TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月〜金曜7:00〜)。「モニフラZ議会」では、小学校で推奨される“さん付け”について、Z世代の論客が議論しました。

◆全国の小学校で“さん付け”推奨

現在、全国の小学校で児童同士の呼び名を、あだ名ではなく“さん付け”とする動きが広がっています。

アフリカの紛争問題を研究する東大院生の阿部将貴さんは小学生時代、通っていた学校では“さん付け”が義務付けられていたため、“さん付け”が当たり前のような状態でしたが、中学校ではそれがなくなり、突然女子から「阿部くん」と呼ばれ、違和感があったと話します。一方で、女子を“さん付け”で呼び続けなければいけないことも釈然としなかったと振り返ります。

生理への理解を広げる団体「#みんなの生理」共同代表の谷口歩実さんは、特にルールはなかったものの「小学5年生のときに、家庭科の先生が『全員、“さん付け”します』と言って、クラスがざわついたのは覚えている」と回顧。

microverse株式会社 CEOの渋谷啓太さんも特にルールは決められておらず、小学生のときは“くん付け”だったものの、徐々に“さん付け”が一般化。「どのタイミングで“さん”になったのか?」と振り返ります。

一方で、「“くん”とか“さん”っている? とつい思ってしまう。理想はファーストネームで呼び合うのはどうか」とフレンドリーな見解を述べていたのは、キャスターの堀潤。

阿部さんに「将貴!」とファーストネームで話しかけるも、本人は「呼ばれ慣れていない。だったら僕はニックネームで呼んでほしい」と苦笑いを浮かべます。

谷口さんからは「私は“さん”が付くとちょっと距離を感じてしまう」という意見も。渋谷さんは「本人の合意の話なので、そもそもルール化することなのか」と疑問を呈し、「ルール化するにしても、小学生など当事者の意見も踏まえてルール化すべき」と主張します。

◆“さん付け”を校則明記している現場を取材

茨城県にある私立水戸英宏小学校では、2012年の開校以来“さん付け”が校則に。その理由について、野淵教頭は「あだ名が禁止というより、敬称と愛称をうまくTPOに応じて使い分けられるような子どもたちに育ってほしいと願っている」と説明。「“さん付け”にしたらいじめがなくなるということではないが、相手を尊重したり、敬意を払ったりする気持ちが大事であり、それによっていじめの抑止には繋がっていると思う」と語ります。

生徒たちが“さん付け”で呼び合う姿を見た谷口さんは「意外と違和感ないなと思った。慣れの問題なのかなという気もした」とその印象を語ります。

対して、“さん付け”経験者の阿部さんは「“さん付け”でいじめはなくならない。行き過ぎた制度には懸念がある。休み時間も“さん付け”するのはやり過ぎ」と意見し、使い分けを推奨。「親しみを込めて呼び合ったり、距離感を縮めたり、交友関係を深めたりするその努力も無駄にしてしまうことになると思う。そこは分けないといけないと思うが、“さん付け”にすること自体はいい制度」と話します。

さまざまな意見が飛び交うなか、渋谷さんは“さん付け”は「教育方針の問題」と持論を展開。“さん付け”することで、TPOの使い分けを学ぶ、いじめ抑止などさまざまな考えがありますが、渋谷さんは「最初からどう呼び合うか、合意形成からやったほうが将来的なコミュニケーション能力は高まるのではないか」と言い、「それをきちんと外部に打ち出し、“選べる”という選択肢があることのほうが重要」と力説します。

これには谷口さんも「“さん”や“くん”、“ちゃん”がアイデンティティになる人もいると思うので、それが自己表現のひとつとして選択できるといい」と賛同します。

◆さん付けは悪くないが、大切なのは…

“さん付け”に関して、京都教育大学が行った調査では、京都市の市立小学校166校のうち、少なくとも69校で“さん付け”を導入しており、その効果としては「言葉遣いが優しくなる」、「男女を平等に呼ぶことができる」、「授業を公式な場面と位置づけしやすい」という声があるとか。

一方で、文科省の調査結果によると、2020年度の小学校のいじめの件数は全国で42万超と減っておらず、そのうちの約6割が「冷やかし・からかい」となっています。

ここで阿部さんは、いじめにおける“さん付け”の欠点について言及。それは、普段あだ名で呼ばないことにより、あだ名がアンダーグラウンド化すること。付けられたあだ名が嫌がるものだった場合、先生が気付くことができないことがあり得るとし、「授業中は“さん付け”で、それ以外は規制をしない。そういう呼びかけが大事だと思う」と改めて使い分けを提案。

◆企業で“ニックネーム制度”の導入事例も

広島市のウェブコンサルティング会社「フォノグラム」では、2003年から社員同士がニックネームで呼び合う制度を導入。そうすることで社歴や年齢に関係なく遠慮なく意見し、アイデアが出せるそう。

しかも、ニックネームの付け方にもルールがあり、取締役のビフィーさんは「この人のために名前をつけてあげる、それはその人が好きなこと、興味のあることから(ニックネームを)名付けるので、相手を理解することにも繋がる。お互い理解を深めることで安心感が生まれているのかなと思う」と解説します。

これに「う〜ん」と唸っていたのは谷口さん。「会社に行くときに自分のアイデンティティを捨て、労働の場での自分を作るように思えてしまう」と率直な意見を述べ、「会社内にはそこまで親密な関係を求めていない人もいると思うので」と違和感を表します。

渋谷さんは、働く側は会社を選ぶことができ、社風を決める会社側も経営陣を選べることから、「フォノグラム」のようにニックネーム制度を導入すること自体は肯定的。ただ、「これが学校に置き換わったときに、会社はカルチャーとして定義できるが、学校は画一化されることが違和感」とも。学校単位でも都会と地方では生活環境が異なることを挙げ、「管理コストなどもあると思うが、きちんと考えて学校ごとにルールが運用され、クラス単位でもいいような制度のほうがいいのではないか」と意見を述べます。

また、渋谷さんは社会に出て「当事者同士で合意を作りながら話を進めるのが苦手な人が結構多い」と感じたと言い、その背景には“教育”があると指摘。「小学校の頃から『ルールだから、これを守りなさい。なぜなら……』の“なぜなら……”がない。合意形成が上で勝手に決められ、“押しつけ”が今の義務教育のひとつの構造でもあるのでは」と主張します。

総じて、Z議会からの提言として、代表して阿部さんが「互いを尊重できる、一律にしない」と発表。

阿部さんは「学校教育においては、お互いを尊重できる呼び方が大事。制度でがんじがらめにするのは自由などを阻害するので、こうしたベーシックな基準こそ大事」と改めて議論の必要性を訴えます。

渋谷さんは、「一律にしない」というところを強調しつつ「ルール決めをする場がないのも問題。合意形成の場がもっと教育に取り入れられ、みんなでルール決めができる世界になれば」と切望。

谷口さんも「一律にしてしまうと考える隙間がなくなってしまうと思うので、考えた上で行動できる力を育みたいなと思う」と望んでいました。

※この番組の記事一覧を見る <番組概要>番組名:堀潤モーニングFLAG放送日時:毎週月〜金曜 7:00〜8:00 「エムキャス」でも同時配信キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/番組Twitter:@morning_flag