甲子園球場で十三日に行われた全国高校野球選手権大会で、国学院久我山(西東京)は3−19で敦賀気比(福井)に敗れた。28年ぶりの出場で1回戦に春夏通じての初勝利を挙げた「久我山旋風」は2回戦で幕を閉じた。 (加藤健太、森雅貴)

 エースが、監督が、試合後のインタビューで人目をはばからずに涙した。高下耀介投手(3年)は言葉を紡げない。「全く歯が立たなかった」と振り絞った。

 西東京大会の6試合で8点しか許さなかった高下投手は、三回までに11安打を浴びて8失点。絶対的エースが降板後も勢いを止められず、相手打線に先発全員安打、3番にはサイクル安打まで許した。宮崎恭輔捕手(同)は「どのコースに投げても打たれた」と驚き交じりに振り返った。

 粘り強さが売りの打線は初回、坂口純哉選手(同)の適時内野安打ですぐさま反撃。四回を除いて毎回出塁したが、2併殺と畳み掛けられなかった。

 最終回、ここぞの場面でナインを勢いづけ、「魔曲」と親しまれるチャンステーマ「一本」が流れ続けた。アルプス席の粋な計らいは選手にも伝わり、この夏初めて打席に立った代打須田旭選手(同)が意地の適時二塁打を放った。

 泥だらけのユニホームで涙にくれるナインにねぎらいの声が飛ぶ。前回出場した一九九一年に主将だった下山泰司さん(46)は「1回戦で勝った時は涙が出た。文武両道でここまで来た選手たちを褒めてあげたい」と感激した様子で話した。

◆監督・主将の談話

<尾崎直輝監督> 「選手はよく頑張った。監督の力が足りなかった。(サイクル安打の杉田選手は)警戒していたけどそれを上回ってくる選手だった」

<中沢直之主将> 「チャンスをつくってからの1点が難しい。これが甲子園の難しさと痛感した」

<熱球譜>堅守の男に最後の打球 国学院久我山3年・伊藤佑馬選手

 打たせて取るエースのチームに堅守の選手は欠かせない。二塁手として西東京大会で失策はゼロ。この日も3度の守備機会を難なくこなし、「これまでのつらい練習が実を結んだ」。縁の下の力持ちらしく控えめな口調で語った。

 強みを伸ばすのが久我山野球。「自分は守備だ」と入学時から貫いた。小学校時代の監督だった坂本修さん(66)が「一番練習する子だった」と褒めるように、高校でも人一倍ノックを受けた。内野ならどこでも守れる自信をつけ、最後の夏にレギュラーをつかんだ。

 春にスタメンを外れた時、電話で励ましてくれたのも坂本さんだった。1回戦ではその恩師が観戦する前で好守備をみせ、「守備範囲の広さは昔から変わらない」と喜ばせた。

 久我山にとって最後の守備となった九回2死。野球の神様は守備で生きてきた男の前にゴロを打たせた。イレギュラーしそうなバウンドにうまく体を合わせてアウトに。派手さはなくとも集大成のプレーだった。「あれだけ多くの人が僕らの一球一球に声援をくれた。つらい練習もこのためだったのかな」。悔し涙の中にすがすがしさがのぞいた。 (加藤健太)

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