KOダイナマイトの本心は――。29日に現役引退を発表したボクシングの前WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者の内山高志(37=ワタナベ)は、故障の影響も含めた気力の低下を理由に挙げた。「(ボクシング人生に)悔いはない」と言い切ったが、その“引き金”を引いたのは、内山への情報伝達不足とも言われている。

「2〜3年前から反応がちょっと鈍ったかな、というのを感じるようになったし、100%追い込んで練習することができなくなった」と内山は決断に至った経緯を説明。2015年に手術した左ヒジも思わしくなく「試合をやるなら、もう一度手術しなければならない」状態だったことも明かした。

 内山によると、4月ごろには引退の意思を固め、6月末に最終的に決断。だが、昨年大みそかにジェスレル・コラレス(26=パナマ)に敗れてからの4か月間は現役続行との狭間で揺れ動いていた。実際、2月に参加したイベントでは「コラレスとは2回戦ったから、やるなら他団体の王者でもいいかな」と話したことがあった。

 Sフェザー級はワシル・ロマチェンコ(29=ウクライナ)というスーパースターがWBO王者に君臨。他団体の王者はロマチェンコ戦を実現させて大金を手にする野望を持ち、世界戦で連敗した「前王者」が簡単に挑戦できるとは限らない。ここには指名試合やオプション、テレビ局との契約など複雑な事情が絡むため、状況は刻一刻変わっていく。

「そういう事情を内山は全然知らないのでは。例えばこの王者だと次の次まで待たないとできないけど、こっちの王者ならこういう条件でできる、ということがあったりする。そういった情報を与えた上で、現役を続けるかどうかを含めて判断させるべきじゃないのか」と内山がまだ進退について悩んでいた時期に話していた関係者がいた。

 過去には、元WBA世界フェザー級スーパー王者、ニコラス・ウォータース(31=ジャマイカ)、さらに当時のSフェザー級正規王者、ハビエル・フォルトゥナ(27=ドミニカ共和国)と対戦の可能性がありながら実現しなかった。これで内山のモチベーションが低下。もし、半年後にロマチェンコとできるという情報があったらどうなっていたか。

 現役を続ける場合のさまざまな選択肢を提示してくれるような人が近くにいれば、違った決断をした可能性もあるだけに、内山に心残りがないことを願うばかりだ。