今秋の衆院選で民進党の一部議員を「排除いたします」と発言し、議論を呼んだ小池百合子知事。二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの準備でも、「排除」という言葉を使ったことがある。

 二月の都議会定例会の施政方針演説。小池知事は大会の仮設施設の整備費について「他の自治体が所有する施設を含め、都も負担することを排除しない」と述べた。

 五輪招致時の枠組みでは、仮設整備費は大会組織委員会が全額賄うとされた。しかし、組織委が集める民間資金には限界があり、競技会場のある都外の開催自治体も負担に反発。「排除しない」という言葉は、都が負担を買って出たことを意味した。

 この一言で、都外の自治体や組織委との費用分担議論が前進した一方、都民の税金がどこまで投入されるのか、はっきりしないという課題も浮かんだ。

 都、組織委、国は五月、開催費用は一兆三千八百五十億円に上るとの試算を公表した。組織委は今月二十二日、費用の削減努力によって一兆三千五百億円になったと発表。都はこのうち六千億円を負担することになっている。

 ところが、都が積み立てている五輪準備基金は三月末時点で四千億円弱と、基金だけでは足りない。都債の発行や各年度の一般会計から基金を積み増すことも考えられるが、どう対応するのか。都の担当者は「都民生活に影響を及ぼさないよう多角的に検討する」と説明するが、具体策はまだ見えない。

 取材を通して、準備の先行きを心配する私に、都幹部の一人が語った言葉が印象的だった。「招致決定の歓喜、その後の関係者間の責任の押し付け合い。それを乗り越え、成功に向けてひたすら働く。そして大会に臨み、大団円に−」。その幹部は「どの開催都市も、そういう経緯をたどってきた」とも付け加えた。

 東京大会は、多くのアスリートにとって夢の舞台だ。一方で、「金がかかる」と厳しい目も注がれ、国際オリンピック委員会自身がコスト削減に躍起になっている。

 都幹部の言葉を借りれば、今は責任の押し付け合いを乗り越え、ひたすら働く段階だ。開催まで三年を切り、今後は注目度がさらに高まる。大会が多くの人の共感を得られるかは、説明責任を果たせるかにかかっていると思う。

 巨額の税金が投入されるだけに、費用には目を光らせなくてはいけない。その行く末をしっかりと見届けたい。 (唐沢裕亮)