重賞を制して勢いに乗るアグリ(右)とナムラクレア

高松宮記念2023

[GⅠ高松宮記念=2023年3月26日(日曜)中京競馬場、芝1200メートル]

 サクラバクシンオー、タイキシャトル、ロードカナロア…圧倒的なスピードで他馬を凌駕したスプリント王が各時代に君臨していたが、ロードカナロア引退後は18年こそファインニードルが春秋スプリント制覇を成し遂げているものの、短距離GⅠの勝ち馬がコロコロと入れ替わり〝絶対的〟と呼べる存在は皆無。近年の短距離路線は混沌とした状況が続いている。

 本来だったらピクシーナイト(牡5・音無)が〝長期政権〟を築いてひとつの時代をつくっていた可能性は決して低くなかっただろう。それだけ一昨年のスプリンターズSの勝ちっぷりは圧巻だった。その後に挑んだGⅠ香港スプリントでは落馬事故に巻き込まれて転倒→骨折。復帰まで1年以上を要することになった。さらには当初に復帰を予定していたGⅢ阪急杯を回避。決して順調な道のりではなかったが、1週前は栗東坂路で4ハロン50・3秒をマークするなど、さすがの動きを披露している。中468日でのVとなれば、1993年有馬記念トウカイテイオー(中363日)を上回る最長ブランク明けでのGⅠ制覇となるが、ポテンシャルを踏まえれば偉業達成も十分にあり得よう。

 昨年の覇者ナランフレグ(牡7・宗像)は昨秋のスプリンターズSでも3着。昨年はGⅢオーシャンS2着からの臨戦だったが、今年は同9着という点が気になるが、海外遠征明け&斤量59キロならば情状酌量の余地はあろう。連覇へ向けて使った上積みは確実なだけに注意は必要だ。

 一方、グレナディアガーズ(牡5・中内田)はベストの7ハロンより1ハロン短い今回の距離がカギ(昨年の当レースは12着)となる。前走・阪急杯(7着)で1番人気を裏切っての臨戦となるだけに扱いが難しい。また、重賞6勝のメイケイエール(牝5・武英)、前哨戦のオーシャンSを完勝したヴェントヴォーチェ(牡6・牧浦)は昨秋のスプリンターズSでともに大敗(14、11着)。GⅠではやや壁を感じる現状も、ここでひと皮むけた姿を見せることができるか。

 現勢力がこのような状況だけに、ピクシーナイトの戦線離脱の間に力をつけてきた4歳馬に注目したい。ナムラクレア(牝・長谷川)は3歳で挑戦したスプリンターズSで小差5着と力を示した。今年初戦のGⅢシルクロードSを勝利。前走から0・5キロ減の斤量56キロも好材料だろう。そして、アグリ(牡)はスプリントの名門・安田隆厩舎が送り出す新星候補。1勝クラスから一気の4連勝で阪急杯を制し、勢いという点ではメンバー最上位だ。久々の6ハロン戦になるが、ハイラップの7ハロンでも先行できていたため、マイナスにはなるまい。もし勝てば安田隆調教師は自身の最多勝記録を更新する高松宮記念4勝目となる。

 昨年のスプリンターズS2着馬ウインマーベル(牡4・深山)、父子制覇(16年覇者ビッグアーサー)のかかるGⅢ京阪杯勝ち馬トウシンマカオ(牡4・高柳瑞)らもタイトルを虎視眈々と狙う。チャンスある馬が五指に余る戦況で、今後のスプリント界を占う興味深い一戦となりそうだ。

著者:東スポ競馬編集部