体感温度を下げたいはずの夏なのに、無性に欲するのは、さらに身体を火照らせる辛くて熱いひと皿。

ピリリと痺れる刺激が爽快な、辛くて旨いものの代表格を紹介する!



脳天にずしんと響く深みのある辛さ。これはレンゲが止まらない!
『廣安』の「四川麻辣豆腐」

『廣安』は、麻婆豆腐の醍醐味は辣油にあると実感させられる店である。

土鍋の蓋を開けた瞬間、ぐつぐつ煮たった鍋から芳ばしい香りを伴う湯気が立ち上り、食欲のスイッチが入る。

スパイスが入り混じる香りの中枢となっているのは2種の辣油だ。

シェフの田部広一郎氏が作るその辣油は、ひとつは八角や中国山椒、豆板醤などが入ったフレーバーが強いもの。

もうひとつはごま油と一味唐辛子主体のシンプルなものだ。



前者の複雑味ある油を、後者の油が名脇役のごとく引き立てる。舌に豆腐をのせれば、とろっとした口当たりと同時に、脳が一瞬で記憶する華やかな辛さが広がる。

「いまの配合は16年前から。最初にこの味に仕上がった時、お客さんの反応が違いましたね」と田部氏は言い、確かに30種以上にも及ぶ食材の完璧なバランスに驚く。

辛さばかりが立つのでなく、旨みも甘みも塩みも全て一体化し、喉越しまでいいと感じるほどだ。



そんな麻婆豆腐の注文率はなんと95%。

聞けば毎日食べる常連もいるという事実が、その味を物語っている。一度食べたら、定期的に引き寄せられるのはあしからず!



舌に広がる痺れがクセになる、あと引く刺激を堪能せよ
『山ちゃん』の「四川麻辣豆腐」

席に着いて麻辣豆腐を頼むと、厨房から鼻腔を攻める辛い空気が漂ってくる。

1.8Lの油に300gもの一味唐辛子が入った自家製辣油で、具材を炒める香りである。

辣油の辛さに勢いをつけるのは、四川漢源山椒。痺れが強めの山椒で、最初は痺れが来るけれど、のちに爽やかさを放つのが特徴だ。

この流れに誰もが虜になる。



味をまとめるのはチャーシューの煮汁や魚介の出汁からなる自家製醤油で、醤油の深みがごはんを進めさせる一因なのだ。

熱いごはんに熱くて辛い麻辣豆腐をかけて、勢いよくかき込んで欲しい。


店内はメニューの短冊がびっしりでワクワク!


夏なのに欲してしまう辛くて熱いスープ!


発汗を促す山椒ですっきり!
『火鍋 三田』の「キノコ三色火鍋」

白金高輪駅と麻布十番のちょうど真ん中にあるこの火鍋店では、「キノコ三色火鍋」がいちおしだ。

スープ3種で満足度は3倍となり、さらに具材は30種という豪華さ。

しまくる〜あぐー豚、大山鶏、牛、ラム、姫鯛、赤海老などが並び、野菜は旬のもの。

麻辣、白湯、キノコというスープのバランスも秀逸である。



麻辣スープは四川の成都産の唐辛子と青花椒、紅花椒が鮮烈なスパイスのハーモニーを放つ。

麻辣の気持ちいい痺れを感じたら、白湯が中和に一役買う。半日鶏ガラを炊いたスープは白濁した色のとおり、こっくりマイルドで、クセになる。

そして8種類のきのこによるスープは、きのこの旨みが詰まり、滋養強壮を感じる味わいだ。

スープ3種で薬膳が20種類以上使われているので、汗をかきながらもじんわりと力みなぎる一品だ。


コースにはよだれ鶏や自家製チャーシューなど5種の前菜が付く。


店内は瀟洒な邸宅のような内装。



酸味もあるから夏でもさっぱり!
『タイ国専門食堂』の「大海老のトムヤムクン」

全テーブルが注文する日もよくあるという、こちらのトムヤムクン。味の決め手は、フレッシュなタイ産のハーブと数々のスパイス。

そのうちのひとつが、タイ料理に欠かせない唐辛子、プリッキーヌだ。

プリッキーヌは約80種あるタイの唐辛子のなかで最も辛いといわれるもので、生で使ってこそエキゾチックな魅惑の香りが立つ。



加えてパンチの強いタイ産生姜、カーによって辛さがアップグレード。

それらの刺激が旨辛に仕上がるのは、鶏ガラと豚骨でとったスープがこく深いからであって、舌がピリッとしつつも吸い込むように飲んでしまう。

嬉しいのは、大きな海老が3尾入っていること。メインディッシュさながらの大ぶりな海老の存在感は圧巻。

スープはカレーのようにごはんにかけて、最後の一滴まで堪能し尽くしたくなるご馳走だ。


店主が撮影した約15年前のタイの写真が飾られた店内。