ハイスペックといわれる男性は、小さなころから母親に大切に育てられていることが多い。

それゆえ、結婚してから、子離れできていない母親、マザコン夫の本性が露呈することもある。

あなたは、この義母・サチ子に耐えられますか―?

◆これまでのあらすじ

将暉と離婚した春乃。平穏な日々を過ごしていたが、突如将暉の恋人の麻美がLINEの知り合いかも?に現れたことを、将暉に連絡するも…。

▶前回:離婚後、元夫の恋人から突然届いた宅配便。女が驚愕したその中身とは…



Vol.16 突然現れた人は!?


9月中旬の土曜日。

離婚から4ヶ月が経過し、私は、自由気ままなシングルライフを謳歌していた。

朝一のヨガのオンラインクラスに参加し終え、ブランチの支度に取り掛かろうとしていると、インターホンが鳴った。

『ピンポーン、ピンポーン』

宅配便でも届いたのかと思い、モニターを見る。

すると、どこかで見た気がする女性が、画面に映し出された。

「どちら様ですか?」

『山根です』

― えっ、将暉がヨリを戻した元カノの麻美?何でここにいるのよ?

思わぬ来訪者に怯えながらも、なんとか冷静さを保って、声を絞りだす。

「何のご用でしょうか?」

『まあくんと私のことで、大事な話があるの』

彼女は、いきなりケンカ口調だ。

「将暉さんと私は、もう赤の他人です。今さらお話することなんて、何もありません」

『あなたがなくても、私は、あるの。だから、わざわざ来てやったんじゃない。直接話せるまで帰らないわ』

― 何て厄介な女なの…!

将暉に助けを求めて、電話をかけるが、繋がらない。

― もう、肝心な時に、頼りにならないんだから。

将暉を恨めしく思いながら、渋々彼女を家に上げることにした。


突然来訪した元夫の恋人の麻美。彼女がやって来た目的とは…

「こんな狭い家に住んでるなんて、虚しくならない?可哀想〜」

部屋に上がり込むなり、開口一番で、麻美が言い放ってきた。

― あなたに関係ある?1人暮らしなんだから、1ルームで十分よ。

内心ムッとするも、彼女とは同じ土俵に立ちたくないと思い、グッと飲み込む。

「それで、大事な話って、何でしょうか?」

「私とまあくん、結婚するの。だから、もう金輪際まあくんとは関わらないで!」

鬼のような形相が、どこかサチ子と重なる。

そして、彼女は紙袋を差し出してきた。

中には、将暉と住んでいた池尻のマンションに残してしまっていた雑誌や本が入っている。

「わざわざ届けに来てくださったんですね。ありがとうございます」

私は、あえて丁寧にお礼を言った。

すると、聞いてもいないのに、彼女がベラベラと喋り始める。

「まあくんがね、芝浦のタワマン買ってくれたの〜。いいでしょ〜?あなたより私のほうが、ずっとずーっと愛されてるわ」

「……」

「エンゲージリングも、あなたの倍以上の予算だって!どう?羨ましい?」

思いっきりドヤ顔を決めてくる麻美。

その姿を見た私は、彼女が家に来た真の目的は、私に対してマウントを取ることなのだと、ようやく気づいた。



麻美の話に付き合うのは馬鹿馬鹿しいと思ったが、せっかくの機会なので、兼ねてから疑問に思っていたことを、ぶつけてみる。

「将暉さんとは、レスなんですよね?結婚していいんですか?サチ、いや、お姑さんも、相当強烈だと思うんですけど…」

「まあくんのことは、実家の太さで選んだの。私は子どもはいらないし、レスなんて正直どうでもいいわ。それに、サチ子だっていつか死ぬんだから、無視しておけばいいのよ」

麻美は、のうのうとのたまう。

「そういえば、あなた聞いてないの?まあくん、10月1日付で愛知県の豊橋支店に転勤するの。

私は、東京を離れたくないから、週末婚することにしたの」

なんと、豊橋には、麻美ではなくサチ子が帯同するらしい。

将暉は、平日はサチ子と2人で豊橋で暮らし、金曜の夜の新幹線で戻り、週末は東京で、麻美と過ごす生活になるという。

「そ、そうなんですね…」

転勤先に、妻ではなく母親が付いていくなんて…と、私は驚きを隠しきれなかった。

「じゃ、私は、帰るから。くれぐれも今後は、まあくんとは関わらないでよ」

麻美は、それだけ言い捨てると、バタバタと帰って行った。

― あれだけ我の強い女なら、サチ子には負けないわね。でも、サチ子の方は、大丈夫なのかしら…?

