アエロリットVSアドマイヤリードというGI馬2頭の激突で盛り上がった30日のGIIIクイーンステークス(札幌芝1800メートル)は、3歳馬のアエロリットに軍配が上がった。52キロの軽量もあったにせよ、ベテラン牝馬たちを一切寄せつけなかった意表を突く逃亡V。その背景には一体何があったのか。

 まさかと言うべきか、やはりと言うべきか。アエロリットは逃亡した。「(スタートを)五分に出たら行ってもいいよ、とは言っていた」(菊沢調教師)。1800メートル、古馬との対戦、洋芝…初物尽くしの一戦だったが「気を損ねないようにとは思ったが…。馬が勝手に走ってくれた」との鞍上=横山典の言葉通り、馬は最初から最後まで自らの意思で走り切った。その結果がコースレコードタイ(1分45秒7)。ジョッキーの存在感すら薄れてしまうほどの快走劇だった。

 5ハロン通過は58秒3の速めのペース。後続はアエロリットを目標に進み、4角でグッと差が詰まったかに見えたが、ここから勝ち馬はさらに加速した。余力は十分に残っていたのだ。これではライバルが影を踏むことなど到底無理な話だった。

 好走の裏にあるのは、やはり3歳馬の成長力だろう。菊沢調教師は「調教をしっかりとこなし、びっくりするぐらいカイバも食べて、見た目にも数字的にもたくましくなっていた。いい時期にいい成長をした」と予想を超えた“上乗せ”があったことを強調した。実際、この日の馬体重はプラス18キロ。太いどころか、はち切れんばかりに実の詰まったビルドアップした姿だった。

 思えば桜花賞(5着)までは勝ち切れないイメージがあり、GIタイトルを得た前走のNHKマイルCにしても、戦前に文句なしの支持を集めたわけではない。そして今回も1番人気はもう1頭のGI馬アドマイヤリードに譲った。しかし前走といい今回といい、半信半疑な部分をひとつずつクリアしてきたのも揺るぎない事実だ。

 明言こそしなかったものの「3歳なので次はそのあたりかな」(同師)と、今後はGⅠ秋華賞(10月15日=京都芝内2000メートル)へ駒を進めることになりそう。もちろん、右回り、距離延長に挑戦した今回はその布石でもあった。陣営の予想を超える成長を遂げ、3歳にしてタイレコードで快勝した今回の結果を思えば、あと1ハロンの延長、初の京都コースも軽々と飛び越えてしまうかもしれない。