東京の女性たちは勘違いをしているかもしれない。

結婚できれば、それでハッピーエンドだと。

だが、生活を共にし始めてからが本番だ。結婚した後は、夫婦生活を継続するための「結婚維持活動」が必要である。

ー人間は判断力の欠如によって結婚し、 忍耐力の欠如によって離婚し、 記憶力の欠如によって再婚する。

フランスの劇作家、アルマン・サラクルーの言葉のように、「結婚維持」のキーワードは果たして、忍耐なのか?

この連載では、東京で「結婚維持活動」に勤しむリアルな夫婦の姿をお届けしよう。

今週は、専業主婦・雅子の夫、ユウジを取材した。



<今週の結婚維持活動に励む夫>
名前:ユウジ
年齢:38歳
職業:証券会社 営業職
結婚生活:5年


完璧すぎる夫には、秘密がある


しかし、今日も暑いですね〜。僕、真っ黒でしょう。

最近になって嫁に言われて、日焼け止めを塗り始めたんですけどね。肌に悪いからって。でも面倒ですよね。
よく女の人はあんなこまめに色々出来るなって感心しちゃいますよ。

あなたもこまめにケアしてるんでしょう?

だって肌、凄く白いですよね。ほら、腕、比べてみて。

ちなみに僕、息子がいるんですけど、出かけるとなると息子にも日焼け止めを全身に塗りたくるんです。

最近の子供は、水遊びとかするときは、ラッシュガードって言って長袖の上着を着せるんですよ。僕が小さい頃なんて、そんなのなかったですけどね。

夏休みなんかは親父と僕の兄弟とで、1日中真っ黒になるまで遊んだもんです。

あぁ、話が逸れましたね。え?嫁に不満?いえ、そんなこと言ったらバチが当たりますよ。

本当に良い奥さんなんですよ。でも……。


完璧な女性を求めるあまり、迷走する夫

「完璧な女性」のちょっとした変化


妻とは、お見合い結婚でした。今どき、珍しいですよね。

うちの実家、別に大したことないんですけど結婚に関しては割とうるさいんですよ。

彼女、働いたことなくて、家事手伝いをしているって言ってたんですけど、その世間知らずな感じがまた可愛らしかったです。

僕が話している時も、すごく恥ずかしそうにしていて、あぁ、この子タイプだなと好印象を持ったのを覚えています。

顔の造作、育ち、ちょっとした仕草まで全てが僕好みで。完璧な女性だと思いましたよ。

双方の両親も乗り気で、僕らも気があったので、お見合いから半年もしないで結婚しました。

しばらくは2人で新婚気分を味わって、何の苦労もなく子供も授かりましたよ。



ただ、その頃からです。

ちょっと心境の変化があったんですよね。

雅子は凄く良い妻です。

けど、彼女が妊娠してしまい、ホルモンバランスの乱れもあったと思うんですけど、少し性格がきつくなってしまったんです。

おまけに、体がしんどいからと実家の方に入り浸るようになりましてね。食事の支度などもしてくれなくなり、ふと、暇になったんですよ。

それで、何となくまた昔の仲間と西麻布のバーやらクラブに遊びに出かけるようになりました。なんていうか、出会った頃の雅子みたいな女性を探していたのかもしれません。

それに僕、自分で言うのも変なんですが、驚くほど女の人に好かれるんです。指輪をしていても、ですよ。

そこで少し調子に乗って、遊びすぎてしまったんですよ…。

妻にも何度か疑われたことがあり、かなり焦りました。

けれど、お互いの家が結構うるさいというか、親戚付き合いも盛んな家柄で…。僕は彼女と離婚するわけにはいかない。それに僕だって、雅子のことも、息子のことも失いたいわけではないんですよ。

だから、僕なりにどうにか彼女から離婚を切り出されないように自分なりの3ヶ条を作ったんです。


ユウジなりの結婚維持の3ヶ条とは

本人なりに努力をしている「つもり」


僕、雅子や息子を失うことを想像しただけで息ができなくなるほど苦しいのに、誘惑に弱いというか、言い寄られると断りきれないところがある。僕のダメなところです。

だからせめて雅子には絶対に気付かれないように、と心を砕いています。

まず、浮気を疑われても絶対に認めない。これが一つです。墓場まで持っていくつもりで、真剣に痕跡を消します。

それから、家庭生活は抜かりなく完璧にすること。育児は責任持って取り組むのはもちろんですが、料理もしますし、洗濯物を畳んだりも積極的にこなすんです。

最後は、雅子に沢山の愛情表現をすること。記念日ごとの食事や、ちょっとした時にプレゼントをするのも欠かせません。

この間食事に行った『ボウ・デパール 青山倶楽部』なんかは、雅子も凄く気に入って喜んでくれましたね。



これだけやっているので、今のところ、家庭は平穏です。

案外普通だったって?そうですね、普通かもしれません。でも、これをこの先何十年も続けていかないといけないのが結婚生活です。

この平穏を維持するためには、地味なことをコツコツと積み重ねて行かないと、崩れる時は一瞬ですからね。

……なんて偉そうなことを言ってますが。やっぱりボロが出てるのか、雅子から色々と問い詰められたりすることもあったので、情けなく思っています。

結婚してこそ一人前な風潮が未だに強い会社ですし、そのおかげで上司からも信頼されている部分も少なからずある。

それに雅子の実家からも結構な援助があり、息子が私学に行く場合は援助してくれるとまで言ってくれている。

正直いろいろと助かってるんです。だから、離婚は絶対に避けたい。

何かを得るためには、何かを捨てなければならない。これがこの世の中の道理ですよね。

結婚して、息子というかけがえのない存在を得ました。だから僕は、独身の頃の自由を捨てなければならない。

きっと、既婚者の皆さんもそうやって自分を納得させているんですよね?

最近では、電車に乗って薬指に指輪がついている男性を見ると、変な仲間意識を持つようになりました。この人も、何かを捨てたんだろうなあ…って、勝手に想像しては同士のように思っています。

でもやはり妻というのは、一度でも心から「幸せにしてやろう」と思った女性です。

雅子に対して、当時の自分と同じような気持ちの昂ぶりは、もう二度と味わえそうにありません。しかし、そう思っていた自分は確実にいるので、その時の自分の判断を信じることにしています。

なんだかんだ言ってもやはり、息子と雅子には幸せでいてほしい。それはいつも、心から願っていることです。


(fin,)


【これまでの結婚維持活動夫妻たち】
Vol.1:婚活よりも大変な、結婚生活の“維持”。その秘訣とは?
Vol.2:子供を持ちたい夫 vs 持ちたくない妻。結婚維持活動の妥結点とは?
Vol.3:余裕がある分、悩み多き専業主婦。私の存在価値を作るのは、夫ではない
Vol.4:「母親みたいな女性」と結婚したつもりの、夫の誤算と苦悩
vol.5:「住所を変えたくない」支配型の姑との窮屈な同居に耐え続ける、妻の本音
vol.6:「女に本音を言う必要ない」がポリシーの、狡猾な夫の策略
vol.7:「夫は家電のようなもの」と割り切る妻。2017年、仮面夫婦はこう進化した!
vol.8:ある日を境に妻を愛せなくなった夫が語る、勝手な理論
vol.9:家事も子育てもソツなくこなす高収入夫の横で、幸せじゃないのに笑う妻