WBO世界フライ級タイトルマッチ(28日、上海)で大番狂わせが起きた。同級6位で世界初挑戦の木村翔(28=青木)が王者の鄒市明(ゾウ・シミン=36、中国)を11回TKOで破り、新王者となった。日本選手の敵地に乗り込んでの世界王座奪取は、日本ボクシングコミッション(JBC)公認試合では1981年に三原正が米国で王座に就いて以来の快挙だ。   試合は鄒にペースを握られ「判定なら負けていた」(有吉将之・青木ジム会長)展開だったが「11回は相手が嫌がっているのが分かったので一気にまとめようと思った」(木村)と、ロープ際に詰めて猛ラッシュ。ワンチャンスをものにして大金星をゲットした。ボディーを狙って相手を疲れさせ終盤勝負の作戦が見事に当たった格好だが、王者側にも“波乱”の要素はあった。   鄒は2008年北京、12年ロンドンの五輪ライトフライ級を連覇した中国の国民的英雄。一方で、13年4月のプロ転向後は“スーパースター”と言えるほどの活躍はしていない。木村戦前までの戦績は10戦9勝1敗で、KO勝ちはわずか2。1敗はIBFフライ級王座に挑戦し敗れている。   昨年11月にはWBO同級王座を獲得したが、これは勝ったことがあるタイ人選手との王座決定戦を制してのもの。さらには今月、世界的ボクサーを多数抱える米トップランク社との契約を更新しなかったことが判明した。今回の興行は鄒の夫人がプロモートする“自前”の大会だったのだ。しかも、米メディアによれば世界的な名トレーナーのフレディ・ローチ氏(57=米国)とも離れた。自分の試合だけに集中できる状況ではなかったのだろう。実際、鄒は試合後「私は負けてしまったが、この試合で中国でのボクシングの関心が高まったのであれば良かった」と、“興行主”のようなコメントを残している。寄付を募って試合にこぎつけたという木村サイドの執念に及ばなかったのも、当然かもしれない。