夢が膨らむイクイノックス(ロイター)

 野球に続いて競馬でも世界一! 現地時間25日、アラブ首長国連邦ドバイのメイダン競馬場で行われた世界的競馬の祭典「ドバイワールドカップデー」において、日本馬が大活躍。昨年の年度代表馬イクイノックスとウシュバテソーロが歴史的Vを決めた。〝世界基準〟となったこの2頭が代表チームを組めば、日本競馬が長年苦汁をなめてきた、あの悪夢のレースも完全攻略が可能になりそうだ。

 過去最多の26頭が参戦し、今年も日本馬が大活躍したドバイWCデー。中でも強烈なインパクトを世界に与えたのはドバイシーマクラシック=イクイノックス&ドバイワールドカップ=ウシュバテソーロだ。

 昨年の年度代表馬イクイノックスの〝世界デビュー戦〟はまさに圧巻。ハナへ立つと絶好のリズム、手応えで直線を迎え、ノーステッキのままレコードV。海外メディアが「芝における現役最強馬」と報じ、「最高の馬だと分かっていた」と鞍上のルメールは当然と言わんばかりの言葉を残した。ドバイWCではウシュバテソーロが後方からの差し切りで、11年ヴィクトワールピサに続く史上2頭目の日本馬V。ダート施行では初の優勝という快挙だった。

 世界がこの2頭の今後に注視している。ウシュバテソーロに関しては、レース後、オーナーサイドは凱旋門賞参戦に意欲を見せ、「芝もダートも走れるウシュバテソーロには(欧州の馬場が)合うのでは」と語り、イクイノックスに関しては馬主であるシルクレーシングの米本昌史代表が「世界中のレースがオプションになってくる」と話した。

衝撃Vで前売り1番人気に上昇

 ワールドワイドに衝撃を与えた2頭が日本のレースにこだわる必要は、もはやない。とりわけウシュバが参戦を表明した凱旋門賞にイクイノックスも進むべきという声は多い。実際、ドバイでの衝撃Vを受けて海外ブックメーカーはこぞってイクイノックスを凱旋門賞の前売り1番人気(6〜8倍)に急上昇させている。

 海外レースの選択肢も広がっている昨今、凱旋門賞制覇を悲願とするのをナンセンスと見る向きもあるのは事実。ただ、我が国で数々の名馬が挑み、涙をのんできた歴史があるだけにファンや関係者の〝胸のつかえ〟を取る必要もあるのでは。

 これまでのチャレンジを阻んできたのは欧州の特殊な馬場。良馬場ならまだしも、ひと雨あれば日本の重馬場とも大きく異なる極悪馬場となる。2000年以降(シャンティイ開催の16、17年を除く)の最速が2分24秒49、最遅が2分39秒30という〝落差〟がその特異性を物語っている。ノウハウを積み重ねてきたことで調整面はスムーズでも、人力の及ばない直前の天候、つまり〝運〟に大きく左右される面が大きい。その象徴的なシーンが超極悪馬場にダービー馬ドウデュース、GⅠ3勝タイトルホルダーなど日本馬が揃って惨敗を喫した昨年だ。

 今年、ドバイを制した2頭で臨めば、この不確定要素を塗りつぶすことができる。つまり、好時計で駆け抜けたダービーや天皇賞・秋が示すように高速ターフに強いイクイノックスと、芝で培った速力とダートにおける怒とうのパワーを兼備するウシュバテソーロで臨めば、馬場がどう転んでも対応可能。最強の〝両面待ち〟になる。

 もちろん競馬は個々で臨むものだが、海外となれば協力体制が敷かれるのは当然。2強がタッグを組めば今年のWBC日本代表のような最強チームとなる。凱旋門賞という長年の呪縛を解く歴史的Vへ――。競馬界の「侍ジャパン」結成を期待したい。

著者:東スポ競馬編集部