トップハンデでも中山牝馬Sの中心はアートハウスで揺るぎない

中山牝馬ステークス2023

[GⅢ中山牝馬ステークス=2023年3月11日(土曜)中山競馬場、芝内1800メートル]

 2006年のGⅠヴィクトリアマイル創設後は前哨戦としての役割がクローズアップされる中山牝馬Sだが、もうひとつの側面が〝引退レース〟だ。馬産地では種付けシーズンが間近に迫っているとあり、引退規程があるクラブ所属の6歳馬を中心にラストランに選択されることも少なくない。有終Vとなると09年キストゥヘヴンまでさかのぼる必要があるが、15年アイスフォーリス、17年マジックタイムが2着に好走。近2年は5歳勢が1〜3着を独占したが今年は果たして…。

 今年のメンバーで実績&勢いの双方で断然の存在がアートハウス(中内田)だ。上位人気に支持されたGⅠ2走はオークス7着、秋華賞5着と結果を出せなかったが、GⅡローズS快勝が示す通り素質は現4歳世代でもトップクラス。年明け初戦のGⅢ愛知杯は初めて年長馬との激突となったが、好位3番手から最速33秒9の末脚を発揮する完璧な内容で重賞2勝目をマークした。初の中山コース、ハンデ増の57キロと克服すべき課題もあるが現在の充実ぶりからすれば、連勝を飾る可能性は相当高い。

 同世代のウインピクシス(上原博)はGⅢ新潟2歳S(9着)以来の重賞挑戦となる。条件戦で積み上げてきた4勝はすべて右回りの1800メートルと適性の高さはピカイチといえる。これといった同型馬は不在なだけに恵量53キロを生かした逃げ切りに注意を払いたい。

 5歳世代ではスルーセブンシーズ(54キロ=尾関)の中山巧者ぶりが光る。前走・初富士S(3勝クラス)を含む全3勝を当地・中山でマークしているのに加え、3歳時にはGⅢ紫苑Sでファインルージュ(桜花賞3着、秋華賞2着)相手の2着善戦もある。2000メートル未満を走るのは新馬戦(中山芝内1800メートル・1着)以来となるが、距離短縮をこなせれば上位争いが期待できる。

 ベテラン勢では昨年の覇者でもあるクリノプレミアム(55・5キロ=6・伊藤伸)が主軸といえよう。その昨年は軽量53キロ、15番人気とフロック感の強い激走だったが、以降も中山ではGⅢ京成杯AH3着、GⅢ中山金杯2着と牡馬相手に善戦。牝馬限定に戻れば、連覇の可能性も十分ある。

 メンバー最年長となる7歳馬サトノセシル(55キロ=堀)は全17戦と年齢の割には消耗度が低い。前走の愛知杯(5着)はアートハウスに0秒9の後れを取ったが、右回りのGⅢでは3→2→2着と安定感十分。条件替わりに加え、中山記念(ヒシイグアス)→弥生賞ディープインパクト記念(タスティエーラ)と当地重賞を2連勝中と勢いある厩舎力も踏まえれば、巻き返しを警戒せざるを得ない。

著者:東スポ競馬編集部