昔から、異性に気持ちを伝える手段として、“手紙”が多く使われていた。

その中には、相手を想う、数々の言葉がつづられている。

時は、2017年の東京。

日々行き交うLINEに対して、現代の男女は何を想うのか。

最初は全く萌に相手にされていなかった亮太。しかしLINEのやり取りを続けているうちに、萌の方から誘いが入る。

その真相や、いかに。



「萌ちゃんって、本当に可愛いよね。」

初対面でそう言い放った亮太さんに、悪い印象はなかった。ただ、特に惹かれたわけでも心が動かされたわけでもない。

—良い友達になりそうだな。

そんなイメージだった。



同僚の紗弥香に誘われて顔を出した食事会にいたのが、亮太さん。優しい笑顔に、人の良さが表れている。

顔も悪くなく、意外に鍛えてそうな締まった体つきに大手広告代理店勤務。悪くはない。でも、友達に紹介したら言われる一言は決まっている。

—優しそう、いい人そうだね。

女性のこの言葉は、決して褒め言葉ではないと思う。特段何か褒め言葉が思い浮かばない時に使用する、その場しのぎの言葉。

亮太さんはまさに典型的な、可もなく不可もなく、適度な塩梅の男性だった。女性からすると、この手のタイプの男性は一番何も感じない。

だから会話もサラサラと流れていた。

「萌ちゃん、どこ出身?」

東京に出てきて早8年になる。なのに、たまに関西弁(正式に言うと京都弁で、大阪弁とは違う)がつい出てしまう。

「あ、関西弁出ちゃった。私京都出身なんです。夏の京都は、街が華やいで本当に素敵なんですよ。」

何の流れでこの会話になったのかは覚えていないけれど、それほど印象に残っていない一言でしかなかったと記憶している。

そして特にハイライトもないまま、会はお開きとなったが、断る理由もないので社交辞令のようにLINEを交換した。


女性が返信する時、しない時。その差はなに?!

A1:女の気分は日によって変わる。既読スルーもその時の気分次第


翌日亮太さんから来たLINEは、至って普通の、よくあるLINEだった。なのでこちらも当たり障りのない感じで返信をする。



申し訳ないなと思いながらも、“またご飯行きたいな”の箇所には触れないようにした。

正直に言うと、今月は忙しい。でも忙しいと言うのも面倒だし、あえて言い訳がましく説明するまでの仲でもないから。

しかし案の定、(他の多数の男性と同じように)亮太さんからのLINEは続いた。



画面を見つめながら、しばらく考える。土曜は、ヒロシという男性とのデートが入っていた。

ヒロシと食事後、二軒目から行けないこともない。ヒロシは外資系投資銀行勤務の優良株。身長が高く英語も話せて、私が公言している好きなタイプと一致していた。

しかし、話がつまらない。

いつも自分の話ばかりで、私が話したことを忘れていることも多い。なので二軒目から、亮太さんの方に合流してもよかった。

とは言え、ヒロシとのご飯の場所がどこなのかもまだ分からず、時間も見えていない。

結局考えるのが億劫になり、そのまま返信は何となく放置する。(結果として、これは既読スルーと言うのかな...)



しかしそんな感じでこちらから返信をしなくても、亮太さんはたまにLINEをくれた。毎回ではないけれど、返信できるタイミングで何となく返信する。



こんな感じのLINEは続いていたけれど、まだ“大多数の中の一人”でしかない。しかしLINEを何度か受け取るうちに、彼の人の良さにホッとしている自分がいた。

亮太さんの真面目さと誠実さがひしひしと伝わってきて、返信は返さずとも微笑ましくLINEを見つめる。

「萌、何携帯見ながら笑ってるの?」

目の前に座るヒロシの一言でハッと我に返った。亮太さんには家にいると送ったが、本当は真っ赤な嘘。

六本木の『TUSK』でヒロシと飲んでいた。

「ううん、何でもないよ。ところで、私来週土曜から京都に帰るから。」

「そうなんだ。Have fun(楽しんで)。」

ヒロシの会話に、たまに混じる英語を聞くのが私は好きだった。

この時までは。


女が冷める時、惚れる時。女性が貰うと嬉しいLINEとは?

