【英国・ロンドン発】経験不足を露呈した。陸上の世界選手権第2日(5日=日本時間6日)に行われた男子100メートル準決勝でサニブラウン・ハキーム(18=東京陸協)、ケンブリッジ飛鳥(24=ナイキ)、多田修平(21=関学大)の日の丸トリオは揃って決勝進出を逃した。日本人初の9秒台と決勝進出の期待が膨らんだが、全員が予選からタイムを落として失速。“世界の壁”を痛感させられ、浮き彫りになった課題とは――。

 日本勢が3人揃って準決勝に駒を進めたのは史上初めて。しかも、エース格のサニブラウンは予選を組1着で通過した。これまで決勝の舞台を踏んだ日本人選手はいない。「9秒台を出すなら準決勝」と陸上関係者は固唾をのんでレースを見守ったが、その期待はもろくも崩れた。

 2組に登場したサニブラウンはスタートから数歩、走りだしたところでつまずき、バランスを崩してしまう。一瞬で決まる短距離勝負では致命的なミスだ。10秒28(向かい風0・2メートル)で7着。「メダルまで狙えるんじゃないか」と語っていた若武者は「すごくもったいない」とうなだれた。

 どんな時でもマイペースでハートの強さを持ち、コメントの歯切れも抜群。世界ユース選手権(17歳以下)2冠の潜在能力を持つ怪物も、経験の浅さには勝てなかった。今季、日本選手権での2冠で一気にブレークしたが、日本陸連の伊東浩司強化委員長(47)は「年齢にしてはすごく上手」と慎重な口ぶりものぞかせていた。それほどキャリアが重視される種目だった。

 特に苦手のスタートは試行錯誤が続いた。最初の30メートルは低い姿勢を保ち、その後、顔を上げて加速するのが理想の走り。しかし、サニブラウンは「ノソノソ出てしまう」癖があり、今季も悩まされてきた。その改善に神経を使うあまり、足の運びが乱れてしまった印象は否めない。決勝に進出していれば、100メートルでは史上最年少となり、ウサイン・ボルト(30=ジャマイカ)との対決も実現していたが、夢はかき消された。

 一方、1組のケンブリッジは10秒25(向かい風0・5メートル)の6着、3組の多田は10秒26(追い風0・4メートル)で5着に終わった。ともに10秒08の自己ベストを持つ。3着以下のタイム上位による決勝進出のラインは、結果的に10秒10でいずれも可能性はあった。

 終盤の爆発力を欠いたケンブリッジは「今季はうまく走れたり、走れなかったり、波が大きい」と現状を見つめた。多田は得意のスタートこそ決めたものの、後半にもうひと伸びできない姿は変わらずで「硬くなった」と表情をこわばらせた。

 3年後の東京五輪に向けて糧にはなった。しかし、歴史を変えるチャンスがあっただけに、消化不良の内容には悔いが残る。若さと勢いだけでは遠かった決勝の舞台。世界の厳しさを突き付けられる結果となった。