近年、東京に住むというこだわりを捨て、地方に移住する人も増えてきている。

もしも、海に近いリゾートエリアに移住したら…。

朝日と共に目覚めて、海岸沿いを犬と一緒に散歩。朝食をとり、こだわりのコーヒーを飲みながら、パソコンを開きリモートで仕事を始める。

夕暮れには、自分で育てた野菜を使って料理。休みの日は、大好きなサーフィンとヨガ。

そんな生活を夢見るのではないだろうか。

今回お話を聞かせていただいた英美さんも、自然豊かな環境に憧れ、葉山に移住した1人だ。

英美さん夫婦が葉山に移住したのは、コロナ禍に入る前の2017年のこと。時代を先取りしたような形だが、葉山に移り住んだ経緯などを過去に遡って聞いてみた。

▶前回:富裕層はそもそも中古マンションを買うの?どんなリノベをするの?



〈DATA〉

名前:英美さん(33歳)
職業:元モデル、レースクイーン➡現在は、日韓MC、翻訳家
出身:東京都港区
住宅:葉山の一軒家(賃貸)約97平米(3LDK+1WIC)
家族:結婚10年目である16歳年上の夫とチワワ
趣味:料理、トレッキング、SUP、ゴルフ


港区女子が地方に移住したワケとは?


英美さんは、港区生まれ港区育ち。生粋の元港区女子だ。

学生時代は、モデルやレースクィーンとして活躍し、誰もが憧れる華やかな生活を送っていた。

大学卒業後、16歳年上の現在のご主人に熱烈にアプローチされ、交際からわずか3ヶ月で婚約、6ヶ月で結婚。

白金高輪のタワマンで新婚生活をスタートさせた。

その後、もう少し緑が多い場所に住みたいと考え、品川区御殿山の低層マンションに引っ越した。しかし、そのころ28歳だった英美さんは、もっと自然豊かな場所で暮らしたいと思うようになる。

「当時、仕事の人間関係で悩んでいて、漠然と『海の近くに住みたい』とつぶやいたことがきっかけです。夫の趣味がサーフィンだったこともあり、私の話に乗ってきて、突然移住に向けて家を探すことになりました」

ただ、葉山に落ち着くまでに、紆余曲折あったそうで…。


移住先を葉山に決めた理由や、移住のメリット・デメリットについて

葉山を選んだ理由


“海に近いエリア”といっても色々あるが、どうして葉山に決めたのだろうか。

「横浜の高校に通学していたこともあり、湘南エリアには馴染みがありました。鎌倉、逗子、由比ガ浜あたりをターゲットにして、移住先探しを始めました」

鎌倉は、駅前が栄えすぎていて東京に住んでいるのと何も変わらない感じがしたそう。また、週末は混雑するので『ナシ』と判断。

逗子は、ヤシの木がずらりと並んでフォトジェニックではあるが、観光客が多く『ナシ』に。

「逗子に行った帰りに、タクシーの運転手さんから『住むなら葉山がいいよ』と言われ、その足で葉山マリーナまで行ったんです。

タクシーを降りて、葉山の街と海を見て『ここだ!』と思いました。私の思い描いていた街そのものだったんです。

静かで、穏やかな雰囲気で。イケてるおじさまがクルージング船から降りてくる姿があって…」

葉山への移住を決めたものの、なかなかよい物件が出てこなかったという。

「昔から住んでいる人は、戸建てに住んでいるので、マンションの数自体が少ない地域なんです。あったとしても、1人暮らし用のコンパクトサイズか築年数が古いものばかりで…」

そんなとき、ネットで葉山エリアに特化した不動産会社の方が書いているブログを見つける。そのブログの内容に魅力を感じた英美さんは、すぐにブログを書いていた人に連絡をして、移住の相談をした。

そして、現在住んでいる一軒家を紹介してもらったのだ。

物件は、とても気に入ったものの、夫婦ともに仕事を持っているため、いざ移住となっても、そう簡単に決断できるものではない。

東京から葉山までは、電車をうまく乗り継いで1時間ちょっととアクセスは決して悪くないが、物理的に距離が離れることにより、これまで恩恵を受けていた東京暮らしの快適さを捨てることも意味する。



悩んでいた英美さんの背中を押したのは、葉山の自然だった。

「物件を紹介してもらった帰りに『ついでに一色海岸が近いので見て帰りますか?』と言われ散歩しに行きました。そのとき、本当に美しい夕景に出会いました。

息を飲む、言葉を失くす、目を奪われる……そんなありきたりな言葉では説明できないくらい美しい景色に衝撃を受けて、交通の便が悪くても、絶対にここに住みたいと思いました」

