これまで、LINEのテクニックを3ヶ月にわたり伝授してきた。

これはいわば、マンツーデートに漕ぎつけるための駆け引き。

この難関を突破し、いよいよデートに臨む諸君に捧ぐ『デートの答え合わせ』、開幕である。



「ねぇ、この後もう1軒行かない?」

時刻は23時20分。終電まで、あと30分。可愛い彼女から2軒目の誘い。

初回のデートだし、ここは帰すべきなのか?がっつけば、このトラップに引っかかったことになるのか?

あらゆる妄想が駆け巡り、頭の中はパンクしそうだった。



「萌花です。渋谷にあるIT系企業で働いています。」

初対面の自己紹介で、萌花の視線は真っ直ぐ僕の方に向いていた。

この日は後輩がセッティングした3対3の食事会だった。女性は渋谷にある有名な(且つ可愛い子が多いと噂の)IT企業に勤めており、皆粒揃いだった。

普段このような会には滅多に参加しない。少し前まで彼女がいたから。しかし半年ほど前綺麗にフラれ、同期に誘われた会に参加することになったのだ。

「孝之さんは、何をされているんですか?」

目の前でさっきから僕に興味津々な萌花。

「名もなきベンチャー企業で働いてるよ。アプリを作ったりしている会社なんだけど、知ってるかな?」

僕も元々IT系の会社におり、数年前に仲間と起業し、アプリ制作会社を経営していた。

「ほぼ同じ業界ですね。じゃあ今度、デートしましょう!」

こうして、萌花のペースに巻き込まれたまま、いつの間にかデートの日程が決まっていた。


初デートで犯していた彼のミスとは?

Q1:女性が「もう1軒行こう」と言うとき。その心理は?


萌花に押されて決まった初デートだったが、僕も僕で楽しみだった。

5年間付き合った彼女と別れてから傷心気味だったが、そろそろ次に進んでも良い時期だ。

「店は任せて」と言った以上、真剣に考えなくてはいけない。しかも萌花は、良い店をたくさん知ってそうな雰囲気を醸し出している。

彼女が今までデートしてきた男性たちに劣らぬようなお店を...そう思い、恵比寿にある隠れ家和食『くおん』にした。



デート当日。仕事関係ではない女性との、久しぶりの2人きりの食事に僕は少し緊張していた。

店に入りそわそわしながら待っていると、萌花の登場と共に、ふんわりとした清潔感のある香りに包まれる。

「ここ、来たことあった?」

「初めてです♡こんな所にこんなお店があったなんて、知らなかったです!」

恵比寿駅から近いところにあるが、ひっそりとした佇まい。そして料理は温かみがありながら、もう一度食べたくなる物ばかり。

そんなギャップが好きで、この『くおん』はデートにぴったりだと思っていたのだが、どうやらその狙いは正しかったようだ。



「ここの店、何食べても美味しいから。萌花ちゃん、好きなの選んでいいよ。」

「えー困るぅ。何がいいかなー。おすすめは何ですか?」

店の人にオススメを聞きながら一生懸命メニューを見つめる萌花を見て、思わずビールを飲みながら微笑ましく見つめてしまった。

肝心のデートは働いている業界が似ていることもあり、話題は尽きない。“堅苦しい敬語はなし”と決めて以降、お互いの距離はぐっと近づいた。

「萌花は、お酒は何が好き?次何か違う物頼もうよ。」
「私は日本酒が好きかなー。日本酒でもいいの?」
「もちろん。俺も日本酒好きだから。」

ビールから始まったお酒は、いつの間にか日本酒へと変わっていた。

—もう少し、一緒にいたいな。

店を出た途端、咄嗟にそう思った。しかし萌花はまだ実家に暮らしており、世田谷の奥の方だと言っていた。

港区おじさんじゃあるまいし、タクシー代を渡すのは何か違う。そうだとしたら電車で帰すしかない。

しかしその時、萌花の一言に僕は戸惑いながらも思わず顔がニヤついた。


「ねぇ、この後もう1軒行かない?」


時刻は23:20。どうやら電車で帰るつもりはないようだ 。

しかし今日は初デート。さすがに遅くまでつき合わせる訳にも行かないし、建前上、紳士的な口調で聞いてみる。

「時間、大丈夫?そしたら軽く1杯だけ飲もうか。」

こうして、僕たちは1杯だけ飲み、深夜1時過ぎに解散した。

もちろん、タクシー代は渡していない。


この孝之の行動は正しかったのか?彼女が求めていたこと、分かりますか

Q2:タクシー代を渡さなかったのが彼女の機嫌を損ねたの?


翌日、デートのお礼を言い合った後もLINEは続いていた。

前回のデートは楽しかったし、萌花の存在が徐々に自分の中で大きくなっていく。久しぶりに、いい子に出会った。それが率直な感想だった。

そう思っていると、萌花の方から2回目のデートの誘いが来た。

—萌花:来週末、忙しい?
—孝之:忙しくないよ。
—萌花:来週土曜、ご飯いかない^_^?

こうして再び、萌花と2回目のデートをすることになった。

2回目のデートは、前回とはガラリと変えて焼肉の『鉢山』にした。肉が好きだし、2人で一つの鉄板をつつくのは楽しい。

店に現れた萌花は前回と打って変わって、デニムに大きめのニットというカジュアルな装いだった。

しかしまたそれも可愛くて、思わず見とれてしまう(こういう時に、素直に“可愛いね”と言える男が羨ましくもある)。

「この店は無煙ロースターだから、服に臭いがつく心配ないよ。」

そう言うと萌花は嬉しそうに笑っていた。

萌花が選んだ、「本日の特選黒毛和牛」をはじめとした肉を存分に堪能するとお腹は一杯になり、その満腹感と会話の楽しさが心地よかった。



「この後、どうしよう?」

お会計が終わったタイミングで、萌花が大きな瞳を真っ直ぐこちらに向けながら聞いてくる。

「どうしようか?萌花は、どうしたい?」

前回みたいに、“もう1軒行こう”、と彼女は言うだろう。

正直、この前のように電車を逃してタクシーで帰すのは申し訳ないが、2回目のデートで、良いムードだ。これはもう1軒行く以外の答えは考えられない。

しかし萌花の返事は、予想外のものだった。


「じゃあ、今日は帰ります。」


そう言って、会計が済むとそそくさと店を出て、萌花はスタスタと歩き始めた。

「え...!?もう帰るの?」

しまった、と思ったが後の祭りだ。逃した魚の大きさは、失ってから気がつく。

とは言え“ごめん”と謝るのも違うし、帰ると言っている以上、無理やり引きとめる訳にもいかない。

「ご馳走様でした。」

ぺこりと頭を下げ、喧騒の中に消えていく萌花に手を振りながら、LINEを待った。

しかし、その日以来連絡は来ていない。

もう一度デートに誘ったらしつこい奴のように思われるし、どう対応していいか分からぬまま、時間だけが無情に過ぎている。


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彼女が彼を2回のデートで見切った本当の理由とは?:デートの答えあわせ【A】


<これまでのデートの答えあわせ【Q】>
Vol.1:2軒目のデート開始30分。彼女が「明日朝が早い」と突然帰宅したのは、ナゼ?
Vol.2 :2人きりでの食事・デートの誘いに乗ってきた。=“脈アリ”じゃないの?
Vol.3: 初デートは「19時、駅に待ち合わせで。」このNGポイントはどこ!?
Vol.4: 私の、どこがダメだった…?会話も、化粧も服装もすべて完璧だったのに