フレッシュな旅人たちが、日本の美術館の魅力・価値を発見していくTOKYO MX(地上波9ch)の美術探索ドキュメンタリー「フランス人がときめいた日本の美術館」(毎週木曜20:00〜)。5月16日(木)の放送では、女優・野村麻純さんが「植田正治写真美術館」を訪れました。

日本の美術館の魅力をまとめた書籍「フランス人がときめいた日本の美術館」。著者で、フランス人の美術史家ソフィー・リチャードさんのメッセージをヒントに、植田正治の写真の魅力を紐解きます。

◆植田正治は“写真する”

植田正治写真美術館は、世界で最も注目された日本人写真家の1人、植田正治の作品を1万2,000点収蔵する美術館です。植田の故郷である鳥取県に、同郷の建築家・高松伸の設計で建てられ、1995年に開館しました。

“植田写真”の特徴は、被写体をオブジェのように配置した、独特の演出写真。写真誕生の地・フランスでも「植田調(Ueda-Cho)」と呼ばれています。


学芸員の北瀬和世さんの案内で展示室へ。壁には「写真するボク」の字が。この“写真する”というユニークな動詞は、「シャッターを切るだけではなく、暗室でプリントを焼いて自分の意図を表現する、全体を指している」と言います。

そんな“写真する”が際立った1枚がこちら。1931年ごろの作品「停留所の見える風景」です。


停留所に立つ人物が、実物よりも長細くプリントされています。これは、画像を投影する印画紙を、あえて傾かせてプリントしたため。さらに、写真に油絵具で色をつける「雑巾がけ」という技法により、黒色を締めるレタッチまで施されています。

写真にまつわる作業全体を通じて、芸術写真を確立していった植田。やがて、世界から「植田調(Ueda-Cho)」と称賛される1枚が生まれます。

◆構図を決めるゲーム

こちらは、世界を魅了した代表作「少女四態」。画面のなかに人物を配置し、4人の少女のポーズや目線を演出しています。


1939年の夏の夕方、浜に地引網を買いに来た少女たち。そこに「写真を撮っちゃる」とやってきたのが植田でした。今回番組では、三男・亨さんの案内で、被写体の1人、佐々木美弥子さんとお会いすることに。

右端に立ち、後ろを向いているのが佐々木さん。これももちろん植田の演出。「私と植田家は親戚ですので、(後ろを向いてと)言いやすかったんでしょう」と笑います。また、写真を見つめながら、母親が手縫いしてくれたという洋服を懐かしむ場面も。

“植田写真”の象徴といえるこの作品は、美術館の建物に活かされることに。大山山麓の広大な大地に並ぶ4つの建物は、写真に写る4人の少女がモチーフになっています。建築家・高松伸のこの設計を、植田はいたく喜んだとか。


◆家族写真に隠された謎

植田は、家族写真にも演出を効かせました。4人の子どもをはさみ、左端に植田、右端に妻・紀枝さんが立つ「パパとママとコドモたち」。紀枝さんの手の開き具合まで、細かに演出されています。

作品の横には、この撮影の様子を記した「カコちゃん」こと長女・和子さんの作文が。

「『サァカコだよ』『手をまっすぐにのばして』と言われて、花を持った手を横へグッとさしだしました。(中略)そのうち私の手がだんだん下へさがってきましたが、パパが『コラコラ』とおっしゃいますので、一しょうけんめいにがまんしていました」

こうして、演出ゆえの謎めいた雰囲気のなかに、ユーモアと優しさが潜む家族写真ができあがったのです。

しかし、三男・亨さんには長年、疑問がありました。

植田の身長は178cm。一方、紀枝さんは160cm。かなりの身長差があるにもかかわらず、「パパとママとコドモたち」では、背丈が同じくらいに見えます。


この家族写真に隠されたトリックを暴くべく、鳥取県境港市にある、植田の生家へ向かいました。

(後編へ続く)

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<番組概要>
番組名:フランス人がときめいた日本の美術館
放送日時:毎週木曜 20:00〜20:56
語り:椎名桔平
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/japanese_museums/