A2:女は自分の話を覚えてくれている人が好き。一文で判明する人間性


その日は、前から行きたかった『京料理 と村』にヒロシが連れて行ってくれる予定だった。店の上品な雰囲気に合うよう、夏らしい白のワンピースでお店に向かう。



近年多いフュージョン系ではなく、素材の旨みを最大限に引き出すシンプルな和食。ここのお店に来ると、毎回和食の真髄を感じずにはいられない。

「やっぱり美味しいなぁ。和食は京都に限ると思っていたけれど、東京には本当に良いお店がたくさんあるよね。」

そんな、何気ない会話だった。

「そう?京都より俺は東京の方がうまい店多いと思うけど。」

「だから言ったでしょ?東京には良いお店が多いって。」

相変わらず、人の話を聞いていないヒロシに若干の苛立ちを覚える。いつもの事だと思い、話題を変えようとしたが、それは逆効果だった。

「そう言えば、萌、来週は何してるの?」

「いや、だから...明日から帰省するってこの前話さなかった?」

何度も繰り返すこの会話に嫌気がさし、鞄の中に入れてあった携帯を見る。ちょうど、LINEが一通入っていた。



ぎゅっと締め付けられていた、刺々しい気持ちが柔らいでいく。亮太さんの思いやりが詰まった一文。この一文に、彼の良さが全て現れている気がした。

しかし、なぜ私が帰省することを知っているのだろうか?



自分でも、忘れていた。そんなこと、いつ言ったのだろう。
でも前回、亮太さんに会った時に言ったに違いない。

—そんなことを覚えてくれているなんて...

女は、生まれた時からお喋りが好きな生き物なんだと思う。

女の勝手な願望かもしれないけれど、男性、特に一番近い人には自分の話を聞いてほしい。少しでも、話したことを覚えていてほしい。

隣に座るヒロシが途端に色褪せて見える。何気ない会話を覚えてくれており、そして出発前に連絡をくれた亮太さん。

もっと、彼のことを知りたい、会いたい。咄嗟にそう思った。



翌日、品川駅から新幹線に乗り、実家へと向かう道中で、気がつけば亮太にLINEを送っている自分がいた。

そして、この一文も。



携帯を胸にあて、顔を上げる。
新幹線の車窓からは、ちょうど富士山が綺麗に見えた。


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LINEの答えあわせ【Q】:完璧だったはずなのに。彼女に浮気がバレたのはなぜ?


<これまでのLINEの答えあわせ【A】>
vol.1 デート後「今日は楽しかったです!」の一文に潜む、女の嘘。
vol.2 日記かよ?!一方的に “俺通信”を送る男が結婚できないワケ
vol.3 女性の「また誘って下さい♡」の真意、勘違いする男たち
vol.4 あなた、誰だっけ。「元気?」と送ってくる仲良し勘違い男
vol.5 デート後のお礼LINE。すぐ送るのは、翌日持ち越したくないだけ
vol.6 会話をスタンプで済ませないで!スタンプ乱発男に冷めた瞬間
vol.7 「忙しくて予定分からない」は、決定打に欠く女への常套句
vol.8 これってコピペ?男性からのLINE、スクショで情報共有する女たち
vol.9 先輩に紹介された女性からのLINE、既読スルーにはできません!
vol.10 仕事後の彼に「お疲れさま♡」とLINEを送る女の本音
vol.11 いい女って言われたい。トキメキを忘れた女の悪戯
vol.12 「またみんなでご飯に行きましょう^_^」が意味する、女の打算
vol.13 LINEを送る、ベストなタイミングは? 男の本音と食い違う、女の妄想