いいレストラン、ラグジュアリーな料理を知る大人にも、皆それぞれ本能で欲してしまうひと皿がある。

例えばそれは、懐かしのスパゲティだったり、背徳的なハイカロリー飯だったり。

はたまた、酒場の名物の逸品や、あっさりした中華そばと、枚挙に遑がない……。

今回は、日々会食続きの“デキるビジネスマン”の昼のお話。

食べることも飲むことも大好き。だから、会食で盛り上がったりすると、ついつい胃を酷使してしまう。

だからこそ、平日の昼はできるだけやさしいものがいい。

というか、それしか欲しない(笑)

そんな彼のある平日の昼の一幕。



連日連夜の会食に疲れた翌日のビジネスマンの昼

今週はハードな1週間だった。

新規クライアントとの会食に、同業他社勤務の友人と情報交換会、さらに3ヵ月越しの大型案件がまとまったことによる身内でのささやかな打ち上げ。

留学時代の友人が「来日した」と急に呼び出された夜もあったっけ。

ステーキハウスにイタリアン、焼き鳥、鮨、フレンチ……。

連日連夜、我ながらよく飲んでよく食べたもんだ。でも実は、そんな東京での毎日が嫌いではなかったりする。

大阪転勤時代も外食は多かった。

だが、〝よそもん〞の自分は限られたエリアでしか遊べなかったし、店のレパートリーも少なく、もどかしさを覚えたのも事実。

でも、東京は勝手知ったる街。昼間の西麻布でもちゃんと、美味しいところを知っている。



六本木通りを1本入った住宅街の一角。記憶を頼りに路地を曲がると、目当ての店が見えてきた。

あのあっさりスープの味が瞬時に脳裏に浮かぶ。と同時に、腹が鳴った。

シンボリックな暖簾もなく、わかりやすい立地にあるわけでもない。ラーメン屋なのに隠れ家的というのも実に西麻布らしいと思う。



でもオーダーは現金オンリーの食券機。この永久不滅ともいえるスタイルに、思わずほっこりしてしまう。

注文はベーシックな醤油の「琥珀」1択。昔なら迷わず〝大盛りで特製〞だったけど、今の自分はシンプルが心地いい。


限りなく透き通ったスープに思わずニヤケ顔に!


ラーメン好きの後輩に連れられて来たのは3年前。

知る人ぞ知る幻の行列店が再び「西麻布に戻ってきた!」と、奴が興奮して話していたのを思い出す。



運ばれてきたどんぶりは、昔と変わることなく優しい表情を浮かべていた。

焦がし風味のスープに、魚介系の出汁が溶け出し、細打ち麺と絡み合う。



濃厚な味わいと思いきや、いつの間にかすーっと喉奥へと消え、あっさりした後味が尾をひく。

粗みじんの玉ねぎのシャキシャキした食感も楽しく、いろんな表情を見せてくれる。



ひと口すすれば、もう止まらない。5分でスープまできれいに飲み干した。

まだまだ食べられる。本当は食べたい。でもそこでやめておく。きっとまたすぐ来るだろうから。