夜更けの赤坂で、男はいつも考える。

大切なものができると、なぜこんなに怖くなるのだろう。

僕はいつも同じところで立ち止り、苦しみ、前を向こうとして、またつまずく。

赤坂で、男はある女と出会う。彼女の名前はハナ。ひと回りも年下の女だった。

夜が更けていくたびにどんどん深くなる男の心の闇に、ハナは一寸の光となるのか…?

「赤坂の夜は更けて」一挙に全話おさらい!


第1話:俺はもう、おじさんなのか?41歳男が溺れた、ひと回り下の彼女

仕事に煮詰まっていたハナが、気分転換に赤坂見附のスタバまで散歩していると、明らかに接待終わりの井上さんがちょうど店から出てきたのだ。

打ち合わせから少し日にちがあいたので、井上さんは自分のことを覚えているだろうかと不安になったが、目が合ったため、ハナは笑顔を作って会釈した。

―あのときのハナの困ったような笑顔を見て、好きになっちゃったんだ。

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第2話:あなたを利用してるだけ?寂しい夜に電話するのは、本命の男と限らない

三軒茶屋、中目黒、代々木公園。引っ越し先に規則性はなく、住みたいと思った場所で適当に部屋を探している。今の家は少し古いが、広めの間取りと日当たりがいいのが気に入っている。

―ハナはいつまで経ってもフラフラしてるから、本当に心配。

大学時代からの親友である葵は、会う度にそう言ってくる。彼女がいつも口にする“ちゃんとして”というのは、一体何のことなのだろうか。首をかしげたハナに、葵は間髪入れずにこう言った。

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第3話:23時の赤坂で会う「ご飯友だち」ナンバーワンの男。私はなぜ、彼を好きになれない?

ハナは突然「焼肉が食べたくなった」と言い出し、深夜3時まで営業している『炭火焼ホルモン かぶん』にその場で電話した。

「空いてるって」

そう言って目を輝かせるハナのことを、井上は「悪魔だ」と思いながら、それでも文句も言わずについていくのだった。

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第4話:私の彼氏には、婚約者がいた。29歳の女心に深く刻まれた傷跡

その日は六本木の『石頭楼アネックス』で、甘い豚ばら肉と相性抜群の、ピリリと辛い火鍋に舌鼓を打っていた。お肉に絡ませた卵がとろん、と落ちそうになって、慌ててそれを口に含ませる。

毎日のように自分の家に来ている男が結婚秒読みで、しかも相手は自分じゃない女の名前。ハナは激しく動揺した。

「…玲奈ってだれ?」

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第5話:目の前で泣く彼女に何もできない。自制心を失いかけた男の胸の内

一目ぼれに近いかたちでハナに告白しているが、彼女に指一本さえ触れていない。鮨だの焼肉だのを散々食べさせたあと、家に度々出入りするようになってからも、だ。だからハナにこうして泣かれると、井上は途端に困ってしまう。

今までだったら目の前にいる女が泣いたとき、何も言わずにただ抱きしめた。ぎゅっと抱きしめ、落ち着いたらゆっくり話を聞いてやること。

それがこの41年間、井上が信じてきたやり方だった。しかし目の前にいる女に、果たしてそれが通用するのだろうか。

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第6話:寂しさで始まる恋は本物じゃない?彼氏で埋まらない寂しさを、別の男で紛らわせる女

ハナは一人で自分の家にいるのが、嫌だった。渉君は最近全然帰ってこないし、一人で家にいると気分がどんどん落ち込んでしまう。そうなると、自然と頭に浮かんでくるのは井上さんの顔だった。いつもハナに呆れながらも「しょうがないなぁ」と言う、その優しい笑顔を。

これは、恋なのだろうか。井上さんに「会いたい」と思う度に、ハナは混乱する。寂しさから始まる恋なんて恋じゃない、と思いながらも、しかし井上さんの存在はハナにとってなくてはならないものになりつつあるのだった。

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第7話:金曜日の26時。元彼からの電話で帰る女の、下手な嘘

部長はさっきから、ハナが今より5キロ太っていた頃のことを嬉々として話していた。もう何十回聞かされたか分からないこの話は、部長にとってはじゃれ合いのようなものなのだろう。飲んでいるときのことを大抵覚えていない部長は、確かに「酔って楽しくなりたいだけ」だ。

