
東海ステークス2023
[GⅡ東海ステークス=2023年1月22日(日曜)中京競馬場、ダート1800メートル]
22日の中京メイン・GⅡ東海S(4歳上、ダ1800メートル=1着馬に2・19フェブラリーS優先出走権)は、2番人気プロミストウォリア(牡6・野中)が見事な逃走劇で重賞初制覇を決めた。勝ち時計1分51秒2(良)。スタート直後からカラ馬が走り続ける異様な雰囲気の中、冷静にレースを運んだムルザバエフの手腕も光ったが、6歳ながらキャリア7戦目で重賞タイトルを手にした馬も大したもの。紆余曲折のストーリーと、さらなる高みに向けた今後の展望を検量室前の取材から解き明かす。
スタート直後にヴァンヤールがつまずき、鞍上の荻野極が落馬。カラ馬のまま走り続ける事態に場内は騒然としたが、プロミストウォリアとムルザバエフは〝どこ吹く風〟。1角手前で早くも〝定位置〟をしっかり確保するとその後はマイペースの逃走劇。1000メートル通過62秒6という理想的なペースに落とし込み、十分余力を残して直線へ。最後はもう一段ギアを上げて後続の追撃を振り切った。
手綱を取ったムルザバエフが「前のレース(摩耶S1着)と同様に、とにかく馬の上に乗っているだけのイメージ」とレースを振り返ったように全く危なげはなかった。負けた馬たちへのカラ馬によるマイナスの影響は否めないものの、それをエクスキューズにさせないほどの余裕十分の走りは、砂のニューヒーロー誕生をも予感させる。
「脚元さえ無事なら楽しみはある」
ここまで骨折による長期離脱を3度経験するなどおよそ順風とは言えない競走馬生活を送ってきたが、昨年10月の復帰戦からこれで4連勝。野中調教師も「ジョッキーがうまく乗ってくれたこともあるけど、このメンバー相手に逃げて上がりもしっかりまとめてくれたね。やっぱりコンスタントに使えていることが何よりで、実戦に使うことで調教では上積みできないことを補えている」とこの4か月での急激な成長ぶりに目を細める。
この勝利で優先出走権を得たGⅠフェブラリーSについては「馬の状態を見て考えます」と出否についての明言を避けたトレーナーだが「6歳だけどキャリアはまだ7戦。肉体的にはまだまだ成長の余地はあるからね」と今後のさらなる成長に期待を込める。
野中厩舎のダート馬といえば破竹の7連勝でフェブラリーSを制したインティが真っ先に思い浮かぶ。「やっぱりその話になるか」と苦笑した野中師だが、「インティの方が完成度は高かったけど、この馬は晩成タイプ。脚元さえ無事なら楽しみはあるよね」という口調からは期待の大きさが垣間見える。第2のインティとして大きな飛躍を遂げるのか。師が堂々と名馬と比較する時期はそう遠くないのかもしれない。
著者:東スポ競馬編集部