あるベンチャー企業に、MARCH出身の5人の男たちがいた。彼らは、こう呼ばれている。

―無難戦隊MARCHマン―

「平均より良くても、所詮上には上がいる。俺らは、どんな理不尽な仕打ちにも、無心で打ち返すだけだ。」

それが5人の口癖だ。

「無難」と言われながらも、必死に頑張るMARCHマン。しかし、そこに東大卒の嫌味な上司が舞い降りた。

ベンチャー企業、「キャリアナビ」の第一営業部に所属する5人の MARCHマン。東大出身の嫌味な上司・東出にばっさり斬られた“無難の極み” 明治大卒の福田蒼汰。優秀ながらも心の闇を抱える青山学院大学卒の上田瑛士。今回登場するのは…?



立教卒・長野茂雄。普通に見える男の、限りなく高いプライド


「実力より高いステージで戦わなければ、一生凡人のままだ」

瑛士がそう言われているのを、立教出身の長野茂雄は複雑な気分で見ていた。

―凡人、ねぇ…。

新しく来た上司・東出は「キャリアナビ」の第一営業部の5人にきつい言葉を日々浴びせている。

前の上司の早川は、体育会系で多少面倒なところはあったが、基本的には鷹揚な人物で、皆から慕われていた。

しかし、東出はまるっきりタイプが違う。全く隙を見せないし、基本的には正論しか言わない。

第一営業部のMARCHマンたちは不満が溜まって爆発寸前だが、茂雄は一歩引いた目で見ていた。

―そんな愚痴言ってるだけじゃいつまで経っても成長しないぞ…。

茂雄は、一見普通に見えるがとてつもなくプライドが高い男だった。


茂雄の「あと一歩」の人生とは?

MARCHの中では立教が断然トップでしょ?


茂雄は埼玉出身で、高校までは公立だった。受験時には私立単願で早慶上智を受けるが惨敗。模試もB判定までいっていたのに、あと一歩のところで及ばなかった。

その中で当時受かっていた立教の社会学部に入学。受験を失敗した悔しさがあったせいか、国際交流のサークルやベンチャー企業のインターンなど、やれることは何でもした。1年間、アメリカに留学していたこともある。

就活の動き出しも誰より早かった。自己分析から始まりES作成、OB訪問。万全の状態で臨んだ就活。メガバンクや損保など金融系の企業を中心に受けたが、最終面接までいっても内定はなかなかもらえなかった。



結局、インターンをしていた「キャリアナビ」に就職した。キャリアナビは当時から急成長を遂げており、ベンチャー企業の中ではトップクラスの人気を誇っていたため、茂雄の自尊心はどうにか保てた。

就職したときから勝手が分かる企業だったので、仕事を覚えるのはスムーズだった。最初は第一営業部の中で一番いい成績だったし、それに応じてインセンティブもついたため、これと言った不満はなかった。

しかし、1年、2年経つと茂雄はどんどん埋没していった。

茂雄の中では、自負があったのだ。

―俺がこの中ではトップだ、と。

MARCHの中でも、立教はトップだ。法政と一緒にするな、MARCHと言えどもレベルが違うんだ、と。

しかしその高いプライドが邪魔をするのか、現在の売上成績は、蒼汰と瑛士に続き3番目だ。蒼汰はコツコツ努力するタイプだし、育ちの良い瑛士はクライアントのウケが抜群にいい。

「おい、長野」

新しい上司の東出に呼ばれた。

「ここ最近、売上落ちてるな」
「いや、それは、今月契約できるはずだったクライアントの方針が変わって…」

そこまで言うと、東出はギロリと茂雄を睨んだ。

「お前は、いつも言い訳ばかりだな」


長野茂雄の隠された真実とは?

ここは俺のいるべきところではない。男に隠された野望とは?


その後も、茂雄は東出に散々叱られた。売上が悪い他に、最近仕事に身が入っていないことも指摘された。

―ここはやっぱり、俺のいるべきところではないな。

茂雄はその説教を右から左に受け流し、東出の背中越しに見える窓の風景をぼんやり眺めた。



実はこれには理由があった。

最近仕事が身に入らないのは、転職活動をしているからだ。「キャリアナビ」に入ったものの、ここは自分のいるべきところではないと悶々としていた。だからこそ、東出のあの言葉は何か感じるものがあった。

「実力より高いステージで戦わなければ、一生凡人のままだ」

俺は実力より高いステージで戦いたい。いつまでもここにいちゃだめだ。はっきりとそう認識した。

―東出部長とも、あと少しの付き合いだろうし。

転職活動で今受けている会社は同じ人材系のベンチャー企業。知名度は劣るが、マネージャーとしてのポジションを与えてくれると言われている。

もう、長野茂雄の気持ちは「キャリアナビ」にはなかった。


「自分の手の及ばない範囲のことを言い訳にする奴は無能だ」


茂雄は、プライドが高い。

ここ最近の売上の落ち方に対して、くどくど言い訳を始めた。

「クライアントの方針が変わって」とか、自分の手の及ばない範囲のことを言い訳にする奴は、大抵無能だ。

その後もこちらの話を聞いていないのか、相槌を打つものの全く身に入っていない様子だ。MARCHの中でも立教はレベルが高いほうだと思っていたが、茂雄にはまるでやる気がない。困ったものだ。

聞くところによると彼は、入社当時は一番優秀だったようだが、売上はずっと下方気味。一度挫折するとやる気をなくしてしまうタイプなのだろう。



東出が取引先から戻ると、社長の小日向がやってきた。

「おい、東出。これどうなってるんだ?」

それは、今月の売上予測の資料だった。着任してもうすぐ1ヶ月。PDCAサイクルを高速化し、売上はばっちり達成する予定だった。

「売上予測が予算に対して89%、前月比でも落ちてるぞ」

その言葉に、東出は耳を疑った。

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完璧な男・東出に痛恨のミス!?