夏も終わりに近づいてきたけど、週末は美味しい店でキンと冷えたお酒が飲みたくなる。都内の東側に位置する、上野や浅草、立石や赤羽には美味しい老舗や名酒場がたくさんあり、週末に足を運ぶにはぴったりのエリア。

東京の粋な店を再発見に出かけよう。今回は上野のオススメ店15軒をご紹介!


ビールとともに、老舗の肉焼き技術を堪能『江知勝』

湯島

宵の口から湯島の老舗で、冷えたビールとともに絶品すき焼。これ以上の幸せがあるだろうか。

湯島の天神様のすぐそばにある老舗すき焼き店『江知勝』。明治4年(1871年)の創業以来、脈々と受け継がれてきた肉焼きの技ゆえに、女将さんに一任できる店である。

まず、割り下を適量に注いだら、鍋半分に野菜や豆腐を並べる。割り下が沸騰し始めたらお肉を2枚広げて投入。この時、白滝の凝固剤に使われている石灰が肉を硬くするのを防ぐため、肉と白滝を遠ざけておく。「お肉が少しまだらにピンク色になったかな、くらいで裏返します。裏返したらすぐに召し上がってください」と、頃合いに声をかけてくれる。

このタイミングで肉を引き上げ、溶き卵につけて食べると、さすがの一言。フワッとほぐれ、新鮮な肉の味が口いっぱいに。幸せを約束してくれる店だ。


明治時代から続く珠玉の老舗すき焼『いし橋』

末広町

こちらも負けず劣らずの老舗店。肉屋として明治5年に創業し、すき焼きの提供は、同12年から。以来、愛されてきた老舗の美味はミシュランからも評価され、星を獲得している。

美味しさの理由はいくつもある。使用される黒毛和牛はもちろんA5だが、中でも飛び抜けて美味しいことから「トビ」と呼ばれるものであること。その脂は融点が低く、口に含むとゆるりとトロけ、コクある肉の味がグッと広がる。

その肉を受け止める割り下は、一子相伝のレシピで作られていること。上品な甘さで、肉に程よく絡み、肉の美味しさを引き立ててくれるのだ。さらにそれをくぐらせる溶き卵は、肉に負けないようにと2Lサイズ。そして、仲居さんが食べ手のスピードに合わせ、肉を一枚ずつ丁寧に焼いて供してくれるのだ。これで美味しくないわけがない。

肉鍋の王者は、やはりすき焼きだと実感させられる至極の味。ぜひ一度、食してみてほしい。


創業110年!とんかつ発祥の店『ぽん多本家』

御徒町

こちらも上野エリアでははずせない名店。創業明治38年の『ぽん多 本家』は、とんかつ発祥の店と呼ばれる老舗中の老舗。

宮内庁大膳寮で西洋料理を担当していた創業者の島田信二郎氏が、ドイツのウインナーシュニッツェル(子牛のカツレツ)をヒントに、日本人の味覚に合うポークカツレツを考案し、現在の「とんかつ」の原型を作った。

老舗洋食屋らしく「カツレツ」と呼ばれる、この店の特徴は、低温からじっくり時間をかけて揚げることでできる、上品な薄いきつね色と肉の断面の美しいピンク色。

先代から代替わりしても、肉を切り分けるのはずっと同じ番頭さんが担当している。確かな目利きで最良の肉質のロースを選び、熟練の技で掃除を行い、脂をおとした、中心部のその芯の赤身部分のみを使用。自家製ラードで低温から10分以上の時間をかけてじっくりと丁寧に揚げる。

東京一という呼び声が高いこの名品、ぜひ上野に訪れたならご賞味あれ。


温度の異なる鍋で揚げ、肉の旨みを閉じ込める『すぎ田』

蔵前

現在は二代目が腕をふるう蔵前の名店。温度の異なる鍋で丁寧に揚げるとんかつは絶品。中温で旨味を閉じ込め、低温で火を通す。最後に再び中温で油ぎれをよくする。

2015年ミシュランのビブグルマンに選ばれ、外国人客向けに英語メニューも置くようになった。アットホームな接客も人気の秘訣だろう。

土日は行列になるが、回転も速いのでご安心を。


鮨、カニ、焼き貝!海鮮自慢の4店は次へ

道理に適った江戸前の仕事で昔ながらの鮨を『一心』

湯島

守り続けられた江戸前の技が、ここにはある。

宮崎出身の親方・渡部佳文氏は16歳で鮨職人を志し上京。柳橋『美家古寿司』4代目、故・加藤博彰氏の下、外弟子として修業に励んだ、この道30年以上のベテランだ。

シャリは赤酢と塩のみで甘さを引き出すなど、正統派の江戸前を貫く仕事に抜かりはなし。酢じめのバランスが見事な小肌に、継ぎ足しでコクをプラスしたツメが引き立つ香ばしい穴子など、江戸前ならではの仕事には絶対の自信を持つ。

