フラワーカップ2023

[GⅢフラワーカップ=2023年3月18日(土曜)中山競馬場、芝内1800メートル]

【トレセン発秘話】イクイノックス、タイトルホルダー、アスクビクターモア…。今月に入ってから美浦トレセンに紫地の“GⅠ馬ゼッケン”を身につけたスターホースたちが続々と放牧先から帰ってきた。

 昨年の桜花賞&オークスを制したスターズオンアースも4日に帰厩。秋華賞3着後は繋靱帯炎で休養を余儀なくされたが、復帰戦となる大阪杯(4月2日=阪神芝内2000メートル)へ向けて調整は順調に進んでいる。

 そのスターズオンアースを手がける高柳瑞調教師も昨年は大ブレークの一年だった。一昨年までJRA重賞1勝だったのに、昨年だけでGⅠ2勝を含む重賞4勝をマーク。一年通してコンスタントに重賞戦線に管理馬を送り込み続けた。

 今週の美浦でも高柳瑞調教師は取材陣から引っ張りだこ。先週のGⅡフィリーズRのリバーラ(3番人気12着)に続き、今週はGⅢフラワーC(18日=中山芝内1800メートル)にセリオーソがエントリー。さらには来週の高松宮記念にはトウシンマカオ、再来週の大阪杯にはスターズオンアースと、毎週のように注目馬を送り出すからだ。

 そのフラワーC=セリオーソは15日に南ポリトラックで併せ馬。三浦皇成を背に5ハロン64・9―11・5秒をマークした先週に続いて、今週も調教助手を背に5ハロン65・4―11・7秒をマーク。3か月ぶりの実戦となるが、順調な仕上がりをアピールしている。

 これには高柳瑞調教師も「順調ですね。小柄で食いも細いので遠慮をしつつですけど、相変わらず調教の動きはいい。以前よりも馬がしっかりして成長も感じます」と納得の表情だった。

 昨年12月17日の新馬戦(中山芝内2000メートル)は中団から直線一気の差し切りで3馬身差V。その圧倒的なパフォーマンスを目の当たりにすると、17頭立て5番人気という評価は低過ぎだったようにも思えるが、当のトレーナーには不安もあったのだという。

「とにかく気性面が危ういんです。デビュー戦を見た人は優等生の競馬だったように思うでしょうけど、普段扱っている人間からすると信じられない(苦笑)。どう危ういのか? う〜ん、なかなか口で説明するのは難しいんですよね。セリオーソの全兄のマジェスティゲートなんかはもっとすごかったんですけど、とにかく気性が若いというか、油断できないんですよ。それでも初戦はゲートも含めて上手に運んでくれましたし、悪い方向にも進んではいません。能力はあると思うので、今回も同じように行儀よく走ってくれたら」

 思わず指揮官が口ごもるほどの気性の危うさとはどんなものなのか? 部外者には想像するしかないが、おそらくそういう激しさが走るほうに向いたからこその初戦の圧勝劇だったのだろう。

 無傷の2連勝で重賞制覇となれば、GⅠの舞台も見えてくる大事な一戦。ぜひ今回も行儀よく走ってもらって、偉大な厩舎の先輩の背中を追いかけてほしい。

厳粛なムードを漂わせるセリオーソ

著者:藤井 真俊