明治。青山学院。立教。中央。法政。そして、学習院。

通称、「GMARCH(ジーマーチ)」。

学生の上位15%しか入ることのできない難関校であるはずが、国立や早慶の影に隠れて”微妙”な評価をされてしまいがちだ。

特に女性は、就活では”並”、婚活では”高学歴”とされ、その振れ幅に悩まされることも…。

そんなGMARCHな女たちの、微妙な立ち位置。

等身大の葛藤に、あなたもきっと共感するはず。



File1. 真優、明治大学。


― さすが商社マン!みんなカッコいいしオシャレ〜!

外苑前駅の近くで開催されている合コンで、真優のテンションは最高潮に上がっていた。

女性陣は、真優がバイトしているカフェの女子たち。真優以外はフェリスや大妻などの女子大の学生だ。

男性陣は、総合商社の新入社員。真優の明治大学の先輩の同期たちで、先輩以外はほとんどが東大京大、早慶の出身者。

明治大学から5大商社に採用されるのは、早慶以上に比べればやはり狭き門ということもあり、こんなチャンスは頻繁にあることではない。

必然的に、真優は気合が入っていた。先週は美容院に行き、昨日はネイルサロンにも行った。お気に入りのスナイデルのワンピースを着て、かなり“盛れている”状態になっている。

― 今日の私、結構いいんじゃない?青学女子って言ってもおかしくないくらい華やかになってるはず!

そう心の中で思いながら、真優は斜め向かいに座っている一橋卒の男性をチラリと横目で見た。

― この人とはけっこう話が盛り上がったし…。LINE交換できたらいいなぁ。

しかしそんな淡い期待は、完全に打ち砕かれる。

いよいよお開きの時間というとき、男性陣から言われた“ある言葉”に大きなショックを受けたのだ。


「またこのセリフ?」明治女子がショックを受けた、ある言葉とは…

明治男子はイイ扱いを受けるのに・・・


男性陣の幹事が、真優をはじめ女子たちに言い放った、‟ある言葉”。

それは…。

「社会人男子6,000円、女子2,000円でお願いしまーす!あ、明治の女子は3,000円ね」

という衝撃の言葉だった。

しかし、真優は心の中で思う。

― また、この展開か…。

そう。明治女子にとっては、この扱いは決して珍しいものではない。似たような状況を何度も経験してきた真優にとって、このあまりにもショッキングなセリフは“あるある”に過ぎなかったのだ。



明治大学は、第一志望ではなかった。

真優の第一志望は、早稲田大学。しかしその念願は叶わず落ちてしまい、第二志望だった明治に入学したのだ。

とはいえ、明治に対しても決して悪い印象は持っていなかった。

高校の先輩など、もともと真優の周りには明治大学に進学した先輩も多く、キャンパスライフを全力で楽しんでいる彼らの姿は真優に大きな期待を抱かせてくれた。

― 勉強も、サークルも、バイトも、明治大学で全力で楽しむんだから!

入学を目前に、大学生活への希望で胸は膨らむ。

両親には洋服や靴、バッグもたくさん買ってもらい、キラキラした大学生活を夢見て、明治の入学式に臨んだのだ。



しかし、入学前に抱いていたキラキラした思いは、入学後すぐに打ち砕かれることとなる。

というのも、明治男子は素晴らしい扱いを受けるが、一方の明治女子は「ワセ女の劣化版」のように扱われることが多いのだ。

「ワセ女=早稲女」とは、その名の通り早稲田大学に通う女子学生のこと。

すこしネットを検索すれば、ワセ女の特徴が数多く挙げられている。

男勝り。自意識過剰。オシャレに無頓着。女子らしさがない…。

そんなワセ女の特徴が、そのまま明治の女子にも当てはまるというのが世の中の評価だ。

自分があまりに哀しい扱いを受ける立場になってしまったことに、真優は入学してから初めて気がついた。

だから、「女子2,000円、明治女子3,000円」の扱いにはいつも辟易してしまう。

もし自分がワセ女であれば、高いワリカン代を求められても「早稲田に通っている、かわいい女子扱いはされない高学歴バンカラ女子」として、それすらも誇りに思えたかもしれない。

でも今、明治女子として「かわいい女子扱いはされない」という部分だけを押し付けられているように感じる日々は、第一志望が早稲田だったが叶わなかった真優にとっては、かなりこたえる扱いだった。

― 一緒にお食事会に参加した他大の子よりも私の方が断然可愛いのに…!なんで“明治”のレッテルがついているだけで、会費も違うような扱いをされないといけないの!

頭のてっぺんから足の先まで隙なく着飾った真優は、客観的に見ても今日の参加者の中では1、2を争う可愛さのはず。

それにもかかわらず、他の女子より多く会費を払う現実に、心の中ではまったく納得がいっていない。

でも、昔ながらの男臭さのある明治の学風では、大学生という輝かしい時間にモテ期が訪れることは全く期待できそうになかった。

― あぁ…私も「女子会費」扱いされる立場になりたい!