この土地の昔ながらの江戸っ子にも贔屓にされる下町人情が漂う一軒。


海の滋養たっぷりの貝と純米酒で一献『焼貝 うぐいす』

鶯谷

日本にはこんなにたくさんの貝があり、多くの食べ方があったのかと再発見できる。間違いのないおいしさの炭火焼きや貝のなめろうに始まり、斬新な発想のクリームチーズとのミルフィーユなど、メニューもアイデアいっぱい。

お酒は小さな蔵の純米酒がメイン。店主の延田然圭さんやスタッフが、福島の曙酒造を訪れて仕込んだオリジナルもある。旨みたっぷりの貝と米の旨みが生きた純米酒の組み合わせは、日本人でよかったという喜びの源だ。


夏でも食べたい絶品蟹バター鍋『牧野』

稲荷町

かつては、上野から浅草へ向かう人々が行き交うメインストリートだったというかっぱ橋本通り。延長線上に東京スカイツリーを望むこの商店街で、今も昔も変わらず食道楽の胃袋をわし掴みにしているのが『牧野』である。

店外に下げられた提灯からもわかるように、ここはふぐ料理の専門店だ。下関から仕入れる活とらふぐの身を網上で焼いて食す“焼きふぐ”や、特製の橙酢がふぐの風味を引き立てる“ちり鍋”も最高に美味だが、ここ数年、ふぐに迫る人気を見せているのが“かに大根鍋”。もともとは豚肉を入れ、まかないとして食べていたという。

「最近は多いときで10パイくらいは出るかしら。ふぐの店なのに蟹屋と化してるわ(笑)」と女将。味噌バタースープに鷹の爪を加え、生の毛蟹と大根を入れたシンプルな鍋ながら、この世のものとは思えないほどの美味しさ。

「皆さん、秘伝の味噌っておっしゃるけど、これは蟹の出汁のおかげなの」〆の雑炊まで堪能し帰路につけば、“幸腹感”で満たされること必至だ。


湯島の名店ここにあり『くろぎ』

大門

今、巷を賑わせている湯島の名店『くろぎ』。旬の素材を吟味し、入荷するものは日々変化する。その味を最大限に生かすために、手を加え過ぎないよう調理することが“黒木の料理”だと黒木純氏は考える。

「たとえば調味料は、美味しさを感じる限界まで抑えます。頻繁に訪れていただいているお客様にはこの素材と向き合うスタンスを気に入ってもらえているのだと思っています」。


夜の献立は、基本的に“おまかせコース”の1種類のみ。先付から始まり、お椀や八寸、揚げ物、お造りなどが、目と舌を喜ばせる。また、少人数相手だからこそできる、行き届いた接客も嬉しい。

事前のリクエストはもちろん、当日その場ででも、味付けから食材までできる限りの対応をしてくれる。その懐の深さこそ、日夜旨いものを探し求める粋な食客が、“贅の限り”と称賛を贈る所以なのだ。


牛、鶏、玉子、素材と製法に愛を感じる3品は次へ

一度は食べたい柔肌玉子サンド『レストラン 香味屋』

入谷

どこにでもあるが、どこにもない。それが『香味屋』の「タマゴサンド」である。口を近づければ、バターの甘い香りが鼻をくすぐって、「ああっ」と、ため息を漏らす。齧りつく。歯は、温かいパンにふわりと包まれ、玉子に出会う。バターと空気をふくんだ玉子が、舌に広がり、とろりと消えていく。黄身の優しい甘みに、うっとりとなる。思わず笑う。

よほど吟味された玉子なのだろう、黄色が濃く、玉子自体の甘みがしっかりとある。もしかすると玉子は、火が入れられ、固められたことを、まだ知らないのかもしれない。そう思わせるほど、優しい食感である。それはシェフが、火加減に気を配り、穏やかに火を入れて、慎重にかき回して生まれた美味しさなのだろう。玉子への限りなき愛が生んだ、姿なのだろう。

