TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月〜金曜7:00〜)。「モニフラZ議会」のコーナーでは、来春予定のデジタル給与解禁を見据え、日本における“キャッシュレス化”を進めるためには何が必要か、Z世代とXY世代の論客が議論しました。

◆キャッシュレス化普及の鍵となるのは“安全性の担保”

来春にも解禁される見通しのデジタル給与。これにより現金支給や銀行振込だけでなく、スマホなどのキャッシュレス決済アプリで給与を受け取ることが可能に。

背景にあるのは、キャッシュレスの普及。政府は2025年までにキャッシュレス化を40%まで引き上げたい考えですが、現状は3割程度。利便性アップが期待される一方、安全性などが課題となっています。

今回はZ世代に加え、XY世代のキャスターの堀潤、さらに株式会社トーチリレー代表取締役の神保拓也さんが議論に参加。まずはデジタル給与の賛否について聞いてみると、インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんと神保さんは賛成で堀のみ反対。

その理由としては、キャッシュレス化の肝となるインフラが“国産”かどうかがとても重要とした上で、「お金のデータはとても大事。給与の支払いは税金、社会保障にも関わってくるので、国産でやってほしい」と訴えます。

では、キャッシュレス化促進はどうするべきか。その手立てとしてZ世代を代表しアフリカの紛争問題を研究する東大院生の阿部将貴さんは「不正利用被害者への補償制度の義務化」を主張します。

過去に阿部さんがアフリカで暮らしていた当時、すでにモバイルマネーでデジタル給与が可能になっていたものの、そこで大きな問題となっていたのが“詐欺”でした。阿部さんは日本でもそうしたことに対する救済制度が議論され尽くしていないことを挙げ、「振り込め詐欺に救済法ができたように、デジタル払いは救済してくれるのか決まっていないので、ぜひ政府に検討してほしい」と訴えます。

神保さんも阿部さんの意見に同調し、「便利を追求したときに安全が犠牲になると広まらない」と言い、「便利と安全の両立」を求めます。不正利用の被害者救済はもちろん、さらに決済事業者が破たんした際の対応も含めた“安全性の担保”がキャッシュレス化普及の鍵とします。

一方、能條さんは、そもそも今回の議論の前提として「(デジタル給与は)全員に強制しようという話ではない」と強調。現状では社会人全員を対象としているのではなく、最初はアルバイトや副業を想定しているとし、「導入して問題があれば改善していけばいい。議論をしていく上で、自分が使うかどうかで判断していたら全然進まない」と意見します。

◆利用者は得をする!? デジタル給与のメリットと課題

デジタル給与のメリットとしては、利用者はポイントなどをお得に受け取れること。また、企業側は振込手数料の負担軽減などがあり、国としてもお金の流れを把握しやすくなり、税金の管理が簡単になるのではないかと言われています。

しかし課題も山積で、まずは利用したくない人が多いこと。「デジタル給与を利用したいか?」という調査では、「利用したい・やや利用したい」と回答した人は、約3割にとどまっています。

また、ITジャーナリストの三上洋氏は「お金の不正流出」、「スマホの紛失や盗難時の対応」、「決済業者破たん時の対応」を挙げていますが、決済業者の破たんに関しては、現状、4〜6営業日以内に上限100万円までは全額補償する仕組みを設ける方向だということです。

これに対し、阿部さんは「(補償額が100万円までであれば)この時点で100万円以上の給料をもらっている人は絶対に使わない。そうしたことを踏まえると根本的に普及させることは困難」と見解を示します。ではどうすればデジタル給与が進むのか。

能條さんは長いスパンで考えられるメリットがないと大事な給料を任せることはできないとしつつ、「それでいいと思う」とも。なぜなら前述の通り、デジタル給与は全員に強制するものではないから。

一方で堀は、導入コストや運用面での懸念点はあるものの「逆に上手くいけば煩雑な給与支払いマネージメントから解放される。自動化されると楽だなとも思う」とデジタル給与の利便性を認めた上で、「ただし二重は一番ダメ、大変だから」とデジタル給与と現金支給や銀行振込を混在させることについては反対します。

◆キャッシュレス化普及に向け、まず行うべきことは?

世界のキャッシュレス決済普及率をみると、韓国は93.6%。アメリカは55.8%ながら、日本はまだ3割程度。その理由について、三上氏は、日本は海外に比べキャッシュレス利用可能施設が少ないこと、そしてその結果、企業や利用者のメリットも少なくなっているのではないかと推察。そうしたなか、11月にはキャッシュレス法が施行。車検登録やパスポートの発給、交通違反金など行政手数料などが、順次キャッシュレスになっていきます。

こうした状況を踏まえ、神保さんは「デジタル給与はすでにキャッシュレス決済を利用している層の背中を、さらに押すという施策としては有効」と言及。なお、政府の調査では、日本にはクレジットカードを保有していない人がまだ約4割もいることに触れ、「まだ押す背中がない国民が相当数いる。そうした人々を対象にしないと普及率80%には到達できない」と指摘。「押す背中がない層にどうアプローチしていくかというのかを考えなければ、普及していかない」と今後の方向性について述べます。

また、キャッシュレス決済に関する調査では、消費者からメリットがよくわからないというコメントが多く、一方で企業・事業者がキャッシュレス決済を導入しない理由として、お客からの要望がないからという意見が多いそうで「順番が重要。先にお客さんが利用する状態を作った上で、企業側はお客さんからの要望で対応していく形で普及させるのが現実的」と神保さん。

この意見に能條さんは「わざわざ伝えるというコストを払ってまでお店に意見するのか。社会運動、何かを変えてほしいという要望を出す文化がない日本でそれはどうなのか」と疑問視。

堀は「国が推奨するなら、もっと大局観のあることを打ち出してほしい」と言い、キャッシュレス化普及の打開策として「デジタルJPYコイン」を提案。「日本も独自の国家として流通しやすくなるようなグローバルなコインを提唱し、そのなかで個々人のお金のやり取りを設計すべき」と主張。さらには「今、キャッシュレス事業者は何社あるのか。しかもルーツが国内外入り混じっているので、整理してほしい」とも。

Z議会を代表し、阿部さんが提言を発表。それは「根本からデジタル決済を考えよう」。

今回の議論を通し「制度設計やそれ以前に、(キャッシュレス化に)興味がある人が少ないと思った」と所感を述べます。特に約4割の国民がクレジットカードを持っていないという現状に衝撃を受けたようで、「日本国としてどういったデジタル決済の仕組みを作っていくのかという国民的な議論がまずないと、議論が散らかってしまう」と案じます。

また、堀の“国産”という意見に、阿部さんは「すごくいい視点」と評するも、何を持って国産とするのか、その定義に戸惑いがある様子。すると、堀からは「簡単にいえばデータの所有権と所有場所」と明言。「要は国外には関与させない、安全保障上の重要な国民データであることを定義づけること」とし、「やはり国内の企業を育てたり、国内のイノベーションをしっかりと促進するような税の投入をしてほしい。今はデータが弱すぎる」と嘆きます。

そして、最後に神保さんは、かねてから温めてきたアイデアとして「保険証にキャッシュレス機能を追加すること」を提案。現状、高齢者世代にスマホを普及させることは困難で、「みんなが持っているツールにその機能を添えるという発想が重要」とし、高齢者の必需品であり、誰もが持っている保険証に注目。例えば、八百屋などで買い物をし、そのお釣りを保険証にチャージすることができ、それを病院などで使えるようにすれば高齢者も使いやすく「一気に広がるのではないか」と話していました。

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