急に心配になる私。

余計なお世話と思いながらも、サチ子に、LINEを送ってみることにする。


春乃が送ったLINEに、サチ子からの返答は…!?

『将暉さんが再婚されるって、今麻美さんから聞きました。おめでとうございます』

すると、すぐにサチ子から電話がかかってきた。

「も、もしもし、ご無沙汰してます」

まさか電話がくるとは思わなかったので、戸惑いがちに、応答する。

『春乃さん、麻美に会ったの?非常識で、図々しい女でしょ!?』

「突然家にやって来たんです。それで、ちょっと心配になったもので…。お義母さま、大丈夫ですか?」

『あんな女に、私が、負けるわけないわ!まあくんと豊橋で幸せに暮らすから〜』

どうやら心配は、無用だったようだ。

「お元気そうで安心しました。どうか、ご体調に気をつけて」

『わざわざありがとう。春乃さんもね』

電話を切ると、すぐにサチ子からLINEが送られてきた。

『春乃さんなら、幸せになれるわ』というメッセージに、グッドサインをしているうさぎのスタンプが添えられている。

― 私って、意外とサチ子に、気に入られてたのかな!?

彼女となんとかうまくやろうと努力していたことが、認められた気がして、嬉しくなる。

将暉と結婚していた時は憎らしい姑と思っていたが、その感情は、いつの間にか風化していた。





2週間後、10月上旬の土曜日。

大学時代からの親友の由梨恵と表参道の『Brown Rice by Neal’s Yard Remedies』を、訪れていた。

季節野菜のカレーをいただきながら、私は、近況を報告する。

「まさか麻美が、家まで来るとは思わなかったよ…」

「何ですぐに私を呼んでくれなかったの?どんな人か、見てみたかったのに」

悔しそうにする由梨恵。

「いやいや、妊婦さんを呼びつけるわけにいかないでしょ」

彼女は、妊娠7ヶ月で子どもの性別は、男の子だという。

「サチ子は、今ごろ豊橋で幸せに暮らしてるのかな。私ね、もう既にお腹の中の息子が、可愛くて可愛くて仕方ないの。私にも“サチ子の素質”が、あるのかも!?って、最近思ってたのよ」

「えー!気をつけなよね。将暉みたいに育っちゃうよ」

「思ったんだけど、将暉さんって、嫁目線だとキツイけど、母親目線だと、かなりいい子なんじゃないかなって。もちろん過干渉にはならないように、気をつけるけど」

由梨恵は、苦笑いを浮かべる。

「にしても、将暉は、ひどい夫だったな。とはいえ、一方的に彼が悪いとは、思ってないんだけどね」

「どういうこと?」

「出会ってたった半年で、相手の両親に会う前に、結婚を決めるなんて時期尚早だった。

今思えば、私も30歳を目前に結婚を焦っていたから、見たくない真実に目を瞑っていたところもあるなって」

将暉との生活を、しみじみと振り返る私。

「でも春乃は、一皮剥けて、より逞しくいい女になったよ。再婚とか考えるの?バツイチは、モテるみたいだけど」

「当面いいかなって思ってたけど。幸せそうな由梨恵を見てたら、やっぱり子どもがほしいなって。だから、また婚活するつもり!次こそは、絶対に幸せを掴むんだから!!」

力強く言いながら、私は、まだ見ぬ運命の人が、きっとどこかにいるはずだと、期待に胸を膨らませた。

Fin.


▶前回:離婚後、元夫の恋人から突然届いた宅配便。女が驚愕したその中身とは…

▶1話目はこちら:プロポーズの直後、彼のスマホに1通のLINEが。慌てた男が口にした衝撃の告白

▶Next:5月9日 月曜更新予定
【番外編】3年後3人はそれぞれどうなっている?意外な未来が・・・