超高層ビルなど巨大な人工物に囲まれた大都市東京は、自然には恵まれていないと多くの人が思っていることでしょう。しかしよく探すと、二十三区内にも驚くような巨木がたくさんあります。いつもの通勤路を外れて、そんな木に出合いませんか。人間が大きな自然の一部であることを体感できるかもしれません。

 例えば、文京区本郷一丁目の閑静な通りに突如そそり立つ「本郷弓町のクスノキ」。旗本屋敷が並び弓町と呼ばれた一角で、江戸時代から有名な巨木でした。幹周り八メートル、樹高二十メートル。樹齢は六百年といいます。根元が盛り上がり変形するクスノキが多い中、この木は美しく力強い末広がりで根を下ろしています。その威厳に圧倒されると同時に、中層のビル街で「よくぞ残った」と、感動を覚えます。

 残ったと言えば、「善福寺の逆さイチョウ」。港区元麻布一丁目の善福寺境内にあり、八百年前に訪れた親鸞聖人が地に刺した杖(つえ)から育ったと言います。この木も江戸時代から「杖銀杏(いちょう)」と呼ばれ有名でしたが、空襲で焼けてしまいます。

 ところが見事に復活し、樹高二十メートルほどに回復しました。幹周りは十メートル以上。近づくと痛々しい焼け跡はありますが、苦難をものともせず青々と茂る夏や、黄金色に葉が輝く晩秋には、その生命力に打たれます。

 ほかにもさまざまな歴史を背負った巨木が都内には数多くあります。ぜひ皆さんの足で巨木探訪に出かけてください。 (黒田涼)

   ◇  「都市を味わい、都市を批評し、都市を創る」をキャッチコピーに掲げる月刊誌「東京人」の編集部から、原則毎週日曜日に都内各地の情報をお届けします。

 詳しくは、「東京人」1月号52ページ「巨木列伝 黒田涼」で。

 【1月号主な内容】江戸の「聖」と「俗」 竹内誠▽座談会『聖地』は、どう生まれ、どう広がっていくか 泉麻人×加門七海×岡本亮輔▽アニメと巡礼 北村弥生▽鉄道と社寺参詣 平山昇▽ご利益神社おすすめ15選

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