ハイスペ男に”選ばれる女”は、一体何が違うのか?

「俺は結婚に向いていないし、結婚しなくても十分幸せだ…」

と、思っていたバツイチ男が“ある女”と再婚した。

彼の結婚の決め手は何だったのか――。

6人の女性の中から、彼に選ばれたのは誰?

◆これまでのあらすじ

2016年にバツイチとなった桜井和真はその後、5年の間に5人の女性と出会い、デートを重ねていた。

2016年の玉城玲奈とは海外旅行をともにして、2017年の行野澪とは交際に発展し、2018年の椎名由起子には逆プロポーズされた…。

しかし2019年の黒木彩とデートを重ねた結果、やはり自分は結婚にも恋愛にも向いてないと思う。

2020年のステイホーム中に石川沙耶と出会うが、和真のもとには元妻から離婚以来の連絡が届いていた。

▶前回:Case5:2020年の石川沙耶(26歳)



Case5(回答編):2020年の桜井和真(33歳)


― この人かもしれない。

Zoom飲み会で出会った石川沙耶とリモートデートを続ける中で、和真はそう思い始めていた。

なにしろ結婚に対する価値観が合う。

「時代の風潮で男女平等とか言われてますけど、男が女性を養って当たり前です。だって一家の大黒柱にならなきゃいけないんですよ?」

「わかります。わかります」

Zoom越しに、沙耶は大きく頷いてくれた。

「女も結局のところ『一生お前のことを食わしていくぞ。守ってやるぞ』って男性に惹かれるんです」

だからリアルデートに誘った。というのも出会って以降、ずっとリモートデートだったから。

しかしリアルデートの日程を決める前に、なんだか深刻そうな様子の彼女からLINEが届いた。

『実際にお会いする前に、お伝えしたいことがあります。言うタイミングを失ってしまって、いまさら言うのかよと嫌な気持ちにさせるかもしれませんが…。私、実は息子を持つシングルマザーなんです』

きっと沙耶は、とても緊張しながらLINEを送ってきたのだろう。

しかし和真は気にならなかった。むしろ沙耶の息子に会ってみたいと、即座に思うほどだったのだ。


和真と沙耶、2人の距離が急接近し…?

息子を含めたデートとなって…


沙耶の息子・虎徹(こてつ)と初めて会ったのは、Zoomを介してだった。彼は絵を描くのが好きだと言う。それは和真も一緒だ。

今はグラフィックデザイナーだが、幼いころの夢は「絵描き」とか「漫画家」だったから。

画面越しの初対面だったが、4歳の虎徹とともに互いの似顔絵を描いて仲良くなることができた。

彼が疲れて寝てしまったあと、あらためて沙耶と2人きりの時間となる。

「今までZoomしてたとき、虎徹くんは何してたんです?」

「ママが好きな人と話すから、静かに遊んでてて言ってました。虎徹は絵を描きだすと無言で集中するから、1人でも平気なんです」

― 好きな人、って。

不意に出た沙耶の言葉に、和真はドキリとしてしまった。それは彼女も同じだったようで、途端に頬が赤くなっていくのが見える。

「あっ!好きな人っていうのは、あの…」

しどろもどろになる沙耶を見て、和真は笑い、そして伝えた。

「俺も沙耶さんのことは、ずっといいなと思ってました。好きです」

こうして2人はZoom飲み会で知り合い、リモートデートを続け、一度もリアルに対面しないまま恋人関係となった。

これぞまさにニューノーマルだ、と和真は思った。



交際スタートした和真と沙耶


付き合い始めてからも、和真と沙耶はなかなか会えなかった。

折しも人々がニューノーマルな時代に慣れ始め、都内の高級マンションの需要が高まっていた。

そのため高級物件専門の不動産仲介会社に勤めている沙耶は多忙となり、リモートデートはできるものの、虎徹を含めてリアルデートする時間が取れなくなっていたのだ。

和真は「それでも画面越しで会えればいい」と考えていた。

実際、2人は毎日のようにZoomをして、場合によっては移動中にLINEのビデオ通話もしたし、現状それで十分に満たされていたから。

そんなある日、彼女からこんなことを聞かれてしまった。

「和真さんの元奥さんって、どんな人だったの?」

それは、いつかは聞かれると予想していた質問だった。



1年前から届いていた、元妻からのLINE


4年前に離婚した佑子とは、全くの音信不通だった。それが1年ほど前に、突然LINEが届いたのだ。

『佑子です。お久しぶり。もしかしてブロックしてるかな?』

和真は、元妻のことをブロックしていなかった。ブロックなんてしなくても、佑子からの連絡は来るはずないと思っていたからだ。

『元気だよ。久しぶり、どうしたの?』

なるべく素っ気なく返信し、社交辞令として軽く近況を報告しあう。

『LINEで会話するんじゃなくて、久々に会って話さない?』

そのときは『今は仕事が忙しくて。落ち着いたら、ぜひ!』と返したが、本心ではなかった。

会いたくなかった。厳密に言えば、面倒だから会いたくなかった。

佑子とは、一度は永遠の愛を誓った相手だ。離婚したとはいえ、心の底から嫌いになったわけでも、憎んでいるわけでもない。

それに「気兼ねなく会って、性別を超えた親友のように話したい」という気持ちがないわけでもない。

― でもいまさら何を話せばいい?どんな気持ちになればいい?

