
地方競馬全国協会(NAR)は17日、「NARグランプリ2022」を発表した。年度代表馬には黒船賞、かきつばた賞とJpnⅢを2勝したイグナイター(牡4・新子雅=兵庫)が選出された。兵庫所属の馬が年度代表馬に選出されたのは1996年のアラブ・ケイエスヨシゼン以来26年ぶり。サラブレッドとしては初の快挙となった。
イグナイターは父エスポワールシチー、母ビアンコ、その父ウォーニングという血統。19年のサマーセールで650万円(税別)で落札された。
栗東の牧田厩舎に入厩したイグナイターは11月の新馬戦(東京ダート1600メートル)を7馬身差で圧勝したものの、2戦目の1勝クラスで1番人気を裏切る7着に敗れると、早々と中央の登録を抹消。南関東を経て、21年の夏に兵庫に移籍するとメキメキと頭角を現した。この年は4勝をマークし、年末のJpnⅢ兵庫ゴールドトロフィーではテイエムサウスダン、ラプタスという中央の強豪に続く3着に好走した。
22年を迎えると快進撃を開始。まずは高知の黒潮スプリンターズCで重賞制覇を飾ると、黒船賞(高知)、かきつばた記念(名古屋)とJpnⅢを連勝。秋にはマイルCS南部杯4着、JBCスプリント5着と盛岡のJpnⅠでも善戦した。
ゴールドアリュールの初年度産駒としてGⅠ5連勝を含む、ダートGⅠ9勝(交流含む)を挙げた父エスポワールシチーは引退後、14年から優駿スタリオンステーションで種牡馬生活をスタート。初年度は110頭(種付け料50万円)の牝馬を集めた。種牡馬の世界ではよくあるパターンながら、2年目は91頭、3年目は68頭と頭数を減らしたものの、産駒が走りだすと評価は上昇。ダートで実績を残した父と同じくダート系種牡馬だけに、産駒は地方出走馬が多く、中央での重賞勝ち馬は22年のGⅢユニコーンSを勝ったペイシャエスの1頭だけだが、地方では重賞勝ち馬が続出している。
昨年の地方交流重賞ではイグナイターの2勝に加え、先のペイシャエスがJpnⅡ名古屋グランプリを制して計3勝をマーク。22年におけるエスポワールシチー産駒の地方重賞勝ち鞍は23に達し、JpnⅠ帝王賞の勝ち馬メイショウハリオを出したパイロ、JBCクラシックVのテーオーケインズを出したシニスターミニスターら米国からのエーピーインディ系輸入種牡馬を抑えて初めての地方リーディングサイアーに輝いた。
種付け料も前年の120万円から、今年は60万円アップの180万円となったが、すでに満口となる人気ぶりだ。イグナイターも今なら当時ほどの価格帯では落札できなかっただろう。
イグナイターの4代母Bargerのひ孫にはジャパンダートダービー、帝王賞(2回)などGⅠを6勝し、年度代表馬に4度もなった〝南関東の雄〟フリオーソがいる。
エスポワールシチーは8歳時にマイルCS→JBCスプリントを連勝したように息の長い活躍を見せた。イグナイターは明けて5歳とまだまだ伸びシロには期待が持てる。年度代表馬として、今年はフリオーソに迫るような活躍を期待したい。
著者:東スポ競馬編集部