呼ぶ方にも、呼ばれる方にもお作法があるホームパーティー。

人格やマナーが試される場でもあるが、その正解を知らぬ者も多い。

都内の様々な会に参加し、その累計回数は約100回にものぼる29歳の沙耶加が、多角的な視点でホームパーティーを評論してゆく。

これまでに、会話の盛り上げかたのお作法や新婚宅でのお作法などを考えた。

さて、今回は?



「なんか...私、毎回手土産で悩んでいる気がするわ。」

灼熱の太陽が降り注ぐ街中から逃げるように駆け込んだ広尾の『ベーカリー&カフェ 沢村広尾プラザ店』で、さとみと二人で頭を抱えていた。

冷えた水出しアイスコーヒーが、体の熱をすっと冷ましていく。

「ホストの田中さん。良い物をたくさん知ってそうだし、奥様はお酒も飲まないし...中々手強いね。」


また、今回も手土産問題が発生している。


雑誌を開けば“デキる秘書が教える手土産特集”や“モテる女の手土産必勝法”などの文字が躍っている。

しかし逆に色々ありすぎて、結局何を持っていけばいいのか分からない。

「理想を言うと、おしゃれで可愛くて、且つトレンドのツボも押さえている物がいいわよね。」

それが分かれば苦労はしない、と喉元まで出かかった言葉をぐっと飲み込む。

前回はさとみとバラバラに考えたが、今回は二人で力を合わせて一緒に考えようということになったのだ。

—たかが手土産、されど手土産...

呪文のように呟きながら、目が肥えている主催者が喜んでくれそうな手土産をリストアップしてみるがやはり、たくさんある。

「田中さんって、何が好きだっけ?」

少しミーハーな田中は、見栄えが良くて且つ美味しい物が好きだ。自称グルメのため、下手なものは持っていけない。

しかも今回は、“料理系とお酒以外で”というリクエスト付きだった。

そうして色々と考えた結果、珠玉の一品を持っていくことにした。


繰り広げられる「手土産品評会」で高評価を得られる品々とは

ホムパで必ず開催される、手土産品評会


豊洲にあるタワーマンションの25階に位置する田中の家は、いかにも“幸せな家庭”そのものだった。

綺麗に片付けられた玄関に、無駄な配色を排除した、センスの良いシンプルな家具。そしてトドメの、爽やかな夫婦の笑顔。

思わずその完璧すぎる空間に眩暈を覚えるが、お決まりの“素敵ですね”という社交辞令を挨拶代わりに交わす。

ホームパーティーを開催したがる人たちは、自分たちの家を自慢したい人たちが多い。

仮に本心ではなくても、褒めるが勝ちだ。

少し立ち話をしていると、ゲスト達が手土産を片手に続々と田中邸に集まり始めた。それぞれの手土産を、一度テーブルの上に並べる。

「手土産品評会」の始まりだ。

まず私たちが持参したのは、『ユーゴ・アンド・ヴィクトール』の 「カルネ・シ・スフェール」。



有名シェフが手がけた、半球形に作られた美しいショコラ。甘すぎない自然な甘みが、お酒にも合う。

何より、皆が感嘆の声をあげたのはパッケージにも理由があった。

まるで本のようなチョコレートボックスは、誰かへのプレゼントや手土産のために存在すると言っても過言ではないだろう。



「さすが沙耶加ちゃん、ツボを押さえていますね。」

田中のご満悦そうな顔を見てほっと胸を撫で下ろした。

続いて、田中の飲食店経営仲間だという小林。彼は『wagashi asobi』のドライフルーツの羊羹を手にしていた。

最近話題になっており、気になっていた商品だ。

そして田中の妻・洋子の知り合いで、今はフラワーデザイナーをしている理沙は、ドライフラワーとのコンビネーションが可愛らしい『cotito』のクッキーを自慢げにテーブルの上に置いた。

こちらも、以前Instagramで見かけて以来、気になっていたクッキーである。

その他にもお酒を飲まない人に嬉しいオーガニックの(アルコールが含まれていない)甘酒や、『イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ』の塩味クッキー、そしてこの季節にピッタリな『ジャン=ポール・エヴァン』のアイスクリームまで登場した。

幸せな家庭に、素敵な手土産を持って集う人たち。
心から楽しめるホムパは久しぶりだった。


ホムパの質が劣化中!?今一度考えたい、“褒められ”ホムパとは

絶賛劣化中の、タワマンホムパの品質


「なんかさ、最近ホムパに行くのが億劫になっていたけど、今日は楽しいね。」

さとみが小さな声で呟く。私も、さとみと同じことを考えていた。

日本人にはおもてなしの心があるはずなのに、最近その心を感じられない会が多く存在する。

幼い頃から人を家に招き、おもてなしを重ねてきた人がホストだと、会は非常に楽しいものになる。

当然のことだが会費など発生しない。手土産も強要されない。

何故ならば、本来ホームパーティーとは、家主がもてなすものだからだ(とは言え、ゲスト側も手土産を持って行くのは暗黙のお作法である)。

しかしここ数年で、そのようなホムパ経験値が低く、家主が“家を自慢したいだけのホムパ”が乱立し始めた。

何故かタワーマンションの中層階に、特に多いように思う。

家主自慢の家具を見せられ、がらんとした空間で待たされる。大概そのような会に限って酒も料理もチープな物が多く、行って後悔する確率が非常に高い。

「ホームパーティーって、その人の本質が見えるよね。」

田中の妻が作ってくれた美味しい手料理を食べながら、過去のホムパを想起せずにはいられなかった。



退屈な仕事やつまらない時間は永遠に続くようにも感じられるのに、楽しい時間はあっという間に過ぎる。

いつの間にか、会はお開きの時間を迎えていた。田中夫婦に見送られながら、皆でわらわらと玄関へ移動する。

今回は、田中の家自慢も少しあったのかもしれないが、純粋に皆で楽しく食事をしようという趣旨のもと、会が開催されていたため楽しい会だった。

帰り際、お礼を言いながらスリッパを脱ぎ、持参した靴下をそっと脱いでサンダルを履く。

—裸足で他人の家へ上がってはいけない。

そんな当たり前のことができない、若い男女も多い。

特に夏は、素足ならば誰かのご自宅へ上がる際に靴下を持参するのは常識なのに、知らない人が増えてきているように感じる。


ホストもゲストもお互い見られ、様々な項目で評価されるホームパーティー。

次は、どんな会に呼ばれるのだろうか。


Fin.


【これまでのホムパのお作法】
Vol.1:会話を盛り上げるだけでは不十分。見られている、家主の品格
Vol.2:ビジネスは、ホムパで始まっている。ゲストを有機的に繋ぐ主催者の手腕とは
Vol.3:ホムパの手土産の「真の正解」を、ご存知ですか?
Vol.4:港区、目黒区などでは◯◯を使うのがホムパのトレンド?!
Vol.5:手土産は地方の名産品。ホムパだからできる、究極のグルメ会
Vol.6:新婚宅へ呼ばれた時のお作法。忘れてはならないこの一言