その部長の言葉に「いただきます」とグラスを傾け、部長にも注ぎ返す。それでもやっぱり居心地が悪くて、このあと井上さんに会いに行こうと決めた。どこにも居場所がないと感じるハナの、唯一の避難所に。

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第8話:移ろいゆく女心を察した、41歳男の凄まじい絶望感

眠たい目をこすりながら、洗面所に向かう。洗面台で見上げた顔はいつもより疲れて見え、そこには確かに41歳のくたびれた男の姿があった。

しかしいつものように両手で頬を軽く叩き自分を奮い立たせると、申し合わせたようにディレクターから電話があった。井上が企画した特番のキャストにダブルブッキングがあり、急遽調整して欲しいという連絡だった。

その電話で一気に目が覚める。本来なら嫌なはずの仕事のトラブルも、今の井上にとってはないよりマシだ。独り身の井上にとって、今のところ仕事が唯一の慰めなのだ。

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第9話:魅力的な女友達への敗北感から、思わず口走った残酷な一言

「葵は、いつもきれいにしてるよね」

どんな時も葵は、メイクも洋服も抜かりなくきちんとしている。しかしいつも声がかかるのは、化粧気のないハナなのだ。

ハナと一緒にいて感じるこの敗北感には、もう慣れっこだと言い聞かせる。それに、修二が言っていた「放っておけない」魅力に葵自身も惹きつけられて、こうして何年も友達をやっているのだ。

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第10話:重い、寒い、暑い…。3文字だけで会話するわがままな女と、律儀に答える男

井上だって、ハナのその言動から、男の一人や二人はいるだろうと覚悟はしていたのだ。半年くらいアタックし続けても「暖簾に腕押し」状態だったし、最近はさらにつれない態度だった。

それでもハナから食事に誘われることも時折(気まぐれに)あった。彼女の様々なわがままには閉口したが、自分に心を開いてくれている証拠だと思っていたのだ。

それに慎重派の井上は、たった一つだけ気をつけていたことがあった。

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第11話:あなたの隣にいる、可憐な女は一体誰?初めて感じる嫉妬心に、戸惑いを隠しきれない女心

気がかりなことに、父親は病院に運ばれて以来、すっかりしょげ返っているようだ。元々ひどく仕事人間で、経営していた不動産会社を人に譲ってからは、サークルだの旅行だのずいぶん活動的にしていたはずなのに、最近はめっきり行っていないらしい。

井上は心もとない気持ちになって、帰りの小田急線に乗った。今日は、誰かと酒を飲みたい気分だった。

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第12話:“孤独”に慣れ過ぎたバツイチ男が、結婚を決意した理由

静香が家から出て行き、井上はそれまでずっと見ていなかったスマートフォンを慌てて確認した。着信が3件、LINEも2通ほど届いていた。

―今から井上さんの家、行ってもいい?

1通目のメッセージは、1時間ほど前に来ていた。そして2通目のメッセージに、井上はひどく心を痛めた。

―井上さんに、どうしても会いたくなっちゃったの。

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第13話:年の差、12歳。素直に「好き」と言えぬ事情が、女にはある

スマートフォンの画面をじっと見つめながら、その着信に出ようかしばし頭を巡らせる。井上さんの声を一刻も早く聞きたいのに、それに出るのは躊躇われる。井上さんが女性と2人で歩いているのを見て、裏切られた気分になっていたのだ。

―私のこと、散々好きって言っていたくせに。

自分のことは棚に上げて、そんな風に思ってしまう。10回ほどコールが鳴ったあとで、ようやくその電話に出る。

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第14話:「彼に依存する自分が嫌」男を狂わす、身勝手な女

「私ね、井上さんに言ったのよ」
「……え?何を?」
「ハナには、一緒に住んでいる彼氏がいるって」

それを聞いたハナは、茫然とした。しかしそれに構わず、葵は断言した。

「自分がそうやってふらふらしてるから、人のこと信じられなくなるんじゃないの?」

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第15話:「彼のこと、何も知らないのね」41歳魔性の女から、痛烈な一言

静香のメールアドレスに、葵は祈るような気持ちでメールを送信した。美月をあれほど落ち込ませ、マイペースなハナをも振り回す。そんな女に会ってみたい。

―ご連絡、ありがとうございます。週明けにいかがかしら?

何の邪推もない静香の返事に安堵し、週明けの月曜日に約束を取り付けた。

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