その後、すぐに物件の申し込みをした英美さん夫婦。葉山への移住を思い立ってからわずか1ヶ月で引っ越したというから、その行動力には頭が下がる。


移住のメリット・デメリット


「何事も勢いですよ! 住んでみればなんとかなります!ブログを通じて知り合った不動産会社の女性も、移住してきた方だったんです。

彼女が、移住者コミュニティーを紹介してくれたり、ご近所のカフェを案内してくれたり、葉山に住む際のテクニックなどを教えてくれたりしたので、思っていた以上にすんなりと馴染むことができました。

テクニックですか?海の近くは、湿気が多いので玄関の下駄箱に『炭』を置くとかそういう感じです!」

地方移住を成功させるポイントは、その地域に強い不動産エージェントを見つけることから始まるのかもしれない。

英美さんの場合は、良いエージェントに巡り合ったことにより、素敵な部屋を見つけることができたのはもちろん、地域のコミュニティーに溶け込む橋渡しをしてくれたこともポイントだ。

それでは、いよいよ本題。

葉山に住んでよかったこと、悪かったことを聞いてみた。まずはメリットから。

「いちばんのメリットは、都内へ出るのに時間がかかる分、本当に行きたい場所、会いたい人としか会わなくなり、人間関係がシンプルになったことでしょうか。

また、暮らしが丁寧になった気がします。早起きをするようになり、SUPや散歩で体を動かすようになりました」



とくに食に対する意識が大きく変わり、畑を有志で借りて野菜づくりも始めたり、味噌も作っているそうだ。

「地場産のおいしい野菜を買いに横須賀まで車を走らせたり、なんてこともしています。昔の自分からは想像もつかない変化です。

いろいろな意味で、自分自身が健康になったこと。これも、移住したことによるメリットかもしれません。

また、美しい自然や環境のことを守りたいと強く感じるようになりました」



葉山の美しい自然を守りたい、葉山のある日本を、世界を、地球を、すべてを守りたい。そんな気持ちが生まれているという。



「葉山のイメージ的に、お金持ちばかりの街、ちょっと高飛車系な街っていうイメージがあったのですが、そんなこともなくごくごく普通の方が多かったのも驚きでした。

住み心地の良さ、自然環境の良さ、そうしたさまざまな面から見て、葉山は移住するのに最適な街だと思います」

では、デメリットは?

「都心と違い、ほどよく田舎のためコミュニティが狭く、あっという間に噂が広まってしまう点は、デメリットと言えるかもしれませんね。

私のこともいつの間にか知られていて、街を歩いていたら『あなた、東京から来たんだって?』ってバンバン話しかけられました」

よく言えば『気さく』、悪く言えば『ベッタリ』だという。でも、英美さんは、コミュニケーションを取ることが好きな性格なので、とくに問題なく暮らしているそうだ。

「あと、気になることといえば、いわゆる“田舎時間”っていうんでしょうか。あまりにのんびりし過ぎていて、ついイライラしてしまうことがあります。

例えば、レストランで食事が出てくるのが遅いとか、修理を頼んでもなかなか来ないとか…。

都心のお店レベルやホスピタリティーを期待してはいけない、と頭ではわかっているのですが…。東京育ちゆえのせっかち気質のせいか、最初は慣れなかったですね」

また、デメリットというほどではないが、ごみの分別が細かくて、最初のうちはかなり戸惑ったそうだ。

空き瓶は色別に分ける。壊れた傘は、傘布を外してから捨てる。空き缶はアルミとスチールを分ける。容器包装プラスチックと、プラスチックごみに仕分けする……。

「でも、こうして徹底しているからこそ、葉山のきれいな自然が保たてれているのだと納得しています。家の中には、種類別にごみ箱を4つ置いて対応しています。今では、ごみの分別が趣味の1つになっています」

葉山に移住して5年。

コロナ禍もあって30代女性がひとりで移住してくることもあり、今では移住仲間が増え快適に暮らしているという英美さん。


いよいよお宅拝見! 海近のおしゃれハウスの全貌は!?

