日々、騙し騙されかけひきをくり返す、東京の男と女。

彼らの恋愛ゲームには、終わりなど見えない。

前回は、行動で男を惑わす女と、言葉を巧みに操る男との拮抗するかけひきを紹介した。

第2回は、ピュアな理系男子と、彼に図らずも振り回される(?)港区女子のかけひきをご紹介しよう。



ピュアな理系男子が恋に落ちた、高嶺の花


こんにちは。渋谷のIT企業に勤務する、エンジニアの誠(27)と言います。

僕は今、片思いをしています。相手は、沙耶さんという同僚のwebデザイナー。一目惚れでした。

歩くたびに優雅になびく、腰までふわりとかかった黒髪。いつも伏し目がちな、氷のような切れ長の瞳。

僕にとって彼女は、いわゆる高嶺の花です。

凛としていて近寄りがたくて…それでも近づきたくて。遠くから彼女を秘かに見つめている日々でした。

そんな折、業務での打ち上げという名目で、皆で飲みに行くチャンスが訪れました。

天にも昇る心地がしたのも、つかの間。僕はザ・理系男子で、東京の恋愛戦場の第一線で戦う手練君子たちのようなスキルは持ち合わせていません。

そこで僕は、少し思い切った手を使うことにしました。


ピュア男の暴走、始まる。

2人きりで飲めるよう仕組んで、急接近を目論む


幸い、飲みに行く予定のメンバーの1人が仲の良いエンジニアだったんです。僕は思い切って、沙耶さんと2人で行かせてくれるように彼に協力を頼みました。

「OK。他の奴らは何か口実を作って、俺が別で連れていくよ」

彼はきらきらした瞳で、「頑張れよ」と僕の肩を叩いてくれました。

年収も頭脳レベルも割に高いのに、女性方面は東京市場において最下層レベルの、エンジニアの同志。僕らの絆は山よりも高く、海よりも深いと言っても過言ではありません。

当日の昼頃、「他のメンバーは急な業務で来られなくなった」と沙耶さんにメッセージをしました。

―それでもよかったら、行きませんか。

祈るような思いで、決死の言葉を添えました。

「せっかくだから行きましょう」と返信が来た時には、心底ほっとしましたね。


そっけない態度にも言葉にもマケズ、食らいつく


1軒目は、渋谷の『ブラッスリー ヴィロン』へ。

ジビエが好きという彼女は、頬をゆるめながら、仔羊のロティを口に運んでいました。そんな無防備な表情はこれまで見たことがなくて。彼女の素顔に少し近づけたような嬉しさがこみ上げてきました。

けれど…正直、会話は全く弾みませんでした。

僕が脳内エクセルの中でしっかり整理してきた〝話題リスト“から、「最近、仕事は順調?」とか「好きな男性のタイプは?」という質問を繰り出しても、のれんに腕押し。

彼女はずっと遠くを見るような目つきで、話を聞いているかすら分からない生返事ばかりでした。

とどめは、以前つきあっていた彼氏の話になった時です。

「彼、会社を経営していたの。赤坂のタワマンに住んでいたのよ」

心臓をえぐられたような衝撃を受けました。僕なんかでは、到底足元にも及ばない。

そう、彼女は、僕には微塵も興味がなかったんです。だからつまらなそうにしていたのだし、あえて僕とは段違いのレベルの元彼の話をしてきたのでしょう。

しかし…僕らエンジニアは、あきらめが悪いんです。

どんなシステムトラブルがあっても、コツコツと地道に対処し、必ず課題を解決する。それに、2人きりになった食事の誘いを断らなかったのだから、少しでも勝算はあるはずです。

