ようやく付き合えた彼から、別れを切り出されてしまった女たち。

「私は別れたくないのに、どうして…?」

彼氏に夢中になる女のなかには、自らの行動で関係を壊してしまう“恋愛クラッシャー”が存在する。

では彼女たちの何が原因で、この恋はクラッシュしてしまったのだろうか?

▶前回:デートの店選びがイマイチな年下彼氏。見かねた34歳女は、スマホの画面に“あるモノ”を表示させ…



今回の悩める女子:杉田真子(30歳・アパレル関連会社勤務)


「ポヨーン」という気の抜けたLINEの通知音で目が覚めると、まだ朝の6時前だった。

鳴ったのは、私の隣で眠っている賢人のスマホ。

画面が表向きになったまま、無防備に枕元に置いてある。そのせいで、朝から見たくもないものが視界に飛び込んできた。

『おはよう!今日、会えるの嬉しいなあ』

そこには、見知らぬ女からのメッセージが表示されていたのだった。

こんな単純なミスを犯す彼とは、付き合い始めて半年。出会いは、表参道にある有名な美容室でのこと。

「今度、サロンモデルをお願いできませんか?」

施術後、賢人からそう声を掛けられてLINEを交換したのだ。彼はメディアにもたびたび出ている人気美容師で、悪い気はしなかった。

それからは定期的に連絡を取り合い、何度かカットモデルや撮影にも協力した。こうしてすっかり打ち解けた私たちは、いつしか男女の関係になったのである。

― そういえば今日は、サロンモデルの撮影があるって言ってた。

こんなふうにモデルを探したり、定期的に知らない女とLINEするのも仕事のうちだとわかってはいる。

でも、賢人からのモデハンをキッカケに付き合いだした私にとっては、彼女たちの存在を必要以上に警戒してしまうのだ。

モヤモヤを募らせていた私は、目覚めたばかりの彼に向かって、思わずこう言ってしまった。


知らない女からのLINEを見てしまった真子は、思わず…

「おはよう、真子。…もう起きてたんだ?」

「うん。賢人のスマホが鳴って、目が覚めちゃったわ」

あからさまに嫌な言い方すぎたかもしれない。慌ててスマホを手に取る賢人は、内容を見られたことに気づいたのだろう。

「あぁ、ごめん!今日、撮影する子からだった」

「ふーん、そうなんだ。その子もサロンのお客さんなの?」

ベッドから出て身支度を整える彼を、冷たく睨みつける。すると、思いもよらない答えが返ってきた。

「SNSにダイレクトメッセージをくれたんだよ。サロンモデルやりたいってさ」

「えっ!?そんなことってあるんだ…」

どうやら、こういう売り込みはよくあることらしい。

そもそもサロンモデルをするような女は、見た目も華やかで、よくモテるから男慣れしている。

そんな人の髪をカットしたり、顔を近づけてメイクしたりする彼の姿を想像すると、嫉妬してしまうのは当然のことだろう。

今回だって、SNSを通して彼に接近してきたその女に、もうすでに嫌な気持ちを抱いている。

不安にならないよう、賢人は隠し事もせずいろいろ話してくれるけれど。ムカつくのはしょうがないと思う。

「そうだ!仕事のあと、そのモデルの子とちょっと会ってくるよ。スマホ変えたいみたいなんだけど、バックアップの取り方がわからないんだって」

「…ハァ!?そんなの絶対にウソ。賢人と2人で会いたいからでしょ?ていうか、バックアップのことなんて別の人に聞けばいいじゃない!」

言い終えてから、あまりの剣幕に彼をフリーズさせてしまったことに気づいた。

とっさに女の勘が働いたのだ。その子は、賢人のことを狙っているはずだと。

「ごめん…。真子が嫌なら断るよ」

― あぁ、またやっちゃった。

こんなふうに怒ってしまうのは、これで3度目なのだ。



仕事だから、仕方ない部分もある。そう何度も自分に言い聞かせるが、ほかの女とやり取りする彼にモヤモヤしてしまう。

そこで私は、友人に泣きついたのだった。

「自分がこんなに嫉妬するタイプだったなんて…。本当に恥ずかしい。こんなに弱気だと、いつか本当にほかの女に取られちゃうよ」

「まあまあ。綺麗なモデルさんとかが周りにたくさんいる中で、真子を選んだんだからさ。自信持ちなよ」

そう言われると、少し気持ちが軽くなる。

― 私は彼女なんだから、どっしり構えていればいいんだ。

それからしばらくは、これまでのヒステリックな態度を反省し、心穏やかに過ごすことができた。すると、彼女としての余裕を見せるチャンスがやってきたのだ。

