「この女、なんかムカつく」って思われるほど、羨望される存在になりたい…

結局、自己PRの上手い「あざと可愛い女」がいいところを持っていくのが世の常

真面目に生きてるだけじゃ、誰かの引き立て役にしかなれない

◆これまでのあらすじ

失恋をきっかけに、新しい出会いを探し始めた夏帆(26)。オンラインで出会った男性からデートに誘われたことを喜んでいたが、実は盛り上げ役としてパーティーに呼ばれただけだった…

▶前回:「サラダ取り分け女」食事会で感謝されても、実はモテない意外な理由



「ただいま〜」

誰が待つわけでもない部屋に向かって、一人呟く。これは癖のようなものだ。

自室の灯りをつけてベッドに腰掛けると、ほっとしたような、どっと疲れたような感覚に襲われた。

シャワーを浴びてベッドに入る前にバッグから携帯を取り出した。

―あ、淳太さん…!

勢いでLINEを送ってから、敢えて見ないようにしていた携帯。ロック画面に表示されたポップアップには、「淳太」の名前があった。

『久しぶり。元気だよ。夏帆ちゃんは変わりない?』

たったそれだけのメッセージだが、夏帆の気持ちを昂らせるには十分だった。

―声が聞きたい…。

悠乃と付き合う前までは、気軽に連絡をしていた。しかし、今の淳太はフリーだったあの頃とは違う。金曜の夜だし、彼の近くには悠乃が居るかもしれない。

そう思うと躊躇してしまう自分がいる。

それでも、「元同僚だし、電話くらいいいよね」と目を瞑って“エイッ”と通話ボタンを押した。


親友の恋人である淳太に電話をかけてしまう夏帆。しかし、ショックをウケることに…

「…もしもし?」

2コールほどで、電話の向こうからいつもと変わりない淳太の声が聞こえた。

彼が予想以上の速さで電話に出たので、夏帆は驚いた。

「じゅ、淳太さん…!お久しぶりです」

どうしたの、と電話口で優しく笑う淳太。

「いや、なんとなく、どうしてるかなぁと思って」

声を聞いたらいつものように普通に話ができた。他愛もない世間話をしたあと、淳太が優しく尋ねてきた。

「なんかあった?」

「えっ、どうして?」

「だって、夏帆ちゃんが電話してくるときって大抵何か落ち込んでるときじゃない?」

淳太はいつだってお見通しだ。夏帆は、彼のこういうところが好きだった。



「あの…淳太さんって、悠乃のどこが好きで付き合ったんですか?」

思い切って、前から聞きたかったことを淳太にぶつける。

「え、そんなこと聞きたかったの?」と笑っていたが、そもそも淳太に悠乃を紹介したのは自分なのだから、付き合った理由を知る権利はあるはずだと訴えた。

「そうだなぁ。可愛かったから!」

即答した後、淳太は少し間を置いてから、ぽつりぽつりと話し始めた。

「最初こそ苦手なタイプだなぁと思ってたけど、色々話しているうちに、俺この子のこと嫌いじゃないかもと思い始めて。ああ見えてラーメンの食べ歩きが趣味とか、キャンプにハマってるとか…意外と気取らない人なんだなって、一気に親近感沸いてさ」

淳太の言葉を聞いて夏帆の頭に多くの疑問符が浮かぶ。

大学時代からそれなりに悠乃と仲良くしていたが、ラーメン屋さんより高級レストラン巡りが好きだし、虫嫌いの彼女がキャンプにハマるなんて絶対にありえない。

恐らく、淳太との会話や彼のSNSから趣味嗜好を探り、適当に話を合わせているのだろう。

ー悠乃より私の方が、ラーメンには絶対詳しいのに…

夏帆は、悠乃の“ベタな手口”にまんまとハマっている淳太に対して少し辟易した。

しかし、彼は「でもね」と話を続ける。

「何よりも一番いいなぁと思ったのは、自分の気持ちをストレートに可愛く伝えてくれるところかな。やっぱり男も自信ないからさ、俺のこと好きってわかると素直に嬉しいよ」

その言葉を聞いて、夏帆はハッとした。

淳太の言う通り、悠乃は臆することなく自分の気持ちを伝えることができる。決して相手を追い詰めず、寧ろ良い気分にさせながら…。

いくらでもチャンスはあったのに、色々と言い訳をつけては、淳太への気持ちをずっとしまい込んでいた夏帆とは大違いだった。


淳太と話し、改めて悠乃が男ウケする理由を知った夏帆は思い切ってある行動にでる!?

淳太との電話を切ったあと、夏帆はそのままベッドに倒れこみ、淳太の言葉を反芻していた。

「悠乃は自分の気持ちの伝え方が上手、か…」

確かに悠乃は、自分の意見をどういうふうに伝えれば相手に聞き入れてもらえるかを熟知している。

ある時は小首を傾げて上目遣いで、ある時は瞳を潤ませて子犬のように、ある時は子供のような天真爛漫さで…

彼女のワガママに踊らされていた男たちを冷ややかな目で見ていたが、自分も大概、悠乃の“お願い事”は聞き入れてきた。夏帆も例に漏れず、悠乃の術中にハマっている1人だったのかもしれない。



夏帆は、おもむろにLINEを祐平にメッセージを送った。

『祐平さん。今日はありがとうございました♡本当は2人でデートだと思ってたから残念でした。あまりお話しできなかったけど、もっと祐平さんのことが知りたくて…ダメですか?』

祐平とは初デートだと思ったら突然パーティーに連れて行かれ、非常識な対応をされたが“もしも私が悠乃だったら”をテーマに、祐平へのメッセージを作成した。

思いのほかすんなりと文章を書くことができて、自分でも笑ってしまった。

もしかしたら、悠乃はスタンプも送るかも…なんて思いつつも、適当な物が見つからなかったのでとりあえず送信ボタンを押した。

その数分後、すぐに祐平からレスが返ってくる。

『今日はありがとう。夏帆ちゃんがいてくれたおかげでパーティー盛り上がったよ。じゃあ。次は2人で。また連絡するね』

彼が本当にどういうつもりで夏帆を誘ったのかはさておき、どうやら2人で会う気が全くないわけではないらしい。

夏帆はつい笑みがこぼれた。ちょっと癪だが、今後は心の中の悠乃”にアドバイスをもらいながら異性に接していこうと思った。

ー色んな人とデートしながら練習していこ!

まだ何も始まっていないのに、夏帆はなぜかワクワクするような気持ちになり眠りについたのだった。



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悠乃を見習って、自分の思いを可愛らしく伝えた夏帆。次回、やっと祐平と2人きりのデートだったが…?