教育は平等、ではない。

親の経済力が子どもの教育や学力に反映される「教育格差」。

東京の中心で暮らす裕福な家庭では、子どもの教育に桁違いの金額を費やしていると聞く。

今年子どもを慶應義塾幼稚舎に入学させた桜子さんの反響が大きかったため、今回はさらに踏み込んだ内容をお伝えするべく、慶應義塾幼稚舎、華麗なる小学校の内情に迫る。



#File06 娘を幼稚舎に通わせた理由はとてもシンプル。「慶應が好きだから」


名前:桜子さん
年齢:34歳
子ども:長女6歳
子どもの学校:慶應義塾幼稚舎


ウェスティンホテル東京の『ザ・テラス』。

窓から差し込む光の角度が変わったのをきっかけに、桜子さんは取材班の目を盗むようにして、左腕にさりげなく巻かれたカルティエのタンクに目をやった。

「すみません、もうお迎えの時間でしょうか?」

取材班は慌てて謝る。

1時間と約束していた取材時間は、桜子さんの話があまりに刺激的であっという間に過ぎてしまっていた。

「いえ、あと30分くらいなら大丈夫です。お迎えとかはないので…幼稚舎は原則、送迎禁止なんです。私たちは入学式もバスで行きました」

これまた意外だった。

日本の政財界を支える企業の御曹司やご令嬢が集う幼稚舎であるから、登下校時刻には正門前に高級車がずらりと並ぶものだと思っていた。

取材班がそう伝えると、桜子さんは軽く頷き、思い出したように少し笑ってこう付け加えた。

「まあ原則、なので…実際は送り迎えされている方もいらっしゃいますよ。そういえば入学式の日、運転手付きのマイバッハから降りてくる一族を目撃したわ」

運転手付きのマイバッハ!…さすがは慶應義塾幼稚舎である。

取材班はここで、まことしやかに囁かれる、あの噂について聞いてみることにした。

「幼稚舎では御家柄でクラスが別れるって、本当ですか?」


K・E・I・Oどのクラスになるかを決めているのは…?

実は働くママに優しい、慶應義塾幼稚舎


「どうなのでしょう…確かに、そんな噂もありますわね」

単刀直入に問う取材班の下世話な質問にも、桜子さんは決して動じず微笑を絶やさない。どこまでも品の良い女性なのだ。

実際のところはわかりませんけれど、と前置きをした上で、桜子さんはご自身が知る限りの情報を教えてくれた。

「私が見ている限り、家柄で分けられているという印象は薄いです。強いて言うならO組*は縁故なしの子どもが多いのかも…でもそれも全員というわけではないので。それより、“相性”と“バランス”が重視されている気がします」

なるほど、幼稚舎のクラス分けで “相性”と“バランス”が重視されるには、もっともな理由があるようだ。

「幼稚舎は、6年間クラス替えがないんですよ。担任の先生も変わらないので、クラスメイトも担任も、とにかく相性が大切なのでしょうね」

6年間クラス替えなし、担任も変わらない。

そんな中、クラス内で揉め事が発生したり担任と合わないなどという事態が起きてしまったら…考えただけで気が滅入る話である。

「そういう事態が起こらないよう、クラス分けに際しては、実際に生徒と向き合う担任の先生の意向が大きく反映されているみたいですよ」



「ああ、それから」と、桜子さんは新たな情報を教えてくれた。

「幼稚舎では、ママ友同士で集まることも禁止されているんです。母親同士が集まって、ろくなことはない、と」

そう言った後、「その通りですよね」と桜子さんは悪戯っぽく笑った。

「それでも入学して間もない頃、やっぱり母親同士で仲良くなりたい気持ちもありますし、皆でランチでも…という流れになったことがあったんです。でも上の学年に兄や姉を通わせている先輩ママが、ぴしゃりと止めていました」