「…あのさ。明日、朝から撮影があるんだ。今回は、以前からサロンに通ってくれてるお客さんなんだけどね」

「うん、大丈夫だよ〜。いつも朝早くから遅くまで、仕事お疲れさま♡」

申し訳なさそうに切り出してきた彼は、いつもとは違う私の反応に拍子抜けしていた。

― これまで賢人にも気を使わせていたんだなあ。もう、口うるさく言うのはやめようかな。

だが、これをきっかけに仕事の話をされることがパタリとなくなった。何かが吹っ切れたかのように、楽しそうにしていることも増えたのだ。

それから2ヶ月ほど。何も報告してくれなくなった彼のことを、ひどく疑っている自分がいる。

― 私が何も言わなくなったのをいいことに、隠し事でもしてるんじゃないの!?

こんなふうに考えてしまうことが増えた、ある日。

自宅デートの最中にもかかわらず、イライラを抑えきれなかった私は、賢人から少し離れたソファーに腰掛けていた。

せっかくのデートなのに、空気は最悪。2人の間に沈黙が続く。

そしてしばらく黙っていた彼がやっと口を開いたかと思ったら、こう言われてしまったのだ。

「ねえ、真子。ごめん、別れて欲しいんだ」

― 嘘でしょ!?私が大人しくしている間に、ほかの女に目移りしてたってこと?

それなら私は、賢人にどう接すればよかったのだろうか。


モヤモヤする真子に対し、賢人が思っていたこととは

瀬田賢人(30歳・美容師)が考えていたこと


真子に出会ったのは、6ヶ月ほど前。予約客が途切れたおかげで、久々に落ち着いて休憩が取れそうな、ある平日のことだった。

ゆっくりランチを食べ終え、コーヒーを飲んで一息つく。すると受付から声が掛かり、新規客の担当を任されたのだ。

せっかくのんびりしていたのに…と不満に思いつつ、店へ戻る。するとそこに立っていた真子を見た瞬間、ハッと息をのんだ。

― うわっ。この人にモデルをお願いしたら、間違いなく映える!

そう直感した僕は、帰り際に彼女のLINEを教えてもらうことに成功した。そして撮影のため、何度かメッセージをやり取りするようになった。

撮影当日。彼女はガチガチに緊張していた。けれど撮影が進むにつれて表情も明るくなり、魅力的な子だなと思うようになったのだ。

こうして撮影が終わってからも僕のほうから連絡を取り続け、距離が縮まるとすぐに交際が始まったのである。

だけど仕事柄、複数の女性と連絡を取ることは避けられない。これまでにも「女の子の知り合いが多すぎて嫌」という理由でフラれることがあったから、心配していた。

こんなとき、嫌な予感は的中してしまう。

真子も同様に、付き合い始めて半年ほど経った頃から嫌悪感をあらわにするようになったのだ。

“SNSにダイレクトメッセージを送ってきた女性”の話をしたときには、火が付いたようにまくし立ててきた彼女。さすがに僕も驚いてしまった。

― でも仕事と関係ないことで、会う約束をしたのはまずかったよな。

そう思い「お客さんとの距離が近くなりすぎないようにしよう」と心に決めたのだ。同時に、真子に心配をかけさせないようにしよう、とも。



ところが、しばらくすると真子の考え方も少し変わってきたようだった。

「…あのさ。明日、朝から撮影があるんだ。今回は、以前からサロンに通ってくれてるお客さんなんだけどね」

「うん、大丈夫だよ〜。いつも朝早くから遅くまで、仕事お疲れさま♡」

僕が遠慮がちにこう言うと、なぜか怒ることもなくねぎらってくれたのだ。そんな彼女の反応に、仕事のことを理解してくれたのだろうと安心しきっていた。

…しかし。どうやらそれは、僕の勘違いだったようだ。

ある日のデート中、いきなり不機嫌になった真子。ムスッとしていて、一言もしゃべろうとしない。

おそらく仕事のことを彼女に報告しなくなったことで、モヤモヤしているんだろう。

正直に言うと、いつまでも自分のことを信じてくれない真子にはガッカリした。過去に繰り返されてきた、女性関係の面倒なやり取りがよみがえってきてしんどい。

言ってもこれは、仕事上欠かせない付き合いでもあるわけで…。そこを理解してくれない限り、関係を続けることは難しいだろう。

そこで僕は、こう言ったのだった。

「ねえ、真子。ごめん、別れて欲しいんだ」


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彼のことを想いすぎた女。