セリの時期が近くなると、トレセン内では「この馬の産駒はもう買えないやろうな」なんて話が出るもの。今年に関して言えば、シニスターミニスターがそうなるのではないか、という声をチラホラと聞いていました。もちろん、その理由はテーオーケインズという超が付く大物を出したから。同馬を管理する高柳大調教師も「ケインズには感謝しきりですけど、シニスターの産駒をやる機会は少なくなってしまうかも。値段が上がりそうですもんね」と春シーズンの前には口にしていたほどです。それは競走馬を売る側、買う側の方だけでなく、トレセンで実際に馬を扱う側にも浸透している認識です。

「シニスターはいいですよね。スピードがあって競馬がしやすいし、ダートがメインになるので息も長い。そんな馬を担当できたら最高」なんて話を、つい最近に聞いたばかりなので、今年のセレクションセールで、シニスターミニスター産駒(牡=ディアレストトリックスキの2021)は初日の最高価格である6200万円(税抜き)の値段がついた時も「やっぱりそうなったのね」。これが実直な感想でした。

 どうしても芝の大きいところに目がいってしまいがちですけど、分かりやすくて手堅いのはダートですからね。僕も一口馬主をやるならダート馬に出資すると思います。まあ、今ではもうシニスターの産駒は高くて買えないでしょうけど(苦笑)。

肥えていたファンの目

シニスターミニスター産駒として重賞初制覇を決めたインカンテーション

 テーオーケインズが出現する前のシニスターミニスターの代表産駒といえば、8歳まで現役で稼働し、キャリア11勝のうちの5勝が重賞という活躍をしたインカンテーションでした。骨折による長めの休養を2度ほど乗り越えて、息の長い活躍を続けました。脚をためる形の競馬で勝ったこともありましたけど、本当に強いときはかかるくらいのスピードを見せた。まさにシニスターミニスター産駒という馬だったように記憶しています。

 2013年のレパードSはインカンテーションが最初の重賞制覇を果たしたレース。父シニスターミニスターにとっても重賞初勝利となりました。前述したような、かかるくらいの行きっぷりを見せて勝ったレースでしたよね。稍重だったとはいえ、勝ち時計の1分50秒3はトランセンドの1分49秒5には及ばないものの、ホッコータルマエの1分51秒8よりもはるかに速く、何よりもラスト2ハロンのラップが12・2―12・3秒と速くてブレのないラップ構成。これが素晴らしかった。この時点で先のような活躍を予感した人は少なくなかったようです。

 強いときは強いけど、そうでないときもある──が3歳春までのイメージ。注目はされていただろうけど、そこまで人気はしていなかったのかなと思っていたのですが、これはとんでもない勘違い。当時は堂々の1番人気。前走の濃尾特別をかなり速い時計でクリアしての参戦だったので、競馬ファンのみなさんの目が肥えていたということ。さすがです! 改めて結果を振り返り、そんなことを思いました。

著者:松浪 大樹