【POGマル秘週報】2019年に惜しまれつつも、この世を去ったディープインパクト。偉大な自身の競走成績のみならず、種牡馬としても圧倒的な産駒成績を積み上げ、今なお日本競馬の中心にいるスーパーヒーローであることは疑いようもない。
そのラストクロップとなる現3歳世代への期待は半端ない一方、種付け頭数自体が少なく、国内での競走馬登録はわずかという状況ながらも…。牝馬ではライトクオンタムが新馬→シンザン記念を連勝して一躍、桜花賞馬候補に。そして牡馬ではオープンファイアが初タイトルを期して、きさらぎ賞に出走してくるのだから“さすが”としか言いようがない。
一般的にディープインパクト産駒は「少し薄手と映る馬体に出たほうが能力をより濃く受け継いでいる」といわれた時期があった。これは父に似た体つきのほうが、その瞬発力、切れ味を発揮しやすいといった見方から生まれた風潮。やがて産駒が様々なカテゴリーで活躍するうちにオールマイティーな血統との評価に変わっていく。ライトクオンタムが420キロ台の線が細めの牝馬なのに対して、オープンファイアは500キロ超の牡馬。この2頭もまた、まったく違ったタイプと見るべきなのだろう。
オープンファイアの新馬戦はまさに薄氷を踏むかのような勝利だった。
「ゲートの中、道中、そして直線でもずっと遊んでいました。真面目だったのは最後の150メートルくらい。反応するまでに時間がかかりました」
レース後のルメールの談話通り、スタートから進んでいく気配がまるでなく、ゴール寸前での差し切り。続くリステッド・アイビーSでどれだけパフォーマンスを上げてこれるかが焦点だった。スタートの出遅れから、序盤は後方でハミを取らないレースぶりは初戦と何ら変わっていないようにも見えたが…。管理する斉藤崇調教師の見方は少し違っていた。
「道中でついて行こうとする感じは新馬戦の時より見せていましたし、メンバーが一気に強くなって流れ自体が違ったレースでも、しまいはそれに合わせて脚を使えていました」
2番人気に支持されながら0秒4差3着に終わったものの、トレーナーは進境の見られたレースとの見解を示している。
2週続けて新たにタッグを組むムルザバエフが手綱を取り、ウッドでGⅠ馬キラーアビリティとの併せ馬を敢行した後のスタンスもまた同様だ。
「馬体に締まりが出たというか、体重は変わりなくても、メリハリがついてきた気はしています」と斉藤崇調教師は手応えを口にする一方で、「まだまだこれからの馬だと見ているんです。ここから徐々に上向いていくように調整していくので、できれば長い目で見てあげてください」とも。
その存在があまりに大き過ぎるがゆえに、性急に結果を出すことを求めてしまいがちなディープのラストクロップたち、しかし、できるだけ長くディープ産駒がターフで躍動する姿を見られることこそがファンにとっての真の喜び。現状はその下準備の時期にあるオープンファイアがどれだけの走りを見せるのか、一喜一憂することなく見守っていきたい。

著者:東スポ競馬編集部