そんな不屈の精神を総動員して、僕は彼女に思い切って提案しました。

「2軒目、六本木のバーに行かない?」

彼女は少し思案した後、「いいよ」とそっけない返事をくれました。


男が諦めた途端、女からの意外な反応


僕が提案したのは、『マデュロ』。



以前、ヒルズで働くエンジニア仲間に連れてきてもらったことがあったんです。正直、僕が女性をエスコートする場所としては、かなりの背伸び感がありましたが。

けれど、彼女ほどの女性を連れてくるならここしかない。恐怖と不安を振り切る気持ちで、異世界のようなあの空間に足を踏み入れました。

先ほどの「いいよ」は聞き間違いかと思うくらい、ここでも彼女は不愛想でした。

僕も最初は焦って話題を探していましたが、次第に、この気まずい雰囲気がどうでも良くなってきました。どうせ脈などないのだから、もう好かれなくてもいいや、と。

気づいたら僕は、酔いもあいまって、自分の仕事話を滔々と語っていました。

「…それで、次の日の早朝までの数時間で、トラブル対応だよ。でもここからがエンジニアの本領発揮で…」

今思い出しても赤面するくらいの、熱の入ったプレゼンでした。素面の僕なら、絶対できないですね。

でもその時の彼女の反応は、意外でした。

「絶対引いているだろうな」。おぼろげな理性で思いつつ横の彼女を見ると、何とも言えない目つきで、僕の方を凝視していました。

好奇心の宿った目というか…その日初めて、僕の方をちゃんと見てくれていた気がします。

僕がひとしきり話し終えた後でした。彼女はそのままの目つきで僕を見つめながら、そっと身を寄せてきて、ささやきました。

「…今日は楽しかったよ」

思いもかけない言葉にあっけにとられている僕を見て、彼女は妖しい微笑を浮かべながら言いました。

「実はね。ずっと、ふたりで飲んでみたかったの」

その言葉を何度思い出しても、いまだに天に昇る心地がしてしまいます。

何が彼女の琴線に触れたのか、正直分かりません。僕の仕事熱心な態度に好感を持ってくれたのでしょうか。

いずれにしろ、終わりよければ全て良しですよね。

近々、次のお誘いをしてみようと、胸を高鳴らせています。


男心を振り回す、沙耶の戦法とは?

港区女子・沙耶から見た、ゲームの裏側。


沙耶(26)です。広尾在住で、webデザイナーをしています。

誠さんのこと、実は少しいいな、と思っていました。

もちろん、本命としてではないですよ。数ある選択肢の1つとしてです。



彼、爽やかで真面目で、秘かに女性からの人気が高いんです。web業界のエンジニアは、結構年収も高いですしね。

彼氏としては刺激が足りないし面白味がないけれど、結婚向きなタイプだし、候補には入れておきたいという感じでした。

そんな折、たまたま飲む機会ができて。都合良く残りのメンバーが来られなくなったということで(もしかして、彼が仕組んだのかな?そんな力量、ないか…)、2人きりで行きました。


そっけない態度&元彼話でレベルの違いを認識させる


1軒目、お料理はとても美味しくて、思わず顔がほころんでしまいました。

でもというか、やはりというか…彼との話は、全く盛り上がりませんでした。

質問がありきたりすぎてつまらないんですよね。今時、大学生でももうちょっと捻った質問ができるのではないでしょうか。

私は会社にいるときと同じような、そっけない態度で対応し続けました。

簡単に男性のペースに乗せられちゃ、いけません。

自分のせいでつまらないのかな…って男性を思いきり焦らしておいて、彼らが諦めかける寸前で少しその気を見せる。

あとは、過去におつきあいしていた男性の話ですね。

元彼のレベルが高ければ高いほど、「そんな男に選ばれるほど価値の高い女性なんだ」と、男性の狩猟本能をかき立てることができますから。

誠さんみたいに謙虚なタイプにこの方法が有効かは賭けでしたけど、2軒目に誘ってきたのだから、成功したのでしょうね。


予想外の場所で意外な展開を迎える、男と女


そして2軒目のお店は、意外にも六本木の『マデュロ』。

彼には敷居が高すぎるでしょ…と思いましたが、そのギャップ見たさに誘いにのりました。クリエイティブ職という職業柄、未知の物事はつい覗いてみたくなるんですよね。

相変わらずひねりのない質問を続ける彼に、散々そっけない態度を取った後。

そろそろ恋愛の話題でも振ってちょっと湿っぽくしてあげようかな?と思っていた頃でした。

彼、滔々と、自分語りを始めたんです。

私、面喰いました。本格的に主導権を握ろうと思っていた矢先、いきなり彼のペースに持っていかれたから。

計算が狂ったのとあまりに意外だったのとで、図らずも彼に見入ってしまいました。

けれど、最後まで彼のペースなのは、やっぱり癪。

話が終わったのを見計らって、彼の耳元で「ずっとふたりで飲んでみたかったの」と甘い声でささやいてあげたんです。

彼、ほの暗い場所でも分かるくらいに、顔を真っ赤にしていました。真面目ですよね。

そばに置いておく候補としては、今までにいないタイプで面白いかなって。次のお誘いには、またのってあげようと思います。


ピュアなエンジニア男vs計算高いデザイナー美女…勝負の結果は?


意外な一面で女性の興味を引いた男性と、印象操作で男性の好意を加速化させた女性。

貴方が思う本当の勝者は、男?それとも女?

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