お食事会などで謎に出没する他大の女子。

彼女たちの「浮つき感」を横目に見つつも、どこかで羨ましい気持ちを抱える明治女子の真優は、このまま冴えない時間を過ごしていいのかと、猛烈に悩み始めていたのだった。

そしてその悩みは真優に、ある計画を実行に移させることになる。


女子になるのか、明治女子を極めるのか

明治女子の意地


真優の計画。それは、大学生活の最後の一大イベントである就職活動で“一発逆転”することだった。

― キラキラした大学生活とは無縁だったけど、今に見てなさいよ。可愛いだけの女子と私は違う!立場は就活で絶対逆転してみせるんだから!

MARCHの中で最もレベルが高いと言われ、「脱MARCH、これからは早慶明」を標榜している明治大学。

「男っぽい」

「バンカラ」

「元気がいい」

「庶民」

こういったイメージから早稲田と同じ系統とされることが多い明治だが、近年は入試の難易度や就活フィルターを見ても、MARCHの中では頭一つ抜けて早稲田に近づきつつある。

そんな明治の勢いは、早稲田に入学できなかった明大生のコンプレックスも吹き飛ばしてしまうほどだ。

― そうよ、私はMARCHの中でもトップの明治にいるんだから!明治のプライドで就職活動を勝ち抜いて、今度こそ華やかな立場になってみせる!

“明治女子”というフィルターのせいもあり、華やな大学生活とは無縁。授業やゼミに励み大学の成績が良かった真優は、遊び呆ける他大の女子たちを横目にがむしゃらに就職活動に励み、第一志望のメガバンクへの入社を果たしたのだった。

そして、2年後。

入社後、法人営業部に配属された真優は、部署内でもエースと呼ばれる存在にまで成長していた。

「近藤さんに任せれば、クローズまで何とかしてくれる」

根っから頑張り屋である真優は、そう評価されればされるほど嬉しくてつい頑張ってしまうのだ。

法人営業部といえば、国立早慶の出身者ばかりが配属されることで有名だ。明治出身の女性がエースとなっていることは異例であり、真優の採用過程での評価が高いことに他ならなかった。

そんなある日。

仕事を終え軽く飲んだ真優は、夜の大手町を上機嫌で歩いていた。

気分がいいのは、先ほどの飲みで“滅多に人を褒めない”とされている先輩から、思わぬ言葉をかけられたからだ。



「近藤さんっていつも準備万端だよね。クライアントデータはもちろん、話の展開を先読みして他の提案も用意するとか。普通はそこまで気が回らないから、安心して任せられるよ」

その言葉を何度も心の中で反すうしながら、真優は誇らしい気持ちを胸に夜道を歩く。

ほろ酔いの頬に、夜風があたって気持ちいい。その心地よさをもっと感じようとして顔を上げると、ふとあるものが目に映ったのだ。

それは、おなじみだった思い出の建物。お茶の水にある、明治大学のリバティタワーだった。

―あぁ、懐かしい…。「明治女子」なんて言葉が、何だか遠い昔のような気がするわ。

「明治女子」というラベリングがされていた新卒の頃は、学生時代にひきつづき「真面目そう」「元気」「無難」など評価をされては傷つくことも多かった。

しかし、仕事に没頭する毎日を送るようになると、真優の頭の中はすぐに他のことでいっぱいになっていったのだ。

― どうしたらクライアントの役に立つ提案ができるのかしら?

成果を上げることに邁進していく日々を送るうちに、いつのまにか真優は学歴など全く意識しなくなっていった。

そう、真優は気がついたのだ。

大学時代は、どうしても自分が在籍する大学がアイデンティティになる。しかし、卒業して社会人として誠心誠意仕事に向き合えていれば、大学名などほぼ関係がなくなることに…。

きっと今日真優を褒めてくれた先輩も、国立早慶卒のエリートなのだろう。でも新入社員の頃とは違い、そんなことは全く話題に上らないどころか、誰も興味も持たない。

そして、他大の子たちが「女子扱い」されることへの羨望の気持ちも、社会人になって努力が認められつつある今はすっかり消え去っていた。

学生時代に囚われていた「明治女子」コンプレックス。あの正体は一体何だったのだろうと、我ながら不思議になってしまう。

― 大学は大学、私は私。

大学は自分を構成した要素ではあるが、それ以上でもそれ以下でもない。

いち社会人として着実に成長している真優は、しばらくリバティタワーを眺めると、久しぶりに再会した友人に別れを告げるように背を向けた。

歩みを進めるほどに、リバティタワーは遠くなっていく。

その景色を時折振り返りながら、真優はよくも悪くも囚われていた「明治女子」からの解放感を噛み締めるのだった。


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