放馬を乗り越え能力全開のサウンドビバーチェ

ヴィクトリアマイル2023

[GⅠヴィクトリアマイル=2023年5月14日(日曜)4歳上牝、東京競馬場・芝1600メートル]

 今週のGⅠは古馬牝馬の頂点を決める第18回ヴィクトリアマイル(14日=東京芝1600メートル)。2冠牝馬スターズオンアース、白毛のヒロイン・ソダシに、短距離部門からナムラクレア、メイケイエールと〝人気タレント〟が揃った。ただアイドル性という意味ではこの馬も負けていない。2度のアクシデントから思わぬファンが増えたサウンドビバーチェ(4・高柳大)だ。

 昨年のオークスではゲート裏で輪乗りをしている際、他馬に顔を蹴られて放馬→競走除外。さらに秋華賞では馬場入りの時に、鞍上・岩田望を振り落としてまたしても放馬(馬体検査で異常はなく出走→7着)。牝馬GⅠ3冠競走のうち2冠で放馬というアクシデントがあったサウンドビバーチェ。その不運をかわいそうに思うファンから思わぬ支持を受け、実績以上に注目を受ける存在となってきた。

 そんな馬が話題だけではないところを見せつけたのが前走のGⅡ阪神牝馬S。外枠からスタートを決め、好位に取りつくと直線で前をねじ伏せ、そのまま後続をシャットアウトする完勝劇を決めた。

「前回はいい仕上げで臨めましたし、力を出し切ってくれました。馬場(稍重)を考えれば時計(1分33秒9)も悪くなかったですからね」と3歳1月(菜の花賞)以来の勝ち鞍を喜んだ平助手。もともとGⅢ紫苑Sで秋華賞馬スタニングローズとタイム差なしの競馬(1、2着)をしたほどの馬。前走の走りが〝リアル〟ということだ。

 ややテンションが高めで、秋華賞を見ても馬場入りに注意を払う必要がある同馬。アクシデント明けだった2走前の洛陽Sは「馬場入りでうるさいので加減して調整して臨んでいた」(平助手)という。その結果、「息が持たず」11着惨敗。その反省を踏まえて踏み込んだ調整を施したのが阪神牝馬S。高柳大調教師自ら馬場入りに際して「手綱は絶対離さない」と話すなど、細心の注意を払った結果のVフィニッシュだった。

 どこまで仕上げてもテンションは大丈夫なのか? その加減が前哨戦ではっきりしたのは大きく、そういう意味でも収穫大のレースだった。

「使った後もテンションは大丈夫ですし、レースも上手で、距離もいい。強敵が相手になりますが、いい状態では出走させられそうです」と平助手。冠名「サウンド」の増田雄一オーナーのヴィクトリアマイルといえば、2020年に4番人気で2着したサウンドキアラ。当時と同じ松山が騎乗するのも何かの縁だろう。引き続きゲート入りするまでが大きな勝負となるが、それを乗り越えれば…。女傑アーモンドアイに圧倒され、銀メダルに泣いた〝姉〟の分まで驚きの激走を見せてくれそうだ。

著者:東スポ競馬編集部