人気野球漫画「グラゼニ」に登場している本紙・セキネ記者が「ミス東スポ2017」の日里麻美とともに“野球人”を取材する企画。今回は選手のマネジメントを手掛けるアスリート・マーケティング株式会社代表の岩越亮氏に話を聞いた。詳しい業務内容はもちろん、あの感動スピーチの裏側も…。

 セキネ:オフのこの時期は選手のテレビ出演などで忙しいと思いますが、そもそもこの仕事を始めようと思ったきっかけは。

 岩越亮氏(以下岩越):僕は創設時から7年間、楽天球団の広報を務めました。ゼロから始まった球団立ち上げで培ったノウハウや人脈をいろいろな選手、競技に役立てたいと思ったことが始まりです。

 日里麻美(以下日里):マネジメントといっても、どんなことをしているか、なかなか浮かばないんですが…。

 岩越:現在はメディアやスポンサー対応、コンサルタント業務、スクール事業、雑誌発行など幅広く手がけています。

 日里:そんなに!?

 セキネ:現役選手はもちろん、引退した選手のセカンドキャリアについても相談に乗っているんですよね?

 岩越:実は、僕自身は「セカンドキャリア」という言葉は、あまり好きではありません(笑い)。転職でいいじゃないですか。その言葉を使うと、むやみにハードルが高くなってしまう気がするんです。

 日里:確かに。

 岩越:例えば、当社には昨年引退した元巨人の鈴木尚広(たかひろ)がいますが、彼はどことも専属契約を結んでいません。

 日里:尚広さん、私、大ファンです!

 岩越:引退後の選手の仕事に関しては、従来とは変わってきています。かつては引退したらテレビ局や新聞社が面倒を見て…という形でしたが、なかなかそういう時代じゃなくなっている。だからこそ、こちらが地道に仕事を組み立てていく必要がありますね。

 セキネ:鈴木選手といえば代走での通算盗塁数の日本記録保持者で、球宴にも出場したことがありますよね。そんな選手でも“フリー”ですから、厳しい時代なんですね。

 岩越:一方で今やテレビ、ラジオ局の野球中継自体は減ってきていますが、例えばネットだと「ダ・ゾーン」や「スポナビライブ」といった媒体もある。企業講演なども含め、ホワイトボードに具体的に書いていき、年間どれぐらいの仕事が見込めるかをアスリートと一緒に考えます。

 日里:講演とか難しそう…。

 岩越 90分ぶっ続けで一つのことを話そうと思うと大変ですよね。引退したばかりの選手はだいたい「無理」と言います。でも、10分真面目な話、5分裏話といったブロックを作っていって、箇条書きにして手元に置いておけば対応できます。僕は以前、講演をキャスティングする会社にいたこともあり、スピーチ作成に慣れていることも大きいです。

 セキネ:そこからあの有名な嶋選手のスピーチ(2011年、東日本大震災後、4月2日の慈善試合で当時、楽天の選手会長を務めていた嶋基宏捕手が行ったスピーチ。「見せましょう、野球の底力を。見せましょう、野球選手の底力を。見せましょう、野球ファンの底力を」と語りかけ、野球ファンのみならず全国に感動を呼んだ)も生まれたんですね。

 岩越:東日本大震災が起きたとき、選手や僕たちスタッフも含めて思ったのが「目の前に衣食住に困っている人がいるのに果たして今、野球をやる意味はあるのだろうか」ということ。そんな過酷な環境で、地元のヒーローである嶋という存在が、どんな言葉を届ければ、プラスの感情が生まれるかなと考えました。そこで浮かんだのが「底力」という言葉でした。

 セキネ:私も現場にいましたが、非常に心に残るスピーチでした。

 岩越:構成に関しても「見せましょう」と繰り返すことによって、テレビや新聞が使いやすくなり、避難所に何かしらの形で届くことを狙いました。私が書いたことは内緒にしようと思ったのですが、嶋選手がすぐメディアに話してしまったので…(苦笑)。

 日里:すごー! そこまで考えてたんですか!?

 セキネ:今後はどんな活動をしていきたいですか?

 岩越:わが社は「誇りに思えるスポーツ選手、団体を作り、発信をして日本のスポーツや文化に一石を投じる」を活動指針としています。その意味で今後も一緒に一石を投じられるようなアスリートを発掘、サポートし続けたいと考えています。

☆いわこし・りょう=1979年1月12日生まれ。明治大学卒業後、講演をキャスティングする会社を経て2005年1月から楽天球団広報に就任。11年1月「ソスニック・コブ・スポーツ・ジャパン株式会社」を設立。16年1月、社名を「アスリート・マーケティング株式会社」に変更。契約選手にソフトバンク・松田宣浩、武田翔太、元阪神監督の岡田彰布氏、大橋ボクシングジム・井上尚弥ら。現在、同社が編集した雑誌「CoCoKARA next」(日本文化出版、ウェブでも公開)1月号が発売中。

【グラゼニとは】講談社「週刊モーニング」で連載中の、中継ぎ左腕・凡田夏之介を主人公とした異色の野球漫画。球界では有名な「グラウンドには銭が落ちている」の言葉を体現すべく、がむしゃらに道を突き進んでいく凡田の姿とともに「カネ」を巡る野球界の赤裸々な裏事情も描かれ、人気を博す。2018年から「BSスカパー!」でアニメ化が決定。原作・森高夕次、漫画・アダチケイジ。「グラゼニ」全17巻と「グラゼニ〜東京ドーム編〜」12巻までのシリーズ累計で300万部を突破。最新単行本13巻が発売中。

(この連載は週刊モーニングとの相互連載です)