伝統的建造物群保存地区」(重伝建地区)に選定されて五年になることを記念した座談会「足あと〜ふりかえり、これからの未来を考える〜」が二十五日、同市の有鄰館で開かれた。建物の保存修理を通して、まちづくりに生かしてきた人たちが意見交換し、課題を探った。 (原田晋也)

 重伝建地区に指定されているのは、桐生市本町一、二丁目と天神町の一部。織物関係の蔵や町屋、ノコギリ屋根工場など古い建物が多く残り、織物産業で栄えた桐生の歴史を今に伝えている。二十年以上前から市民の間で選定を求める動きがあったが、二〇一一年の東日本大震災で多くの建物が被害を受けたことから機運が一気に高まり、一二年七月に選定された。

 重伝建地区の築五十年を超える古い建物は、取り壊しや景観を大きく変えるような補修はできないが、補修費用の八割、最大八百万円の補助金が国と県、市から出る。固定資産税も減免される。市によると、これまでに約二十軒が補助金を利用して補修工事をしたという。

 座談会では、家主や借り主、職人、建築士など建物の修理に携わった人たちが対談形式で発言。本町二丁目の津久井恭司さんは、倉庫として使っていた一九二〇(大正九)年建造の石蔵の屋根が壊れて雨漏りをするようになったため、三年前に補助金を利用して貸店舗に改修した。自己負担分も大きく「期待よりも不安の方が大きかった」が、地域の人の協力で借り手がすぐに見つかったという。

 この石蔵を借りて帽子工場「コンポジション」を経営する斎藤良之さんは「桐生らしい古い建物を探していたのでちょうどよかった。工場を訪れる人にも建物は評価が高い」と満足そうに語った。近隣にもう一軒古い建物を借り、観光客に帽子の製作を体験してもらう計画もあるという。

 斎藤さんは「ものを作って発信する作り手が増えれば、街もより活性化するのでは。若い人が仕事をして生活できる街になってほしい」と期待した。

 会場には市民ら約百十人が来場。質疑応答では「移り住む人が増えるのは素晴らしい」と評価する声がある一方で、「後継者がいない建物も多く、今の住民が亡くなったら建物もそのまま朽ちて街が歯抜けの状態になっていってしまうのでは」といった懸念の声も上がっていた。