【デルマソトガケのランフォーザローゼス〜田中助手のケンタッキー滞在記〜第5回】
どうも、音無厩舎の田中です。現在、僕は米GⅠケンタッキーダービー(現地時間5月6日=日本時間7日)に挑戦するデルマソトガケに帯同し、同馬を担当する瀬川将俊調教助手とともに、米国・ケンタッキー州ルイビルにあるチャーチルダウンズ競馬場に滞在しています。
ダービーを間近に控え、周囲もにぎやかになってきました。今週は先生(音無調教師)も合流し、その指示を受けて最終調整へと入っていきます。いい結果を出したい──そんな気持ちはありますが、まずは大一番にふさわしい状態でソトガケを送り出すこと。瀬川さんも同じ気持ちでしょう。目の前のことを一つずつクリアして、来るべき日に備えたいと思っています。
休息日に素晴らしい種牡馬たちと対面してきました
レース週に気負い過ぎてもいけないので、今回はケンタッキーダービーとは関係のない話題を。こちらに来てからは日曜を全休日のような形にして、人間と馬の休息日にしているのですけど、そのタイミングを見計らい、こちらにいる多くの名種牡馬を見学に行ってきました。詳しい方はご存じでしょうが、ケンタッキー州レキシントンには多くの牧場があって、素晴らしい種牡馬たちが繋養されているんですよね。5つの牧場で10頭前後くらい。あらかじめ連絡をしておいて、有名な馬ばかりをピックアップしてもらって。競馬ファンなら誰もがうらやむような馬たちと対面することができたんです。僕も「趣味は競馬」と言っている馬オタク。マジでテンション、爆上がりでしたよ!

日本でもおなじみのタピットにジャスティファイ、アメリカンファラオと素晴らしい馬ばかり。でも、話題性というか、現在の注目度でいうのであれば、フライトラインの名を最初に出さないとダメでしょうね。どのような表現をしたらいいのか、とても難しいのですけど、ひと言でいえば…めちゃくちゃオーラがある! すみません、ボキャ不足で(苦笑)。
でも、本当にそんな感じなんです。これだけのすごい馬がいる中で、その馬たちがかすむくらいの、ただならぬオーラを放っている。これ、すごいことと思いませんか? 年齢的なこともあるけど、馬体も飛び抜けて若々しいですし、ちょっと調教して、ちょっと体を絞ってあげれば、まだまだGⅠを勝ちそうな感じ。いや、マジでケタが違う感じやったな!
日本にいる種牡馬と少し違う。そんな印象も持ちました。馬の能力の話でなく、タイプが違うという意味です。ノーザンファームの早来牧場にいたこともあり、種付けシーズンには手伝いもしていた。社台スタリオンにいる多くの種牡馬を僕は見ています。でも、それらの馬と比べたとき、体のつくりに違いを感じるんです。
フライトラインの素晴らしいポイントとは?

単純に骨が太い? それもありますけど、骨格そのものが違う感じ。どれも体はゴリゴリのダート馬。でも、歩かせると重苦しさがなくて、むしろ豊富なスピードを感じるほど。これが米国のダートを走るのに必要な要素とちゃうかな? これらの馬を見た時、そんなことを思ったりもしました。
実際、ソトガケが調教を行っているチャーチルダウンズ競馬場は日本のダートみたいにスッと脚が抜けるわけではなく、粘っこい感じがする。相当なパワーが必要な馬場です。でも、路盤そのものは硬いため、日本のダートよりもスピードが必要になってしまう。瀬川さんやコンティノアールの吉田さんとも話しているんですよ。「こっちのダートはスピードとパワーのどちらかだけではアカンな」と。
ソトガケがここでどこまで頑張ってくれるのか? それはやってみないとわかりませんが、ソトガケの父はドバイゴールデンシャヒーンを連覇し、米国のGⅠを勝っているマインドユアビスケッツ。しっかりとした彼の骨格に父の影響を感じることもありました。実際、ソトガケは軽いサウジのダートよりも、米国のダートに近いメイダンの馬場に適性を見せていましたよね? 今回もやってくれるんじゃないか。そんな期待を持って送り出すつもりです。
☆田中維就(たなか・まさなり)京都府洛水高校・馬術部出身。ノーザンファーム早来牧場を経て、ノーザンファームしがらきへ。「居心地が良過ぎて長居し過ぎた」という同施設に別れを告げ、昨年1月から音無秀孝厩舎で調教助手となった。趣味は「飲んでワイワイ騒ぐこと」だが、今回の滞在は「身の危険があるので宅飲みです」とチキンな生活をしている。
著者:松浪 大樹