上の子がいる先輩ママがリーダーシップをとる、というのは、どこの小学校でも慣例であるらしい。

幼稚舎も例外ではなく、「幼稚舎の校風に反しますよ」と苦言を呈され、ランチ会はそのまま流れたのだとか。

「意外かもしれませんが、幼稚舎は働くママに優しい学校なんです。私も仕事をしていますので、送迎禁止、ママ友ランチ禁止という校風は実際、有り難くもあります」

これだけ女性の社会進出が進んだ現代においても、実は東京の有名私立小学校における専業主婦思想は根強い。

専業主婦でないとダメ、と言われるわけではなくとも、学校から要求される持ち物(上履き入れ、お道具ケースなど)全てに手作りを求められたり、給食がなく毎日お弁当づくりを強いられる学校も数多い。

そんな中幼稚舎は給食もあり、共働き家庭でも通わせやすい学校なのだという。

−幼稚舎の給食、凄そうだな…

取材班がそんな風に思った矢先、桜子さんの口からまたしても驚愕の事実が知らされた。

「幼稚舎の給食は、ホテルニューオータニのケータリングです」


*幼稚舎はK組・E組・I組・O組の4クラスが存在する。


給食はニューオータニ、掃除当番もない?!セレブ小学校、驚愕の内情

強固な絆こそ、人生の宝


−給食がニューオータニ?!

取材班は、思わず笑うしかなかった。

一体給食費はいくらなのだろうか…と無駄な心配をしていたら、「年間10万円しない程度かしら」と教えてくれた。

「飲み物も、和食の時は緑茶、洋食の時は紅茶が出てくるそうで。なんでもかんでも牛乳だと、合わないからと」

取材班は、激しく頷いた。そうなのだ、ご飯に牛乳など合うわけがない。しかしそれが給食なのだと、当たり前だと思って耐えていた自分が不憫に思えてくる。

“社会の上澄み”が集う幼稚舎。選ばれし小学生たちは、やはり食べ物から違うのである。

一つ心配なのは…と、桜子さんが言い淀む。

「幼稚舎はお掃除の時間もないんです。用務員さんが全てやってくださるそうで。お掃除ができない子どもになってしまわないよう、家でしっかり教えないと」

…選ばれし小学生たちに、トイレ掃除などさせられないのである。



−お子様を慶應幼稚舎に行かせようと思ったのは、なぜですか?

桜子さんのタイムリミットが迫ってきたので、取材班は最後の質問を投げかける事にした。

入学できるものなら誰しもが行きたい慶應義塾幼稚舎であるから、その質問は愚問かもしれないが。

取材班の質問に、桜子さんは迷うことなく、こう答えてくれた。

「それはやっぱり、私も主人も慶應が好きだからです」

その表情はとても晴れやかで輝いており、自身の経歴に対する誇りが感じられる。

「慶應で過ごした時間がとても楽しかったし、卒業してからもどれだけ優遇されたかしれません。慶應OBって慶應生に本当に親切にしてくださるから」

慶應三田会**の存在に象徴されるように、慶應は学閥意識がすこぶる高い。それは時に部外者から疎まれるほどだが、慶應生にとってみれば素直に有難い話なのだ。

「人との良縁に勝るものって、ないと思うんです」

これまでの人生、ご自身がやはり良縁に恵まれてきたのだろう。桜子さんはそう断言した。

「幼稚舎から大学まで16年間を共に過ごす仲間との絆は、何にも変えられないものになるはず。それこそが、娘に与えたいものです」

就職、転職、起業、結婚、出産、子育て…

子ども達は強固かつ良質な絆の真価を、学生生活を終え社会に出たあとにこそ、知る事となるに違いない。

長い人生、良い時ばかりではない。浮くときがあれば沈む場面も訪れる。その時に無償で手を差し伸べ、正しい道へと導いてくれる仲間がいるというのは、どれだけ心強いだろう。

その絆こそまさに、「人生の宝」と呼ぶにふさわしいのかもしれない。


**三田会:慶應義塾大学の同窓会の名称。国内の大学同窓会の中では最も古い段階で発足した。


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