内ラチ沿いで粘ったタイキシャトルだが、最後はマイネルラヴ(10番)シーキングザパール(3番)に差された

【記者が振り返るベストレース】単勝1・1倍。負けるはずのない馬が負けた。配当はともかく、タイキシャトルが3着に敗れた1998年のスプリンターズSは史上に残る大波乱といえよう。

 3歳秋のユニコーンSから負けなしの重賞8連勝。安田記念、マイルCS、スプリンターズSといった国内のGⅠに加えて、仏のGⅠジャック・ル・マロワ賞も制覇。帰国初戦となったマイルCSでも難なく連覇を達成した。シャトルにとってスプリンターズSは、まさに有終の美を飾るための一戦であり、その日の最終レース後に引退式が行われることまで決まっていた。

 しかし…である。この日のシャトルはいつになくかかり気味。鞍上の岡部騎手がなだめすかそうとするが、耳を絞って珍しくエキサイトしていた。それでも、勝利を信じて疑わなかったが、直線で外から馬体を併せてきたマイネルラヴをなかなか突き放せない。それどころか、坂を上がったところで逆にギブアップ。ゴール前で強襲したシーキングザパールにも差し込まれて3着に沈んだ。

 まさかの結末に中山競馬場のスタンドは騒然。いったいシャトルに何があったのか? それまで、精密機械のような走りを繰り返してきたシャトルだけに、あの“暴走”は何かしらの意思表示だったと思えてならない。

 勝ったマイネルラヴには悪いが、あのスプリンターズSはタイキシャトルが負けたレース、として記憶されていくことになるだろう。(2006年9月27日付東京スポーツ掲載)

著者:東スポ競馬編集部