もう関わることもないと思っていた元妻と会うことで、余計な感情が芽生えてしまうことは明白だ。それがポジティブな感情だろうが、ネガティブだろうが、和真は「面倒くさい」と思ってしまった。

『仕事の都合で、スケジュールがなかなか見えなくて』

などと誤魔化しのLINEをして、のらりくらりかわしているうちに年が明け、ステイホームが始まる。これが和真にとっては好都合だった。

『会うのはコロナが落ち着いてからにしようか』

『わかった、そうしよう。和真も体調に気をつけてね』

『ありがとう。佑子も気をつけて』

そうこうしているうちに、和真は沙耶と出会ったのだった。


その後、ひょんなことから沙耶と会う約束をし…

ついに対面のとき


8月に入り、沙耶から『体調を崩した』という連絡が入った。PCR検査はしたが陰性で、ただの風邪だという。

和真は安堵したが、次の瞬間には「何か届けてあげなきゃ」と思った。彼女の家には幼い息子がいる。買い物もままならないだろう。

LINEですぐに欲しいものを尋ねて、それらを買う。さらには差し入れの品まで用意して、沙耶の自宅に送り届けることにした。

思い出すのは、1年前にデートを重ねた彩とのこと。

あのときは和真が体調を崩し、彩が差し入れを買ってきてくれた。が、それをきっかけに互いに失敗を犯し、疎遠となってしまったのだ。

二の舞を演じたくはない。

だから和真は、LINEで教えてもらった沙耶の住所に向かったものの、自宅に入ることはしなかった。

『玄関のドアの前に差し入れを置いたから、どうぞ』

少しの間をおいて、彼女から返信があった。

『ありがとうございます』

いつもと違い、なぜか付き合う前の丁寧語に戻っている。

『お大事に』
『ありがとうございます』

和真は、急に事務的になった沙耶からのLINEが気になった。

しかし数分後には、その違和感が吹っ飛んでしまう。元妻の佑子から『体調が悪くなった』というLINEが届いたのだ。

次の瞬間、和真の足はドラッグストアに向かい、沙耶たちのために買った差し入れと同じものを用意していた。

『今、どこ住んでるの?』

和真がLINEすると、佑子からすぐに返事が来る。

『離婚してから、ずっと変わってない』
『今、たまたま他の人にも体調不良用の差し入れを買ったから、佑子のところにも持っていくよ』
『ありがとう!』

佑子の自宅までタクシーで向かいながら、和真は沙耶のことを「他の人」と表現した自分自身に驚いていた…。



佑子の自宅にも入らず、和真は玄関ドアの前に差し入れを置いて帰った。4年ぶりに会うことはしなかった。

― やっぱり会うのは面倒だし。

2人の女性宅にそれぞれ差し入れを持っていったあと、和真は少し疲れを感じながら帰宅した。

ソファでほっと一息をついたころ、またしても沙耶からLINEが来る。

『今から、少しだけZoomできますか?』

すぐにZoomを立ち上げると、沙耶を招待して顔を合わせた。体調不良とは聞いていたが、彼女は思った以上に元気そうだ。

しかし表情は浮かない。

「どうして家に上がってくれなかったんですか?」

沙耶は怒っていた。体調不良というのはあくまで建前で、本音では「会いたかった」のだという。

「だって私たち、今まで一度も直接会ったことないんですよ?」

「そうだけど、ほら…。体調が悪いなら風邪がうつるかもしれないし」

そう言った瞬間、和真は「しまった!」と思った。完全な失言だ。沙耶の表情はみるみる変わっていき、視線が冷たい。

「和真さん、私のこと好きじゃないですよね? 結婚観とか話して『こいつはちょうどいい女だ』って思っただけですよね?」

和真は慌てて否定し、事情と感情を必死に説明する。でも遅かった。

和真と沙耶はリモートで出会い、リモートデートしながら付き合い、一度もリアルに対面しないまま別れた。


▶前回:自粛期間が明けても「リアルではデートできない」と嘆く26歳女。彼に言い出せなかった、その理由は?

▶1話目はこちら:結婚願望のないハイスペ男が“結婚”を決意。絶対手に入れたかった女とは

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そして和真は5年ぶりに元妻と会うことに…。