お部屋について


葉山御用邸や神奈川県立近代美術館を擁する葉山町。

「一色海岸」から徒歩3分ほどのところに建つ2階建て(3LDK+1WIC)・約97平米の戸建てにお住まいの英美さんご夫妻。

このエリアにしては決して安くはない家賃だというが、内装がしっかりしていて綺麗なので、満足しているという。



英美さんが最も気に入っているスポットは、日当たりのよいリビング。

「窓の外には葉山の自然が広がっています。都会にいたら味わえない景色を楽しめること。これが我が家の1番の魅力かもしれません」



キッチンも広く快適。ここで、バルコニーで育てた野菜を使ったりして料理をするそう。



バスルームの窓からも緑あふれる景色が臨めてリラックス!



「バルコニーから屋上のテラスに上がることができます。このテラスからチラリと海が見えるんですよ! ちなみにバルコニーにはBBQグリルがあり、友人を呼んでパーティーをすることもあります」



「また、葉山在住を決意するきっかけになった『一色海岸』まで徒歩3分なので、庭状態なのも魅力です。愛犬を連れて散歩に行ったり、天気の良い日に夕日を見に行ったり。好きなときに好きな場所できれいな景色を見ることができる今の環境は、本当に素晴らしいと思います」


葉山での暮らし


英美さん1日のルーティンを聞いてみた。

「朝起きて、ごみの分別や掃除といった家事をし、午前中は、翻訳の仕事を。午後は、近所のカフェや買い物に出掛けたり、トレッキングをしたり、葉山のゴルフスクールに通ったり。夏場はSUPを楽しむこともあります。

葉山は海も山もある場所なので、ここに移住してからトレイルランも始めました。本当に体が健康になっていく気がします。



ご主人は、リモートワーク中心なので、2人でのんびりと家で過ごすことも多い。



トレッキングでよく足を運ぶのは、一色海岸の北側にある『はやま三ヶ岡山緑地』

「山頂からの景色がとてもきれいで気に入っています。展望デッキからは富士山や江の島が一望できるんですよ!」



午後、涼しくなったら犬とともに一色海岸へ。

「美しい景色を見ながらの散歩は、心が洗われるひとときです。その後は、家に戻って食事作りをして夕飯。たまに友人と近所に食事に行くこともあります」

お気に入りの店は、葉山の厳選食材がいただけるレストランを併設するホテル『SCAPES THE SUITE』や、アパレルとカフェが併設されている『SUNSHINE+CLOUD』。

横須賀の名物隠れ家イタリアン『Loriga 三浦半島食蔵』も気に入っているという。

英美さんは以前、移住したことをテレビ番組で紹介されたこともあり、移住の相談を受けることも。

「田舎に行ったから暇になった、なんてことはまったくなく、逆に無駄な時間なんて無いくらい充実した暮らしを送っています」

葉山での暮らしが充実する一方、東京での「ON」の時間は、よりミニマムに、不要なものをそぎ落としたものになっているという。



「東京に出る日は、午前中にMCのお仕事や打ち合わせを行い、都内のパーソナルジムへ。ランチタイムには友人とご飯をしたり、こちらでしか買えないものを見に行ったり。

都心に出ること自体が減っているので、出かけるとなったら、その1日に都内での予定をまとめることが多くなりました。

葉山に行く前までは、夜遅くまで飲んで遊んで暮らしていたのがウソのよう。今は仕事をしていても、はやく葉山に帰りたいなぁ、なんて思ってしまうこともあります。

夫が出勤する際は、車で都内に向かっています。三浦半島は高速道路が通っているので、電車は不便でも車のアクセスは良いんです。

ほどよく田舎でほどよく都会。そんな葉山だからこそ、違和感なく、私たちらしい暮らしが続けていけるのかもしれません」

ところでこの先、別の場所への移住は考えているのだろうか。

「日本国内であれば、このまま葉山に住み続けたいと思ってます。

ただ、海外移住には興味があります。とはいえ、具体的に考えているわけではありません。また、夫は宮崎県を気に入っていて、たまに物件を見ているみたいです。

仕事のこと、親のこと、さまざまな要素でもしかしたら引っ越すことを考える日が来るかもしれませんが、今はまだ葉山の魅力を堪能していきたいと思います」



お話を伺いながら感じた英美さんの移住が成功した理由は、

①あれこれ考えずに勢いで移住したこと
②良い不動産エージェントに巡り合ったこと
③葉山を愛していること

この3点にあるように感じた。

もちろん、移住には、メリットもデメリットもある。

でも、デメリットも楽しんでしまうポジティブな性格を持ち合わせていることが、何よりも大切なのだと、英美さんに教えてもらった気がする。


▶前回:富裕層はそもそも中古マンションを買うの?どんなリノベをするの?


Text/和栗恵