トレンドを敏感に反映した新店が日々誕生する街・六本木。そんな街にありながら、変わらずに愛され続ける名店が存在する。ココに行けば間違いなし!という名店を4軒厳選してお届けしよう。


本場・上海の味を変わらず、正しく伝え続ける
『中國飯店 六本木店』

今や、すっかりポピュラーな中華メニューのひとつ、「黒酢の酢豚」。実はここ、『中國飯店 六本木店』がいち早く手掛けた料理であることをご存知だろうか。1973年、中国人オーナーが開業するにあたり「上海の名物料理である黒酢を使った酢豚を出したい」とメニューに載せたのが始まり。

酢豚といえばサンザシやケチャップを使った“赤くて甘い”ものが主流だった時代に、パイナップルはおろか野菜も一切入れない、豚肉のみの潔い酢豚は、六本木に集う流行に敏感な人達の耳目をさぞや集めたことだろう。

黒真珠の如く艶やかな酢豚の味わいは、力強い!の一言。時間がたっても触感の良い衣に、あんがたっぷりと絡む。やや厚めの皮から肉汁が溢れる焼きギョウザや、フカヒレと蟹の内子という豪華競演なスープもまた然り。


2階は個室が中心で6室を用意。さまざまな広さの部屋が用意されている。数十人での会食も可能。


1階は比較的カジュアルな雰囲気。さまざまなオケージョンに対応してくれる。テーブル席は115席のため、大人数での食事会にも重宝しそうだ。


六本木六丁目の信号のたもとに、深夜まで燦然と輝く看板。まだファミレスやコンビニがなかった頃は、夜遊びの締めとしてここに立ち寄る通人が、今以上に多くいたはず。


とっておきの晩餐なら眼前で焼き上げられる、極上の黒毛和牛を
『STEAK HOUSE hama』

東京オリンピックが開催された、1964年に創業。活気づいていたであろう街の雰囲気が、オープンしたばかりの店の賑わいを一層後押ししたはずだ。そして、それから半世紀を超えた今、『ステーキハウス ハマ』は六本木の美食を語る上で外せない存在となっている。

2013年11月に現在のビルにリニューアル。4階建ての重厚な建物には、デート、会食などあらゆるオケージョンに対応可能な鉄板カウンターや個室が設えられている。


主役たる黒毛和牛は、「日本三大和牛」の中から松阪・近江牛を仕入れ、常時状態の良いものを提供。綿密に焼かれたステーキは、ひと切れ食せば、繊細な身質と、舌にすっと溶ける脂に陶然となる。それでいて、海鮮類も活けのものを使って抜かり無いのも、名店の証左。

サーロインであれば、肉塊から切り落とした脂を野菜と共に肉の上にのせ、一緒にひっくり返し……と、シェフの流麗な手さばきも、味わいを増幅する大切な要素だ。


オープンカウンターでも、個室でも、すべての席に鉄板を設え、ゲストの目の前で調理するのが『ハマ』流。


店は、乃木坂に程近い交差点にそびえ立つ。(サービス料10%が加算されます)


仕込みに10日かかる素材も!職人の技が光る鮨店が登場!

連綿と継承されてきた、文化としての江戸前を今日も貫く、職人の凄み
『鮨 奈可久』

肩書は鮨職人。今回、鈴木隆久氏の名刺で、改めて発見したことだ。『鮨 奈可久』が六本木に誕生したのは昭和54年。現在地に移ってから数えても20年の月日が流れた。カウンターに鎮座する氷柱は銀座『なか田』の親方から学んだ術。16kgの塊を今も毎朝、仕入れている。

「数年前、科学的に検証したらネタを濡らさず鮮度を保つ、最も理に適った方法とわかった」

つまりは、そういうことなのだ。理屈でなく、経験で最善をずっと積み重ねてきた。だから鈴木氏も「文化」と言い切る江戸前の今日がある。


「江戸前の塊」と胸を張る太巻きにはおぼろ、かんぴょう、煮穴子に茹で海老。玉子はじっくり焼き上げるし、椎茸は「10日かけて味を入れる」煮付け。ともかく食べれば渾然一体の味に酔いしれる。ただ旨いと唸ってしまう。

「適当なことをやって、『そりゃぁ、違うよ』なんてお客様に言われるわけにはいきません」。職人の矜持が明日の江戸前へと連なっていく。

写真は「蛸の桜煮」。しっかりした旨み、ほろりとした軟らかさに感激。料理はすべておまかせ¥17,280の例。


店主・鈴木隆久氏の手前で存在感を放つ氷の柱。この周囲に今日のネタが整然と並ぶ。「下に敷くガラスの簾が“ぎんす”。氷から下りてきた冷気を受けても結露しない」


20年を経たとは思えないほど、白木のカウンターが美しい。


本能を直撃する旨さ。命の力を皿に込めて、艶やかに、力強く
『日本料理 龍吟』

遮二無二。『日本料理 龍吟』の山本征治氏から、いつも思うのはそのひと言。さらに食してまた、いつものように感じるのだ。何と明快に旨いのかと。山本氏は断言する。「それは私の力でなく、命の力」。

例えば、夏なら天然鰻。「琥珀」と題した、それは皮目のみパリッと音が出るほど香ばしく、その一方で身はふんわり。驚くべき食感の対比の中で艶やかに、しかし、力強く鰻そのものの魅力が立ち上ってくる。案ずるより早く、まず心身が旨いと叫び出す。


この感激を呼び覚ます技こそ、氏の真骨頂。皿に盛り込まんと欲するのは日本料理の本質で、古来より国土が四季折々で育んできた、豊かな食材のエネルギーを、作り手と食べ手が「何とも言えない美味しさ」で共有する。そうした料理をいつも模索してきたのだ。

曰く、「日本料理の力を信じて」。そうした月日を積み重ね、『龍吟』は今年12月23日で15年目に突入する。

写真は「盛夏湯煙(せいかゆけむり)」。讃岐オリーブ牛に山椒餡をかけて仕上げる龍吟流しゃぶしゃぶ。


「雨雫」鱧の落としに2種のジュレをかけた冷製碗。


「夏宝之釜(かほうのかま)」フカヒレ、鮑、水茄子の餡かけ炊き込みご飯。


「料理の前では黒子でありたい」と店主の山本征治氏。「山本の料理と言われているうちはまだまだです」と断言。「理(ことわり)を料る(はかる)」ことを常に考え、食材が輝く、最高の刹那である〝状態〞をコントロールすることが使命と自認する料理人だ。


禅の言葉、「龍、吟ずれば雲起こる」に由来する屋号に因んで、店内の随所に龍の意匠。人間国宝の作家が手掛けた絵皿も飾られている。


開店して15年。この地にしっかと根を張り、多くの食通を魅了してきた。