ミルクティーを従えながら、ゆっくりと時間をかけて、ほおばりたい。


スナック的内装と極上の料理のアンバランスが面白い『平』

湯島

外から見ると居抜きのスナックのような店構えだが、出てくる料理は超一流。

『東京いい店うまい店』編集長柏原光太郎氏がご贔屓の肉料理店がこちら。

柏原氏いわく「中に入ると奥のグリルに炭が積み上げられ、店主の表情は肉が好きでたまらないという顔。実際、浅草の名店『入きん』で修業された店主の目利きは見事。ここではヒレとかイチボなど赤身の肉をじっくり焼いてもらいます。決して薀蓄は言わないが、出来上がりを食べればいかに旨いかがわかる!」

このギャップ、嬉しいサプライズではないか。


歴史的名店が守り抜く滋味に満ちた逸品『鳥榮』

湯島

創業は明治42年(1909年)。春夏秋冬、鶏鍋ひと筋、の名店がここ。食通の間では言わずと知れた、湯島『鳥榮』だ。

仕舞屋風の一軒家。紺地に白く屋号を染め抜いた小振りな暖簾をくぐれば、そこは江戸の風情が静かに息づく別世界。赤々と炭火がおこる長火鉢に鉄鍋をのせ、鶏ガラでとる澄んだスープとみりんが注がれたら、いよいよ鍋の始まりである。といっても、最初に運ばれてくるのは鶏肉と内臓類、焼豆腐に千住葱と至ってシンプル。この気概が『鳥榮』の魅力であり凄味でもある。

正肉をひとしきり堪能した後でスープをひと口。これが、絶品。クリアにしてシャープな味わいは、まさに五臓六腑にしみ渡るおいしさ。そしてこの後、登場するつくねがクライマックス。丹念に包丁で叩けばこその、ねっとりと潤いを含んだ光沢が、素材の良さと仕事の確かさを物語る。ふんわりとデリケートな食感は後を引くこと請け合いだ。


2. クライマックスはつくね。沸いたスープに、たたきを投入する。やや小さめに丸めるのがコツ。早く火が入り、スープを煮詰め過ぎない。適度な弾力があれば食べ頃だ


3. 〆はさらりと汁かけご飯。最後はお櫃に入ったご飯とお新香が登場。スープのみをかけて味わうのがスタンダードだが、つくねを残しておいてのせるのも、また一興"


安くて旨い!最後は立ち飲み&居酒屋3選

酒場の激戦区上野で巻き起こるたきおか旋風『立ち呑み たきおか』

上野

2006年オープンと比較的新しいが、酒場がひしめく群雄割拠の上野にあって、今やなくてはならない存在に。その人気の秘密は他でもない、類を見ない価格設定にある。酒はビール大瓶410円をはじめ、レモンハイやハイボールが310円で楽しめる。

つまみも負けてはいない。ポテトサラダや串カツが160円、まぐろ刺しも220円とべらぼうに安いのだ。もちろん、そんな店を呑んべえが放っておくはずもなく、店は夜毎満員状態に。入れなければ近くにある2号店、3号店へどうぞ。


※この店舗は、移転、店名を変更しています。詳しくは、下記店舗情報よりご確認ください。
この記事は、移転前の情報です。


吉池直営だから安くて旨い!新潟の地酒と豊富な魚料理『味の笛 御徒町店』

上野

経営母体は、御徒町にある海産物を中心に扱う食料店吉池。それだけに約50種と豊富に揃うメニューの中でも、魚介類を使った料理には定評がある。しかも、そのほとんどを厨房で手作りするこだわりようで、加工品なども北海道の自社工場で作られたもの。それらのメニューが200円〜300円台で楽しめるというのだから呑んべえには堪らない。

さらに極め付けは、新潟の地酒が揃うこと。季節のオススメとして常時約10種類以上をラインアップしている。


主役は上質な日本酒、お燗番が待つ酒亭『壺中』

湯島

『壺中』を切り盛りするのは、番頭の神田實祐さんとお燗番の伊藤理絵さん。仕入れた酒は常温で保存。「開栓して、呑み頃を見計らってからお出ししています」と伊藤さん。日本酒は要冷蔵、開栓後は、すぐ飲み切るべしという“常識”は、かつての吟醸酒全盛時代に定着したもの。生酛を始め、しっかりとした造りの純米酒は、空気に触れることで秘めた素質が徐々に花開くのだ。

「あくまでも日本酒が主役ですから」と、神田さんが用意する料理はいわゆる“酒のアテ”。吟味された品々は、左党のツボにぴたりとはまる。京都の建築家が手がけた、簡素で気品溢れる空間。作家ものの酒器。骨董の器。店の隅々に「酒を通して和の文化に触れて欲しい」という神田さんの美意識が宿る。日本酒の粋、一度ご賞味あれ。